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サステナビリティやESG関連人材の求人が急増、採用を勝ち取るために磨いておきたいスキルは?

2022.11.29

昨今の情勢の変化や法整備などを受け、SDGs経営やESG(Environment環境・Social社会・Governanceガバナンス)経営などのサスティナブルな経営手法に舵を切る企業が増えている。それと同時に、この領域における専門的な知見や技術を有する「サスティナビリティ・ESG人材」の求人が急増しているという。

20代から50代まで幅広く活躍できる可能性があるらしい。具体的にどんな職種、及びどんなスキルや経験が求められるのか、有識者に聞いた。

「サスティナビリティ・ESG関連」が求人急増

人材紹介事業を行う株式会社コトラに寄せられた、サスティナビリティ・ESG関連の求人状況は、2022年1 月から10月末までの期間において、昨年に比べ 1.4 倍程度に成長。事業会社からの求人については倍増しているという。

※2022年については11月1日までの集計(出典:株式会社コトラ)

事業法人:メーカー(食品、アパレル、機電)、エネルギー、不動産、インフラ、ITサービス・ベンダー

金融:メガバンク、アセットオーナー、アセットマネジメント、証券会社・IBD、格付機関・金融情報、PE・VC(インパクト投資)

コンサル:監査法人(コンサル、保証)、戦略系・総合系コンサル、シンクタンク、信託銀行、認証機関、専門会社、制作系会社

同社の同領域を専門とするエグゼクティブコンサルタントである宮崎達哉氏は、急増の背景について、次のように解説する。

【取材協力】

宮崎 達哉 氏
株式会社コトラ サスティナビリティ・ESG 領域専門 エグゼクティブコンサルタント
信州大学工学部卒、ゼネコンでの施工管理者を経験した後、三重県庁にて産業政策の企画・運営業務に従事。県庁在籍中に、経済産業省資源エネルギー庁及びNEDO にてエネルギー政策に係る新規事業立案や規制・制度の合理化に従事。デロイトトーマツグループでの地方創生及び教育分野のコンサルティング業務を経て現職。
https://www.kotora.jp/

「背景としては、さかのぼること2015年のパリ協定において気候変動の脅威と損失、1.5℃目標などが掲げられたことが起点となったと考えます。

警笛を踏まえて各国で取り組みを始め、日本では2021年6月のコーポレートガバナンス・コード改訂に伴う気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言への対応(※1)、進展しているISSB(国際サスティナビリティ基準審議会)の議論など、様々な制度整備が進展し、これらは企業がサスティナビリティ・ESGに取り組むうえでの外発的動機になりました。

その一方で、グリーンやサスティナビリティをビジネスのチャンスととらえ、経済的なリターンと社会的なリターンをトレードオンしていこうという内発的動機による企業活動も活発化しています。政府からの大きな予算が措置されていることも、これらの呼び水となっていると考えます。

こうした中で、ファイナンス、コンサルタント、事業開発、経営戦略・管理、アナリストなど、様々なプロフェッショナルのポジションが転職マーケットに生じることとなりました」

※1 2021年に改訂されたコーポレートガバナンス・コードを受け、TCFD提言に基づく開示を質量ともに拡充する要請が強まった。

※2 ISSBとは企業がESGの情報開示を行う際の国際基準を策定する組織。気候関連、及びESG全体の開示についての議論を進めていくとしている。

サスティナビリティ・ESG領域の職種とは?

仮に、これからサスティナビリティ・ESG領域に転職を考える場合、具体的にどんな「職種」があるのかは気になるところだ。宮崎氏は「様々な業種・業態から下記のテーマなどに関連した職種が生じています」と話す。

・グリーン・トランスフォーメーション(GX)
・サスティナビリティ・トランスフォーメーション(SX)
・気候変動対応・カーボンニュートラル/脱炭素
・サーキュラー・エコノミー
・サスティナブルファイナンス・インパクトファイナンス
・ESG評価
・サスティナビリティ・データ

