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商品調査ではトータルポジティブでなく「トップボックス」だけを信じるべき理由

2023.03.08

自分の考えた商品や事業が世に出て、お金を出して買ってもらえる。商品開発の仕事には多くのやりがいがあると思いますが、せっかく一生懸命考えても、一向に売れない商品やサービスも数限りなくあります。そんな時の企画担当者は、ホントにつらいものです。

お菓子メーカーの「江崎グリコ株式会社」で21年、そして「株式会社バンダイ」で16年、新商品企画及び新規事業開発の仕事に携わってきた山崎進一氏は「商品開発、企画開発」には実はコツみたいなものがあって、そのポイントをうまく押さえられているかどうかが、成功するかしないかに大きく影響してくるのではと、だんだんとシンプルに考えられるようになってきたといいます。

たくさんの商品を世に送り出し、時にはヒットに恵まれ、時には鳴かず飛ばずの苦汁を舐め、またそれぞれの会社の先輩や仲間からとっても多くのことを学んだ山崎氏の著書開発マンの上司は消費者である!商品開発のツボ30+αから若いマーケッター、商品企画担当者に伝えたい、企画開発のコツを一部抜粋・再構成してお届けします。

開発マンの上司は消費者である!
商品開発のツボ30+α
山崎進一
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商品開発のツボ(23)「トップボックスしか信じない」

 調査は仮説の検証ですが、その結果をどう読み解くかで、実は180度異なった判断をしてしまうことが、時にあります。ここでは、そんな調査の陥りやすい罠について、お話しします。

 調査をする時には、調査用紙に設問を用意し、答えを記入してもらうのが一般的です。答えもあらかじめいくつか用意しておいて、○を付けて被検者に選択させることが多いと思います。

 例えば、「あなたは、このおもちゃが好きですか?」という設問に対する答えとして、

 ・大好き ・少し好き ・好きでも嫌いでもない ・あまり好きでない ・嫌い

 といったようにです。

 まず、一般的な調査理論としては、答えの選択肢を、この場合、5段階に分けていますが、これは、これで正しいと思います。よく、結果をハッキリさせたいがために、

 ・好き ・どちらでもない ・嫌い

 と3段階で聞いたり、「好き」と「嫌い」の2段階にするパターンを見かけますが、これは全くお勧めしません。なぜなら、3段階や2段階では、調査特有の「お世辞」「ニュアンス」をつかみ切れないからです。

 そして、5段階のうち、「大好き」を強支持、「少し好き」を弱支持、「あまり好きでない」を弱不支持、「嫌い」を強不支持とします。そして、「大好き」「少し好き」を合計した「支持者計」を「トータルポジティブ」と呼び、さらに、その中の強支持者、つまり「大好き」と答えた人を「トップボックス」と言います。

 例えば、100人の調査の結果が以下の〈調査結果①〉ようになったとします。


〈調査結果①〉
「大好き」5人、「少し好き」75人、「好きでも嫌いでもない」10人、 「あまり好きでない」5人、「嫌い」5人


 この場合の調査結果は、トータルポジティブ(支持者計)が80%で、うちトップボックス(強支持者)は5%となります。担当者は、「この商品は8割の人に支持されているので、発売すべきです」と上申するでしょう。果たしてこの商品は売れるでしょうか?

 答えは、「売れない」(キッパリ!)です。トータルポジティブは確かに80%の数値になっていますが、そのうちのトップボックスが少なすぎます。

 では②の場合はどうでしょう?


〈調査結果②〉
「大好き」40人、「少し好き」40人、「好きでも嫌いでもない」10人、 「あまり好きでない」5人、「嫌い」5人


 明らかに大好きと答えたトップボックスの人が多いですね。でもトータルポジティブは同じ80%です。この比較では、明らかに②の方が売れそうに見えます。

 さぁ、では③のようになったらどうします?


〈調査結果③〉
「大好き」40人、「少し好き」5人、「好きでも嫌いでもない」40人、 「あまり好きでない」15人、「嫌い」5人


 トータルポジティブは45%しかありません。①と比較すると、80%の支持に対しては半分くらいの支持者しかいません。

 ここで、間違いを起こすのです!

