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ネーミングは愛称!ヒット商品に共通する「かわいい名前」の重要性

2023.01.30

自分の考えた商品や事業が世に出て、お金を出して買ってもらえる。商品開発の仕事には多くのやりがいがあると思いますが、せっかく一生懸命考えても、一向に売れない商品やサービスも数限りなくあります。そんな時の企画担当者は、ホントにつらいものです。

お菓子メーカーの「江崎グリコ株式会社」で21年、そして「株式会社バンダイ」で16年、新商品企画及び新規事業開発の仕事に携わってきた山崎進一氏は「商品開発、企画開発」には実はコツみたいなものがあって、そのポイントをうまく押さえられているかどうかが、成功するかしないかに大きく影響してくるのではと、だんだんとシンプルに考えられるようになってきたといいます。

たくさんの商品を世に送り出し、時にはヒットに恵まれ、時には鳴かず飛ばずの苦汁を舐め、またそれぞれの会社の先輩や仲間からとっても多くのことを学んだ山崎氏の著書開発マンの上司は消費者である!商品開発のツボ30+αから若いマーケッター、商品企画担当者に伝えたい、企画開発のコツを一部抜粋・再構成してお届けします。

開発マンの上司は消費者である!
商品開発のツボ30+α
山崎進一
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商品開発のツボ(19)「ネーミングは愛称」

 私が大学を卒業して社会人となり江崎グリコに入社したのは、今から40年前になります。当時のグリコでは、新入社員には大変手厚い研修プログラムが用意されており、4月から全国を営業車でまわって営業のイロハを学び、工場では商品の生産の手伝いをし、本社でも広告や開発の研修をしっかり受け、晴れて正式に配属になるのは、年明けの1月でした。私は配属の希望が「商品開発」で、運良く希望が叶い、菓子のRD部(新商品開発部)に配属になりました。

 いよいよこれからが本番です! 意気込んで部長に挨拶に行くと、「お前の最初の仕事はネーミングを考える仕事だ」と言われました。しかも、「1日500案、どんな菓子の名前でもいいから考えてみろ! どこでどんな手段を使ってもいい」とのことです。「はいっ! しっかり考えます」こうして私の開発人生がスタートしました。

 先輩社員がニヤニヤして、「ここに6か国語辞典があるので、こういったものを参考にしてみたらいい」と教えてくれました。早速借りて見ていると、面白いではありませんか。確かに参考になります。徐々に気になった言葉を組み合わせて、ネーミングのアイデアを出していきました。

 しかし、その間にも得意先からの電話がかかってきたり、先輩に手伝いを依頼されたり、意外と思うように数出しが進みません。数時間経ち、お昼過ぎに100個くらいは頑張って出してみたものの、よくよく考えてみたら、1日の労働時間は8時間、毎分1個ネーミングのアイデアを考案しても、480個しかできません。しかも休みなしで……既に今は3時間以上経過しています。これは、結構大変だ! と、初めて時間がないことに気付きました。

 そんな調子でしたので、1日目の終わりには、300案くらいしかできていませんでした。もちろん寮に帰ってからも考え、ようやく1日目の500案が完成しました。ふぅ〜。

「明日は、もっと計画的にいこう!」と決め、翌朝から私は会社に行かず、図書館に向かいました。(何しろ当時はまだパソコンもインターネットもない時代です)図書館にはありとあらゆるジャンルの書籍が揃っています。ここに行けばきっとヒントが見つかるに違いないと思ったのです。

 果たして私の思った通り、図書館はアイデアの宝庫でした。特に参考になったのが、図鑑、辞典類と電話帳でした。植物図鑑に昆虫図鑑、宇宙の星や星座の本や有名人の名前辞典等々……。花の図鑑の索引で片っ端からヒントを得て、というかほぼ丸写しで、どんどんネーミングを出していきました。そして最も速くたくさんの名前を作ることができたのが、実は「電話帳(現在のタウンページ)」でした。

 ジャンルごとにたくさんのお店や企業名があり、例えば、喫茶店の部ですと、アイウエオ順に、アイ、愛、アイアイ、アイアイ傘、青い家、青い屋根といった調子で、数限りなくオシャレな(?)名前が並んでいます。「やった! これで、一気に仕事が捗る!」と喜びました。そして1週間で3500個のネーミング創出を無事達成できました!

 ここでは、そんな商品のネーミングについて考えてみたいと思います。アイデア発想の章でも説明しましたが、ネーミングのアイデアも数多くの候補を出すことが重要です。

 そのために、私が行ったように実際に図書館に行くのもいいですが、今ではインターネットの辞典や図鑑で無限のアイデアを拾うことができます。なんならコピペで、一瞬にして100案のネーミング創出も可能ですね。

 参考になる本としては、やはり6か国語辞典、8か国語辞典等は、本当に役立ちます。今では13か国語辞典まであります。商品の持つ特徴やイメージを他の国の言葉に替えてみると、「どこか聞いたことのあるようで、しっかり意味のあるいいネーミング」を創出できます。

 また最近では、ネーミングを考える仕事が増えたのか、「ネーミング辞典」というそのままズバリの本もあります。さらに、ゲーム等を作るクリエーター用に、「ファンタジー事典」「SF事典」「シナリオ事典」「ミステリ事典」……等まであるようです。

ネーミングを考える際、注意すべき点とはいったい何でしょう?

