アラバマ州にあるコーヒー郡が電力会社NextEra Energy Resourcesと手を組んで、再生可能な天然ガスRNGの生産施設を建設するプロジェクトを発表した。
このプロジェクトでは、コーヒー郡が所有する埋め立て地にRNGの生産施設を建設する予定で、生産されるRNGはすべて大手のガス会社Southeast Gasが所有するパイプラインに接続して、エネルギー源として供給される。
RNGの生産施設が完成すれば、年間16,500トン以上の埋め立て地由来のメタンガスが回収され、RNGに生まれ変わる見通し。この記事ではRNGとは何か、アラバマ州のプロジェクトについて、また北米のRNG生産施設について紹介する。
再生可能な天然ガス(RNG)とは
初めに再生可能な天然ガス、RNGについて解説しよう。
RNGは、農場や牧場から回収される家畜の排せつ物や、木、竹、ワラといった動植物由来の有機廃棄物、廃棄物処理場の排水汚泥、埋め立て地で処分される廃棄物などから出るメタンガスを原料にして製造するバイオガスやバイオメタンを指す。
バイオガスやバイオメタンは燃料として利用できる天然ガスである。一方、メタンガスは人間が排出する温室効果ガスの中で、二酸化炭素の次に量が多い。
温室効果ガスであるメタンガスの発生源を再生可能なエネルギー源として活用することで、温室効果ガスの発生を抑え、温暖化対策を行うのがRNG活用のねらいである。
RNGは、既存のガス会社のパイプラインに接続して都市ガスの燃料として利用されるほか、バスやトラック、天然ガスを燃料とする自動車での利用が進められている。
アラバマ州のRNG生産施設建設計画
アラバマ州での建設が発表されたRNGの製造施設は、クリーンエネルギーのリーディング・カンパニーであるNextEra Energy Resources社と、アラバマ州にあるコーヒー郡との共同事業である。
建設予定の施設で生産されるRNGは、既存の大手ガス会社であるSoutheast Gasのパイプラインに接続し、長期契約のもと都市ガスの燃料の一部として活用される。
前述のように、メタンガスは人間が出す温室効果ガスの中で2番目に量が多い。このメタンガスを排出する有機廃棄物をエネルギー源として活用することで、トータルで温室効果ガスの排出量の削減が実現する。この施設が完成すれば今後、毎分11,000立方フィート(約31立方メートル)、年間で16,500トン以上のメタンガスを削減、有効活用できる計算である。
NextEra Energy Resources社のCEOであるRebecca Kujawaは、「このプロジェクトは電力、工業、輸送業界の脱酸素は可能であるという我が社の信念と一致している」と述べた。
また、コーヒー郡の行政官Rod Morganは「この契約は、アラバマ州にとって経済的、環境的に非常に大きな意味がある。財政的にも持続可能性の観点からも、再生可能なバイオガスは、埋め立て地から得られる価値の高い生産物である。この施設はまさに、我々がコミュニティ内で今後推進する開発を体現している」とコメントした。
また、このプロジェクトにより、約50〜60人の建設雇用が生み出される予定である。
世界的なRNG生産施設について
最後に、その他のRNG関連情報を見ておこう。
RNGの生産施設の建設やRNGへの投資は北米各地で進んでおり、例えばアメリカでは2022年5月にRNG生産大手であるArchea Energyが、環境サービス業大手のRepublic Servicesと合弁事業を発表した。全米で39のRNGプロジェクトを開発するという。
サウスカロライナ州では2021年10月に食品加工工場からメタンを回収し、RNGを作る装置の設置が決定された。これは再生可能エネルギーのグローバル企業Envivaが再生可能天然ガスの総合ソリューション提供企業であるGreenGasUSAと、RNG長期売買契約を締結した結果、実現したもの。
カリフォルニア州では2021年4月、豊田通商アメリカが、再生可能天然ガスの製造販売を行うMerced Pipeline LLCに出資を行っている。
アメリカとカナダで廃棄物処理と環境サービスを提供するWM社は、2022年4月、RNGの生産量を6倍にすることや、RNGのネットワーク拡大を目指して2026年までに8億2,500万ドル(約1,100億円)の投資計画を発表。
2021年3月には石油系巨大企業複合体であるTotalが、リサイクル材料会社とともにRNGを開発するための合弁会社の設立を発表した。この合弁会社では、RNGの製造から燃料供給インフラまでを提供する。
ケベック州においては2021年3月から、カナダ初となる埋め立て地のガス利用施設が設置された。Waga Energy社が設置した施設からケベック州最大のガス配給会社に供給される仕組みだ。
2021年2月には石油メジャーのChevronとリサイクル会社であるBrightmarkが、RNG生産プロジェクトの拡大を発表。このプロジェクトでは、新たに5つのRNG製造設備が建設される。
有機廃棄物を原料とするRNGの供給量は、ガスの総需要の数パーセントを占めるに過ぎず、2040年のアメリカのガス需要の3〜5%にとどまるとの試算もある。ただし、大気中のメタン濃度は増加し続けているのも事実である。今後の世界での取り組みにも注目したい。
文/森野みどり