「トータルポジティブで80%」にだけ目を向け、①を採用し、発売までしてしまうケースが本当に多いのです。

 また、もっと悪いのは、③の商品に対し、「45%のトータルポジティブをもっと上げろ」というケースです。担当者自身も困って迷って、どんどんマイルドで特徴のない、およそ売れそうにない「丸い商品」にしてしまうケースが、これまた実に多いのです。「大きな組織」や、「ご意見番」の多い企業にありがちです。皆さんの企業は大丈夫ですか?

 例えばこんな調子です。③を改良した結果、


〈調査結果③-2〉
「大好き」10人、「少し好き」50人、「好きでも嫌いでもない」30人、「あまり好きでない」5人、「嫌い」5人


「大好き」40人→10人、「少し好き」5人→50人となり、トータルポジィティブは45%→60%になりました。6割の人に支持されるまで改良しましたという訳です。はっきり言ってこれは、「改悪」ですよ。(キッパリ!)③の商品の良さを本当にわかってくれるお客様が減ってほとんどいなくなった商品なんて売れる訳がありません。

 また、最近では「大好き」の強支持を2ポイント、「少し好き」の弱支持を1ポイントにして加重計算し、トータルポジティブの中のトップボックスの割合を反映させようとする試みもあり、よく調査会社や代理店がキッチリ計算したりして報告してきますが、これも五十歩百歩で、あまり信用できません。

 余談ですが、調査結果の支持者が、実際に商品が発売されたら買うかどうかの追跡調査をした会社があったそうですが、結果は、「大好き」の評価をした人はそのほとんどが購入したのに対し、「少し好き」と答えた人で実際に購入まで至った人は1割ちょっとだったそうです。これは何を意味するのでしょうか?

 私が、グリコの看板商品の1つであるサラダやトマトといったプリッツグループのブランドマネージャーをしていた時に、「ごまプリッツ」という商品を担当者と一緒に開発しました。この商品は、企画段階の味作りでかなり苦労をした商品でした。ゴマの香ばしさを活かそうという狙いのプリッツでしたが、ちょっぴり甘くてしょっぱいという味が、中途半端だったのでしょうか? 嗜好調査では、トータルポジティブが80%以上あり、まずまずという評価でしたが、トップボックスがちょっと低かったのです。

 CMに人気タレントを起用し大々的に売り出し、発売当初はそれなりに売り上げを作った商品でしたが、思いのほか短命に終わってしまいました。

 この時の経験より、私はトータルポジティブではなく、トップボックスを強く意識して調査をするようになりました。

 調査は仮説の検証です。調査では本当に売れるかどうかは、正直わかりません。後述しますが、テストセールで実際に売ってみないことには、売れるかどうかなんてわからないのです。しかし、調査で売れない商品を篩にかけることはできるのです。

 調査に「お世辞」は付きものです。特に日本人は真面目ですから、調査結果は少し良くなりがちです。弱支持はお世辞と思ってください。ホンキで信じたら騙されます。調査では、トップボックスだけに注目しましょう。

 トップボックスがしっかり高い商品は、売れる可能性が高いと言えます。

 嫌いな人は多少いても気にすることはありません。今の時代、本当にお客様に響いた良い商品はクチコミで拡がります。発売後に、必ず強支持の人がオピニオンリーダーとして人気を拡げてくれるものです。

 トップボックスだけを信じ、企画を進めましょう!

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<著者プロフィール>
山崎進一
昭和57年、明治大学商学部卒業後、江崎グリコ株式会社に入社。「アーモンドクラッシュポッキー」「お土産ジャイアントシリーズ」「タイムスリップグリコ」等のヒット商品を開発。平成
15年、株式会社バンダイに転職。「ガンダムカフェ」の立ち上げ、「ベルばらの本格化粧品」の発売やキャラクター菓子の売上に貢献。令和元年、定年退職し、経営コンサルティング会社【企
画のびっくり箱 Y-BOX】を設立。またプライベートでは趣味のアウトドアの知識を活かして「おもしろ理科クラブ」を主宰。
また「ビートルズ研究家」としても有名。持論は、「仕事は楽しく、遊びは真剣に!」
Y-BOXホームページ https://www.y-box.tokyo

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