そして具体的な職種な次のものがあるという。それぞれどんな職種か見ていこう。

1.サスティナブルファイナンサー、インパクトファイナンサー

ESGに配慮した融資や投資を行うサスティナブルファイナンス、経済的リターンと社会的なリターンをトレードオンを実現するインパクトファイナンスに従事する。

2.ESGバンカー

クライント企業のサスティナブルビジネスの活動、例えば水素サプライチェーン開発事業などのための資金調達やM&A等の投資銀行業務に従事する。

3.ESGアナリスト

運用会社等において、企業分析やエンゲージメント活動、格付会社等において評価・格付業務に従事する。

4.サスティナビリティ・ESGコンサルタント

戦略策定、実行支援、非財務情報の開示や保証など、クライアントの様々な課題に応じた対応に従事する。

5.サスティナビリティ・ESG情報の第三者保証

統合報告書やサスティナビリティレポート等のGHG(温室効果ガス)排出量等の環境データなどの情報に対して、独立した第三者による保証業務に従事する。

6.サスティナビリティ企画、サスティナビリティ推進

コーポレート部門(企画・管理部門)において、サスティナビリティ経営の戦略や施策の立案と推進、統合報告やサスティナビリティレポート等の非財務情報開示、CDP(※3)・DJSI(※4)等の評価・格付機関への対応などに従事。

CO2の測定・削減、SCOPE1から3の算定などの気候変動対応にかかる環境課題に関する業務が近年、急拡大したことに加えて、人権方針策定や人権デューデリジェンスなどの人権対応、CSR調達などのサプライチェーンマネジメント、・EHS(環境・労働安全・衛生)マネジメント、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)、生物多様性・自然資本、人的資本、社会面やガバナンスに関する業務にも対応。

※3 CDPとは「Carbon Disclosure Project(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)」のこと。企業に対して気候変動への戦略や温室効果ガスの排出量に関する公表を求めるプロジェクト。

※4 DJSIとは「Dow Jones Sustainability World Index(ダウジョーンズ・サステナビリティ・インデックス)」のこと。米国のS&Pダウ・ジョーンズ社によるサステナビリティに関する株式指標。

7.サスティナビリティ事業開発

CCS/CCUS(火力発電のCO2排出量を抑える取り組み)・水素・アンモニア・カーボンクレジットなどのカーボンニュートラル・脱炭素ビジネスなどの事業開発に従事する。

8.サスティナビリティ・データエンジニア

サスティナビリティに関するデータの収集・管理・可視化、分析、活用に従事する。

サスティナビリティ・ESG領域を検討する際に必要なスキルや経験とは?

紹介された職種は、実に多様だ。いずれかに興味が湧いたビジネスパーソンもいるかもしれない。ところで、この領域全般を検討する際には、どんなスキルや経験が求められるのだろうか?

「職種に挙げたような経験やスキルを持っている人材にはもちろん強いニーズがありますが、サスティナビリティ・ESG領域の経験やスキルを持つ方は、まだ少ないため、必ずしも経験やスキルがなければ相手にしてもらえないというわけではなく、ポテンシャルの採用も増えている状況ではあります。

他方で、欧州などが先行して様々な取り組みやフレームワーク・基準の検討を進めているため、そうした議論をキャッチアップする、ステークホルダーと協議し連携していくための『英語力』はあったほうが有利です」

サスティナビリティ・ESG領域のポテンシャル採用を勝ち取るには?

サスティナビリティ・ESG領域には、ポテンシャル採用が期待できるというが、その年齢層とは?またどのようなポテンシャルが期待され、採用に至り得るのか。

「現状のマーケット環境では、20~30代の方にはポテンシャル採用のチャンスがあり、実際に未経験の方の転職のご支援、企業様とのご縁をおつなぎする機会も増えています。

理系大学・大学院の出身者、メーカーやプラント等のエンジニア、IT・データエンジニア、他領域のコンサルティング経験者、経営企画・事業企画や事業開発、プロジェクトファイナンスなどのファイナンス経験者、クレジットアナリストやリサーチャー、広報・コミュニケーションの経験者、語学力に長けた方など、様々なバックグラウンドの方にチャンスがあります。

