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商品開発担当者がアイデアを1000本出すためにやるべきこと

2022.11.27

自分の考えた商品や事業が世に出て、お金を出して買ってもらえる。商品開発の仕事には多くのやりがいがあると思いますが、せっかく一生懸命考えても、一向に売れない商品やサービスも数限りなくあります。そんな時の企画担当者は、ホントにつらいものです。

お菓子メーカーの「江崎グリコ株式会社」で21年、そして「株式会社バンダイ」で16年、新商品企画及び新規事業開発の仕事に携わってきた山崎進一氏は「商品開発、企画開発」には実はコツみたいなものがあって、そのポイントをうまく押さえられているかどうかが、成功するかしないかに大きく影響してくるのではと、だんだんとシンプルに考えられるようになってきたといいます。

たくさんの商品を世に送り出し、時にはヒットに恵まれ、時には鳴かず飛ばずの苦汁を舐め、またそれぞれの会社の先輩や仲間からとっても多くのことを学んだ山崎氏の著書開発マンの上司は消費者である!商品開発のツボ30+αから若いマーケッター、商品企画担当者に伝えたい、企画開発のコツを一部抜粋・再構成してお届けします。

開発マンの上司は消費者である!
商品開発のツボ30+α
山崎進一
ご購入はこちら

商品開発のツボ(6)「アイデア1000本ノック」

 企画の仕事はアイデアを出して具体化していくことです。他人やライバルメーカーが考えつかないような「差別化された魅力的なアイデア」を如何に数多く早く出せるかが勝負です。毎回毎回、スピーディにホイホイ売れる企画を生み出せたらいいのですが、そう簡単にはいかず、皆さん苦労されていることと思います。そのため、「アイデア会議」「ブレインストーミング」等を実施して、数多くのアイデアを出す工夫をしていますね。

 まず、「アイデア会議」そのものが、正しく行われているかどうか? を認識する必要があります。企業に勤めている人に、会議は付きものです。「経営会議」「営業会議」「開発会議」「プロジェクトミーティング」「デザイン打ち合わせ」……等、およそ会社の中には「会議」「ミーティング」「打ち合わせ」と呼ばれるものが、たくさん存在します。

 そんな会議に出席していると、なかなか会議が進まなくなってイライラしたり、アイデアが思うように出せなくなったと感じることが、私も多々あります。時には「この会議は無意味だ」と過激に思ったりもします。なぜ会議がうまく進まないのでしょう?

 もちろんテーマが重すぎて、なかなか進まないこともあるでしょうし、出席しているメンバーの顔触れによっては、自由に発言できないこともありますが、会議にはその性格上、2種類あって、今どちらの会議なのかがハッキリしないと、目的がブレて思うように進行できないことがあります。まずはこの2種類の会議について理解をすることが大切です。

 一般的に、会議は、アイデアをたくさん出すことが目的で、自由に発言する「発散型の会議」と、まとめることが主眼で、キチンと一定の結論を出す「収束型の会議」に大別されます。

「発散会議」はいわゆる「アイデア会議」「ブレインストーミング」といわれるもので、出席者は7人くらいまでで、自由にアイデアを出しあう会議です。文字通り、頭(ブレイン)の中で、嵐(ストーミング)のようにアイデアが吹きまくる状態の会議です。この会議では、どんなアイデアでも否定せず、とにかく数多くのアイデアを出しまくります。右脳で発想することが大切で、論理的にちょっとおかしいなとか、これは実現が難しそうだなと思うのは一切ご法度、気にせずに思いつきを拡散させていきます。もちろん、アイデアを数多く出す会議ですので、結論が出なくても気にしないことが肝要です。

 一方で、キチンとまとめる「収束会議」では、冷静に論理的に会議を進行させ、まとめながら、結論を出すことに集中します。こちらは、どうなったら決定事項となるのか、意思決定者が誰なのかをあらかじめ決めておいて、会議が堂々巡りしないような配慮が必要です。しかも、確実に時間内に結論を出す必要がありますので、タイムキーパーも重要な役割となります。

 さて、今皆さんが実施している会議はどちらの会議ですか? 実はこの2種類の会議が1つの会議の中で一緒になってしまっていることが本当に多いのです。大方「うまく機能していない会議」はこの両方の会議の性質が一緒になり、会議の主催者も出席者も、目的を十分認識しないまま、行われているのです。改めて、まずこの会議は「発散目的の会議」なのか、「収束を求める会議」なのかをハッキリさせて、運営してみてください。きっとかなり充実感のある会議になると思いますよ!

