「日本橋とんかつ 一 HAJIME」(東京都日本橋)
■かつなのにヘルシー。女性客が殺到する“フタが閉まらない“かつ丼
続いて訪れたのは、「日本橋とんかつ 一 HAJIME」。「とんかつ定食」を筆頭に、「かつカレー」、そして“とじないかつ丼”として名物になっている「焼きかつ丼」を提供している、とんかつ専門店だ。
同店のマネージャー・小原淳氏によれば「お客さんの7割近くが『焼きかつ丼』を注文します」とのこと。
「『焼きかつ丼』のボリュームは2種類用意していて、『上』と『あじ豚』を使用しているものは220g、『特上』は350gです。とくに人気があるのが『特上』で、土日は昼過ぎに売り切れになってしまうこともあります」
日本橋とんかつ 一 HAJIMEの「特上 焼きかつ丼」(1880円)。ロースは350gと超ビッグサイズだ。
フタが閉まらないほどの厚みだが、食べてみるとジューシーで、肉がやわらかく、油っこさも感じない。揚げ油に「ベジフルーツオイル」という植物性の油を採用しているため、軽い仕上がりになるそうだ。
「こうすることで、揚げ物が苦手な人にも美味しく召し上がっていただけるんです。タレはあっさりした味付けで、かける量も控えめ。卓上には3種類の塩を常備し、肉そのものの旨味を堪能していただいています」
“とんかつ嫌いの人でも食べやすいとんかつ”を目指した甲斐あってか、土日は女性客だけで席が埋まることもあるそうだ。
「とくにSNSで当店を知って来店される方が多いです。じつは、国内最大級のフォロワー数を誇る超有名グルメインフルエンサーさんが当店をSNSで紹介してくれて、その効果で客足は好調、しかも長く続いています。見た目のインパクトは大きいと思っていましたが、ここまでバズるとは驚きです」
聞けば、“とじないかつ丼”は、調理オペレーションがシンプルだという。再現しやすく、ネットで話題になれば人が集まりやすいグルメというと、在りし日の「タピオカドリンク」ブームを思い出す。今後“とじないかつ丼”も、タピオカドリンクのようにSNS人気で集客し、味にこだわらない店が増えていくのだろうか。
「私個人の考えですが、便乗店が増える可能性も否定はできないでしょう。しかし、結局残るのは“本物”の店です。我々も、SNSで有名になっているからと言って天狗にならず、長く愛し続けてもらえるよう味とお客様に真摯に向き合い続けたいと思います」
日本橋とんかつ 一 HAJIME
〒103-0022 東京都中央区日本橋室町1丁目13−9 池田ビル1階
今回話を聞かせてもらった2店には、それぞれが“とじないかつ丼”に込めた“想い”があった。ボリューミーなかつ丼を豪快にかきこみ、お客さんにお腹いっぱいになってほしいという、豚大学とんかつ学部。とんかつが苦手な人でも、肉の美味しさを知ってとんかつを好きになってほしいという、日本橋とんかつ 一 HAJIME。一過性のブームで終わるのか、はたまた“本物”として残っていくかは、その店にしか出せない個性、そして客に寄り添う姿勢にかかっているのかもしれない。
文/清談社・鶉野珠子