連載/FIREの向こう側
世はすっかり「FIREブーム」。資産運用でお金を殖やし、「経済的な自由を得よう!」とうたう記事やテレビ番組がずいぶんと増えた。が、それらに現実味を感じることができずうんざりしている人も多いだろう。
どうしてFIRE(Financial Independence,Retire Early)は遠いものに感じてしまうのか――『投資をしながら自由に生きる』の著者で、自身もFIREしたという投資家の遠藤洋さんに、本企画では素朴な疑問をぶつけてみることで「自由に生きる」ための方法を探っていきます。
Question「部下が同じミスを繰り返して成長しない」
「部下に何度指導しても、同じような失敗を繰り返し、成長が見られません。なぜ失敗を繰り返してしまうのか、どうやったら失敗から学んでくれるのでしょうか?」(46歳・会社員・男性)
Answer「大きな痛みを伴う自分事として向き合えないと、失敗からは学べない」
失敗から学ぶことは多く、取り返しのつかない致命的な失敗は避けながらも、小さい失敗はしたほうがいいということを前回お話ししました。しかし、同じ失敗を繰り返してしまったり、失敗から上手に学ぶことができない人も多いのかもしません。
失敗を繰り返さないためにはどうしたらいいか。失敗から学びを得るためにはどうしたらいいか。失敗を成功につなげるにはどうしたらいいか。今回は「失敗との向き合い方」についてお話しします。
失敗に伴う痛みの大きさに比例して人は学ぶ
そもそも、失敗した後に「痛みを伴うか」で、向き合い方はだいぶ変わってきます。僕は会社員も、自分で会社を作って経営するのも両方経験しましたが、会社員時代の失敗って正直痛みを伴わないんですよ。
もちろん上司から怒られたり評価が下がるといったことはありますが、例えば自分の給料が減るとかもらえなくなるというレベルの痛みまではないじゃないですか。だから、良くも悪くも「守られた環境」の中で失敗しているっていう感じですね。
人は「自分が伴う痛みの大きさに比例して学ぶ」のだと思います。
例えば、社内で「新規事業をやりましょう」と言われ、僕が責任者として立ち上げたとします。半年、1年やっても売り上げ立たず、その新規事業は閉じましたってなっても、多分僕の給料は変わらないですよね。会社員である以上、僕が食べていけなくなることはないんですよ。
たしかに「上司に怒られる」というのは「痛み」ではあるのですが、怒られるときって自分が悪いという部分ももちろんあると思うのですが、多少どこかで「なんでこんなに怒られるんだろう」「俺はそんなに悪くないんだけど…」という思いってありませんか?
「市場環境が悪く…」とか、できない言い訳をいろいろするんですよね。
でも、会社を辞めて自分でその事業をやったときに事業が失敗してしまったら収入はなくなり、食べていけなくなるんですよ。
まったく同じ2つの失敗なんですが、ちょっと上司に怒られたりするくらいで特に自分の生活に影響ない状態と、金銭的に食べていけなくなるっていう状態で、やっぱり大きく違うんですよね。