 では「アイデア会議」の原則はご存じですか? もう大半は説明してしまいましたが、以下の4点といわれています。

■〈アイデア会議の4原則〉

●アイデアは質より量
●アイデアは組み合わせ
●批判厳禁
●人のアイデアに乗る

 そのアイデアを楽しくポンポン出せたらいいなと誰もが思いますよね。アイデアが湯水のように湧いてくる人を見たら羨ましく思い、彼は才能があるからとか、私はアイデア発想は苦手なんだと思い込んで、諦めている人が意外と多いのではないでしょうか? 確かにアイデアを出す作業は、得手不得手の個人差があります。ただ、アイデア出しが苦手な人でも、訓練次第でかなり進化できるのです。私がグリコ時代から実施し、バンダイに入ってからも、新人開発マンに実践してきた「アイデアマンになるための訓練」を次にご紹介したいと思います。

 題して「アイデア1000本ノック」です。

 その手法はこうです。まず新人開発マンに、「アイデアは量が必要です。たくさんの方面から考えを巡らすことが、いい企画への近道です」とこれまで私が説明してきた話をします。そしてこの訓練(研修)を始める訳です。

 まず、毎日10案の新商品(新事業)のアイデアを出し、それを100日間連続して続けます。10案×100日=1000案、つまり3か月半後には、晴れて1000案のアイデアが出されることになります。但し、これには条件があります。アイデアの核となるコンセプトを明確にすることと、簡単な絵を描き添えること。絵を描くのは苦手だと言う人もいますが、それも訓練なのです。商品開発の仕事を本業とするならば、絵を上手に描けた方がいいのは自明の理ですし、とにかく人を説得して企画を通すのであれば、ヘタでもいいので絵があると、確実にわかりやすく相手に意図が伝わります。自分の考えていることをしっかりと関係者に伝える仕事が、今後本当に必要になってくるのですから。

 私は正直「絵のない企画はダメ企画」と思っています。たくさんの言葉を並べるより、絵を使って一発でわからせることが重要です。実は私の場合、小学生の時から図工は大の苦手で、特に絵は今でも超ヘタクソです。でも気にしないで描くことにしています。そんなヘタな絵でも、ないよりはずーっと伝わりやすいことを体感しています。皆さんもどんどんと描き慣れていきましょう。

 今では物議を醸すかもしれませんが、このアイデア考案は、9時から5時までの通常の業務時間内ではなく、業務の終わった後から翌日の業務が始まるまでに考えること、としました。企画のような考える仕事は、まずは、四六時中アンテナを張り巡らせていることが必要だという意味でもあります。起業家で成功した人、会社でキッチリ出世する人は、結果的には「どんな時でもしっかり考え抜いている」ものなのです。

 アイデアはノートの1ページに1案ずつまとめていきます。10案ですから10ページ必要です。アイデアを書き留めるノートの数も、3か月後には膨大になります。前述の通り、企画の仕事はある意味休みなしともいえますが、いいアイデアを生むためには、うまく時間の使い方をコントロールして、頭を切り替えていくこともまた重要です。「5時から充電」でモードを切り替えている中で、いいアイデアが浮かぶものなのです。

 そして毎週月曜日の朝には、1週間分のアイデアをまとめて管理者に70案提出します。

 このルールですと、週末にまとめて70案やろうとして、平日の夜は一切やらない者が現れますが、それは絶対にその人のタメになりません。なぜか? この訓練は毎日決まった時間に考える癖をつけることが元々の狙いだからです。一夜漬けでこれまで全てのテストというテストを乗り切ってきたタイプの人は、割と週末一気型になりがちです。しかし、このやり方は必ず破綻します。70案をちゃんと考えることは難しいことです。相当の時間がかかります。週末の遊びたい時にこれをしっかりこなせますか? テキトーになった時点で、もう破綻していますし、大体70案出すこと自体が目的ではないのです。24時間考え抜いて、自分をコントロールして、毎日企画を作っていく姿勢が大切なポイントなのですから。