 基本は、「はやい」「やすい」「うまい」です! というとどこかの牛丼店のようですが、「はやい」の意味は短くて瞬時に読めることです。長い名前は理解を遅らせます。そのため、できるだけ短い名前が良いでしょう。店頭でパッと目に入って瞬間理解できることが大切です。次に「やすい」は、覚えやすくて言いやすいということです。短い名前であれば、大体覚えやすくもなります。そして次は「うまい」です。「うまい」は商品の特徴をうまく表現していることです。伝えたいイメージを上手に表現できているネーミングはやはり強いものです。一言で言うなら、ネーミングは簡潔なことが一番、と言えます。

 しかし、ネーミングをつける際に、最も大切なコツが実はもう1つあります。

 それは、「可愛いこと」なんです。可愛い名前がなぜいいか?

 それは、誰でも本能的に、可愛い名前の方が何度も呼びやすいからです。

 例えば、ちょっぴり太った小さな女の子がいたとします。その子のことを「チビデブ」と言うか「まるちゃん」と言うかで、そのイメージは全く変わります。「チビデブ」では、言われる方はもちろん嫌ですし、言う方も嫌なものです。その点「まるちゃん」の場合、誰もが親しみを持って言えます。可愛い名前の方が何度も呼びたくなり、定着するものなのです。「あだ名」ではなく、愛のある「愛称」で呼んであげることです。

 つまり、「ネーミングは愛称」なのです。こう理解しておくと、実際にネーミングを考える際に、事務的にならず、お客様にも支持されやすい名前を創ることができる筈です。自分の子どもに名前を付ける感覚で付けてみましょう。

 この可愛いことは男女ともに通用するポイントですが、特に女の子向けの商品には、昔から、「パピプペポの法則」と言われるようにネーミングにパピプペポの発音を入れると可愛らしくなり、ヒットにつながるという傾向もあります。ポッキー、プリッツといったグリコのお菓子、プリキュア、ポケモンといったキャラクターのネーミングも、確かにパピプペポですね。

 では、男の子向けの商品はというと、私は「ギガGZの法則」と名付けました。ガギグゲゴの力強さやG、Z、GT、Xといったこれもカッコいい系のアルファベットを使うことで小学生の男の子を夢中にさせる名前を創ることができます! ドラゴンボールZ、スカイラインGT等々。

 バンダイに「たまごっち」という歴史的な大ヒット商品があります。これこそ「可愛い愛称」ですね。「携帯性」「お世話する」「ペットゲーム」といった商品の特徴から、いろいろなネーミングの候補があったかと思いますが、「卵型」という形状から「たまごっち」という「可愛い愛称」で、全て言い得てしまった訳です。名付けた方は天才ですね。本当に可愛くっていいネーミングです。

 グリコ時代の余談ですが、私はアウトドア好きで、昆虫採集をしたり、星座観測、釣り、キャンプ等をしたりして楽しむといった趣味があり、友人と二人でよく週末に遊んでいましたが、共通の趣味を持つ仲間をもっと増やしたいという思いがあったので、「科学部」という同好会を作り、グリコの社内報の紙面を少々いただいて「科学部新設、部員大募集!」と掲載してもらいました。

 しかし残念なことに、この記事を見て来た人は、なんとゼロ‼ 誰一人来なかったのです。とほほ(T_T)

 狙いも活動内容も面白そうなのに、なぜ? と二人は思いました。

「もしかしたら、これは科学部という名前が悪く、堅苦しそうなイメージを与えているのでは?」と思い、もっと「可愛くって気軽で楽しそうな名前にしよう」ということになり、部の名前を「おもしろ理科クラブ」という名前に変えてみました。すると驚いたことに、あっという間に部に入りたいというメンバーが40人も来たのです。中身は全く一緒なのに、ネーミング1つでこれほど差があるのかと、趣味の世界でも体感した次第です(笑)

 このように、誰もが言いたくなる「可愛い名前」を付けることが如何に重要なことか、そしてネーミングが良ければ、その商品がヒットする確率も確実に高まるということを認識してください。

 今よりももっともっとネーミングにかける時間を増やし、意識的に、「可愛い名前」を付けて、素晴らしいネーミングを追求してみてください。

 そしてお客様に何度も呼ばれ、愛されるヒット商品を創って欲しいと思います。

 

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<著者プロフィール>
山崎進一
昭和57年、明治大学商学部卒業後、江崎グリコ株式会社に入社。「アーモンドクラッシュポッキー」「お土産ジャイアントシリーズ」「タイムスリップグリコ」等のヒット商品を開発。平成
15年、株式会社バンダイに転職。「ガンダムカフェ」の立ち上げ、「ベルばらの本格化粧品」の発売やキャラクター菓子の売上に貢献。令和元年、定年退職し、経営コンサルティング会社【企
画のびっくり箱 Y-BOX】を設立。またプライベートでは趣味のアウトドアの知識を活かして「おもしろ理科クラブ」を主宰。
また「ビートルズ研究家」としても有名。持論は、「仕事は楽しく、遊びは真剣に!」
Y-BOXホームページ https://www.y-box.tokyo

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