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40代、50代に本当に必要な学びとは?間違いだらけの「リスキリング」入門

2022.12.04

みなさん、こんにちは。株式会社ブルーブレイズ代表の都築と申します。本連載では、40代・50代のビジネスパーソンに向けて、転職、複業、リスキリング、定年後のセカンドキャリアなど、人生後半のキャリア形成のヒントをお届けしています。

前回、第1回目の連載では「ほとんどの40代・50代転職希望者は、一部の転職エージェントの間で『ジャンク品』と呼ばれ相手にされない」―― そんなショッキングな話から転職活動成功のポイントをお伝えしました。第2回目の今回のテーマは、岸田政権が今後5年で1兆円の予算を投じることでも話題になったリスキリングです。

当社が運営する、45歳からの実践型キャリア複業スクール「ライフシフトラボ」は、Googleや経済産業省、デジタル庁等が主宰する日本リスキリングコンソーシアムの公式パートナーとして参画しています。ライフシフトラボで培った知見から、人生後半も活躍し続けたい40代・50代の正しいリスキリングの始め方をお伝えします。

今、なぜリスキリングなのか?

話を進める前に、まずはリスキリングとは何かを確認しておきましょう。リクルートワークス研究所は、リスキリングを次のように定義しています。

「リスキリングとは、新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する・させること」

混同して用いられることが多い「学び直し」や「リカレント教育」とはその本質が異なり、リスキリングはあくまでも職業で価値を創出し続けるための手段であるという点がポイントです。個人の関心に従って学ぶこと自体が目的ではありません。

リスキリングという言葉が用いられるようになったのは、2018年の世界経済フォーラム年次会議(ダボス会議)のセッションで取り上げられたことがきっかけと言われています。2020年のダボス会議では「2030年までに世界で10億人をリスキルする」という宣言が採択され、リスキリングは今、世界各国が取り組むグローバルトレンドです。

リスキリングがこれほどまでに注目されている主な背景は2つあります。一つは、テクノロジーの急速な進歩によってオートメーションが加速し、人間の雇用が大量に失われる技術的失業への懸念から、人間の職務スキルを大幅にアップデートする必要性が生じていること。もう一つは、変化の激しいVUCAの時代と世界的な高齢化社会が同時に訪れることにより、ひとつの職務スキルに依存してライフキャリアを終えることがますます現実的でなくなっていること。高齢化先進国の我が国では特に切実です。

こうした中、岸田政権は、2022年10月、今後5年でリスキリングに1兆円の追加予算を投下することを発表しました。従業員のリスキリングに取り組む企業に対し、一定の補助金を出す政策などが現在議論されているようです。

政策レイヤーの議論はさておき、個人レイヤーでもリスキリングが注目されるにつれて「40代・50代からリスキリングするには、何を学ぶべきか」という相談を受けることが増えました。「やはりプログラミング、あるいは資格ですかね」と続くのですが、この問いについて、私の意見を提案したいと思います。

藪から棒にプログラミングを学んでも無意味

リスキリングの重要性が高まった背景が急速なIT化であることから、とかくリスキリングはデジタルスキルを身につける文脈で語られることが多いように思います。

少し話がそれますが、実は私は大学時代にコンピューターサイエンスを専攻したITエンジニアです。今でも現役バリバリで、当社サービスの運営に必要なコードを書くこともあります。そのため、プログラミングとは何か、それを学ぶとはどういうことかを人並み以上には理解しているつもりですが、断言できます。ITスタートアップを本気で起業したいなら話は別ですが「リスキリングが大事だと言われているから、プログラミングでもやるかぁ」というスタンスでは何の意味もありません。

たとえばPythonを学んだとして、そのスキルを日々の業務に生かせる人がどれくらいいるでしょうか。では転職? 付け焼き刃のスキルで転職できるほど、今の人材マーケットは甘くありません。冒頭に述べたリスキリングの定義に戻りますが、リスキリングとは学ぶこと自体が重要なのではなく、あくまでも何らかの職業上の目的のために必要なスキルを身につけること。目的不在の状態では、結局「学んで満足」になってしまいます。

40代・50代の正しいリスキリングの始め方

そこで私が40代・50代におすすめしているのは、何か新しいスキルを身につけるリスキリングではなく、今すでに持っているスキルをアップデートするリスキリングです。これまで培った、20年・30年分のキャリア資産を再利用すべきだと考えています。

ビジネススキルや専門性は時代の変化に伴い陳腐化しますが、時代に適合する形で磨き上げることでピボットすることが可能です。

たとえば、ライフシフトラボの過去の受講生でこんな方がいらっしゃいました。営業一筋のキャリアを歩まれた彼は当初、ご自分が昔ながらの営業スタイルしか知らないことに引け目を感じていらっしゃいました。「営業は飲んでナンボ。夜は銀座の高級クラブで、休日はゴルフで接待。本社の前で社長を出待ち。こんな営業、もう時代遅れですよね」と。

ところが彼は現在、若いITスタートアップ向けの法人営業コンサルタントとして活動しています。オンライン営業やAIを用いたマーケティングオートメーションが当たり前のITスタートアップの若手メンバーにとっては、古き良き昭和型の営業スタイルは逆に新鮮で、ニーズのあるスキルだったのです。そこで彼は、ITスタートアップでは必須のSlackやNotionなどのITツールの使い方をマスターし、現在は令和のオンライン商談に昭和の人間味ある営業スタイルをブレンドする、ハイブリッドなセールスパーソンとして活躍しています。

私は、彼の事例から2つのことを学び取れると思っています。

◎社外に目を向け他流試合を積む

これまで培ったビジネススキルや専門性を再利用するといっても、日々のやり慣れた仕事の中では難しい場合もあるでしょう。

そこでおすすめなのが、社外で他流試合を積むこと。副業やNPOでのプロボノ、地域ボランティアなど、勤め先以外で、自分が価値を提供できる場に身を置いてみましょう。「会社の看板なしで、自分にどんな価値を提供できるのか?」を問われる環境でこそ、持てるビジネススキル・専門性は磨かれます。

◎アウトプットしてからインプット

こうした社外でのアウトプットを最初に行うことで、さらに価値を提供するためのインプットに身が入るのです。彼を例に取ると、ITスタートアップで働くには、SlackやNotionなどのITツールを使いこなすことはもちろん、リモートワーク前提でのコミュニケーションスタイルが必要だということに気付き、学び直しを行いました。これこそが、職業上の目的のために必要なスキルを身につけるリスキリングの本質です。

ゼロから新しいスキルを身につけるのではなく、今持っているスキルに軸足を置きながら他流試合で磨きをかける。その過程で必要なスキルについては新たに獲得する。これは、数十年のキャリア資産がある40代・50代ならではのリスキリング方法だと思うのです。「何を学ぶか」よりも「何を磨くか」をぜひ考えてみてください。

次回は、昨今増えているシニア起業について、後悔しないために会社を辞める前にやっておくべきことについて取り上げます。

文/都築辰弥

株式会社ブルーブレイズ 代表取締役1993年生まれ。開成高校、東京大学工学部システム創成学科卒。学生時代は、国際学生NPOアイセックで活動した後、バックパッカーとして世界を一周。新卒でソニーに入社し、スマートフォンXperiaの商品企画担当として2019年フラグシップモデル「Xperia 1」などをプロデュース。その後、2019年8月に株式会社ブルーブレイズを創業。45歳からの実践型キャリア複業スクール「ライフシフトラボ」および法人向けキャリア自律促進サービスを展開。「ライフシフトラボ」:https://lifeshiftlab.jp/

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