 さて、実際にこの研修を始めますと、最初はどんな人でも、それなりにスイスイと進みます。様々な経験や知識のストックで企画が作れるのです。しかし、ある程度までいくと同じようなアイデアが目立つようになります。「あれっ? このアイデア、前に出したような気がする……」「似たアイデア確か考えたなぁ……」となるのです。個人差はありますが、大体100案目くらいまでは問題なく創出し、その後の200〜300案を出す頃には、いわゆるネタ切れになってきて、考えることが嫌になったり、どれもこれも過去に作ってしまったアイデアのような気になり、新しいアイデアが出せなくなってきます。一生懸命外へ出てネタ探しをしても、なかなかいいアイデアが浮かびません……。

 そこでどうするか? 大抵の人は、他の人を頼ります。「私にアイデア頂戴〜」「代わりに考えて〜」とか、中には「アイデア500円で買う!」なんて人も実際にいました。もちろん、他人に書いてもらうのはダメですが、「もう自分がアイデアを出せない状況になってきた」ということに気付くことが「正解」なのです。どんなにアイデアマンを自負している人でも、1000案作っている間に必ずこの瞬間が何度かやってきます。

「ネタ切れ老人」のように枯渇した脳に新しい刺激を与えてくれるのは、「他人の一言」であったり、「飲んだ時のちょっとした思いつき」であることが多いのです。そこで、「あー、そういう考えもあるよね」とか「面白いアイデアですね」と思えたらもう勝ちです。そこからまた自力で一気にいくつかのアイデアが出てくる筈です。

 でもしばらくすると、また「ネタ切れ老人」になる。そして今度は積極的に新しい刺激を求めて、普段あまり話したことのない人と話したり、全く興味のない雑誌を買ったり、今までの自分では、決してとらない行動をするようになります。

 そういう行動の繰り返しに慣れていくことで、この訓練の本当の目的が達成されます。1000本ノックの間に、アイデアをどうやって出すのか、効率よくアイデアを出す方法を少し学べた訳です。

(もっといえば、自己の限界を知ることで人は成長できるということを学んでいるともいえます。)

 どうですか? 面白そうでしょう? ぜひ、皆さんの会社でも実践してみてください。

 そうそう、この1000本ノックを管理する上司の方にもルールがあります。毎週の案の企画は、真剣に考えて相当の時間を割いた訳ですから、しっかり目を通してあげる必要がありますが、そのアイデアそのものに良し悪しの判断やコメントは禁物なのです。初期の企画は脆弱です。ましてや研修で行っているアイデアに、「大人のコメント」は必要ありませんし、その評価・コメントが、その後のアイデア創出に枠をはめてしまうことにもなりかねません。いくら優秀でヒットを多発した上司であろうとも、上司のカラーに染めてはいけません。管理者のコメントは、次のアイデアが出やすくなるような励ましであったり、新しい視点につながる行動のヒントくらいにしておきます。ニコニコと毎日健全に続けられることを支援しましょう。(ちなみに私は、部下の新人が1000本ノックを達成した3か月半後には、毎回自分で作ったその人だけのための「認定証」を贈ることにしています。「よく頑張った。これで君は一人前の開発マンになれたよ」という認定です)

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<著者プロフィール>
山崎進一
昭和57年、明治大学商学部卒業後、江崎グリコ株式会社に入社。「アーモンドクラッシュポッキー」「お土産ジャイアントシリーズ」「タイムスリップグリコ」等のヒット商品を開発。平成
15年、株式会社バンダイに転職。「ガンダムカフェ」の立ち上げ、「ベルばらの本格化粧品」の発売やキャラクター菓子の売上に貢献。令和元年、定年退職し、経営コンサルティング会社【企
画のびっくり箱 Y-BOX】を設立。またプライベートでは趣味のアウトドアの知識を活かして「おもしろ理科クラブ」を主宰。
また「ビートルズ研究家」としても有名。持論は、「仕事は楽しく、遊びは真剣に!」
Y-BOXホームページ https://www.y-box.tokyo

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