また、民間企業での経験に限らず、公的機関、国際機関、非営利機関での経験を評価される場合もありますので、パブリックセクターやソーシャルセクターから、ビジネスセクターに転職を検討している方にも十分チャンスがあります」

一方で、どのようなポテンシャルが期待されて採用に至るかは、職種によって異なるという。

「お持ちの学歴や経験をどのように発展していけるかの可能性も多岐に渡ります。この領域は発展途上であり、また非常に変化が激しいため、しばらくすると新しい論点が生まれることもあります。コトラでは常に最新の業界情報をキャッチしていますので、適切なご支援ができると考えています」

サスティナビリティ・ESG領域で活躍するために磨いておきたいスキルと経験3選

総じて、サスティナビリティ・ESG領域で活躍するには、どんなスキルと経験を磨いていくべきだろうか。職種ごとのスキルや経験については職種ごとにも異なるため、職種の説明が参考になるが、共通する要素として、宮崎氏は次の3つを挙げる。

1.プロジェクトマネジメント力

「サスティナビリティ・ESGを進めるには多くの困難が生じるため、社内外のステークホルダーを巻き込み、理想と現実のギャップを埋めながら、サスティナブルな企業活動を実現していくようなプロジェクトマネジメント力を備えた人材は魅力的です」

2.デジタルスキル

「サスティナビリティ・ESGを進めるうえで、人的資本、知的資本(知財)、社会関係資本、自然資本、製造資本といった非財務資本の活用が重要なポイントとなっています。また、これらの資本がどのような財務影響を生じるのか、定量化・可視化していくことが求められ始めています。これらの実現にはデータドリブンな取り組みが必要であり、デジタルスキルを持った人材が求められています。

デジタルツールを活用できるレベルのスキルを持つことは、すべての職種にとってベターであると考えます」

3.情報収集力、情報分析力、英語力

「日進月歩していているため、常に新しい情報をつかんでいく必要があります。欧州など海外での新しい動きについていく必要もあるため、リアルタイムで情報を得るための英語力も必要となります。また、得られた情報をどのように自分たちのビジネスに生かしていくか、情報を分析して活用していく力も求められます」

今後の求人動向予測

今後、サスティナビリティ・ESG領域の求人はどうなっていくだろうか。宮崎氏は次のように締めくくった。

「サスティナビリティ・ESG領域の求人は、5年前から20倍程度に増加しています。急速に拡大するビジネスに対して、プロフェッショナルがまったく足りていない状況です。

政府はグリーントランスフォーメーション(GX)の実現に向けて、今後10年間に官民で150兆円超を投資することを掲げ、政府資金は新たな国債『GX経済移行債(仮称)』で20兆円調達する方針も打ち出しています。こうしたインパクトのある政策は、企業のビジネスを促進し、採用意欲を高めることにもなります。

また、人的資本経営、TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)といった議論も急速に進展しつつある状況で、こうした新しい切り口での求人も実際に出始めています。

今後も引き続き、経験者からポテンシャルまで幅広く様々なバックグラウンドの方に、サスティナビリティ・ESG領域のキャリアを築くチャンスがあると確信しています」

ちなみにコトラでは、2022年12月13日(火)に「虎の祭典」を開催し、サスティナビリティ・ESG領域を牽引してきたコンサルティング業界のBig4(デロイト、PwC、EY、KPMG)から、ビジネスリーダーをゲストに迎え、「グリーントランスフォーメーション(GX)の最前線とキャリア構築の醍醐味」について、本音の議論を交わすという。会場参加とオンライン参加が可能だ(申し込みは2022年12月13日(火)17:00まで)。サスティナビリティ・ESG領域のビジネスや転職マーケット動向を知る良い機会ともなるだろう。

サスティナビリティ・ESG領域は、今後、確実に注目が高まっていく情勢であるようだ。多くの人が未経験という領域だからこそ、いち早く注目しておくことが吉と出るのではないだろうか。

【参考】「虎の祭典」

取材・文/石原亜香利

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