自分の考えた商品や事業が世に出て、お金を出して買ってもらえる。商品開発の仕事には多くのやりがいがあると思いますが、せっかく一生懸命考えても、一向に売れない商品やサービスも数限りなくあります。そんな時の企画担当者は、ホントにつらいものです。
お菓子メーカーの「江崎グリコ株式会社」で21年、そして「株式会社バンダイ」で16年、新商品企画及び新規事業開発の仕事に携わってきた山崎進一氏は「商品開発、企画開発」には実はコツみたいなものがあって、そのポイントをうまく押さえられているかどうかが、成功するかしないかに大きく影響してくるのではと、だんだんとシンプルに考えられるようになってきたといいます。
たくさんの商品を世に送り出し、時にはヒットに恵まれ、時には鳴かず飛ばずの苦汁を舐め、またそれぞれの会社の先輩や仲間からとっても多くのことを学んだ山崎氏の著書「開発マンの上司は消費者である!商品開発のツボ30+α」から若いマーケッター、商品企画担当者に伝えたい、企画開発のコツを一部抜粋・再構成してお届けします。
開発マンの上司は消費者である!
商品開発のツボ30+α
山崎進一
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商品開発のツボ(1)「ネタを探してタネにする」
狙うべき分野を明確にするために、まずは市場の探索から始めます。ここでは、市場探索の仕方をまとめてお話しします。
最近では、インターネットの普及により、どこにいても最新の情報を手に入れられるようになり、世間の流行り廃りやトレンドチェックもとても簡単になりました。
また、FacebookやLINE等の出現により、仲間同士の情報共有もリアルタイムで行われています。
皆さんも情報収集の大半は、インターネット経由で得ているのではないでしょうか? しかし、私は情報収集のキホンはやはり、自分の足でかせぐことが最も大切だと思っています。ネタを探して街を歩く! 人だかりに寄っていく! そういった好奇心が大切であり、体感することが極めて重要な意味を持つのです。
以前、バンダイの名物研修で、「ラスベガス研修」というものがありました。エンターテインメントの分野で商品開発をするのであれば、世界一のエンターテインメントを「肌で感じることが大切」ということで、ラスベガスのホテルに宿泊し、朝から「素晴らしいショー」を観て、「遊園地」で思う存分遊んで、夜は夜で高級レストランで、美味しい食事とワインを堪能する! というものでした。私はバンダイに入社して、すぐにこの研修の参加資格を得るために論文を提出し、行かせてもらいましたが、それは本当に素晴らしいものでした。もちろん、ラスベガスが世界一のエンターテインメントの聖地であるということは誰もが知っているところですが、やはり「体感」することの素晴らしさは想像以上でした。現在の私にとって様々な場面でこの体験が活きていることは言うまでもありません。本当に会社に感謝しましたし、その研修をきっかけにして、我ながら殊勝なことに、早く自分の力で会社に対し恩返しがしたいという気持ちが芽ばえたことをハッキリと覚えています。
さて、情報収集に話を戻しますが、開発マンにとって、情報は命です。いかに多くの使える情報を持っているか、ネタの引き出しがどれほどあるかは、その開発マンの深みになります。もちろんネタは多ければ多いほどいいし、それをいつでも引き出せる状態になっているかどうかもポイントです。
私の情報収集法を1つ紹介します。まずメモとペン。これは開発マンであれば、当然常時携帯していると思いますが、とにかく気になることはどんどんメモする。これも皆さん実践していることでしょう。では、この後の整理方法はどうしていますか? メモはどんどんたまっていきますよね。有益な情報と捨てても問題ない情報の見極めをどうするか? 私は「情報はリアル化と熟成」だと思っています。気になることはまず、ふせんを使ってメモにしてリアル化する。絵の上手な人は簡単なイラストやスケッチにするのもいいでしょう。そして、そのふせんメモを手帳に仮貼りします。すると手帳でスケジュールの確認等をする度に、常にそのメモを見ることになります。そうやって、どんどん手帳がメモでいっぱいになっていきます。そして10日間〜2週間ほど「寝かした後」に、一気に見直すのです。
ある程度の時が経って、冷静に見直した時に、「これは重要な情報だ」「これはいずれ使えそう」と思えるものがあったら、その情報だけを本ファイルに整理する。ここで、それほど気にならない、膨らみそうにないメモはどんどん捨てましょう。捨てることが情報をうまく使いこなすコツです。つまりネタをたくさん集めて、タネになりそうなモノだけを、うまく頭に入れておくことが大切です。これで使える情報になります。
今ですと、スマートフォンにデジタルでメモをとる人が多いと思います。こちらも同じ考えですが、スマートフォンにメモした多くのネタ情報を、一定期間経った段階で、上手に取捨選択できれば良いのですが、デジタルの場合、どんどん溜まってもそれほど苦にならないため、どうしても「ほったらかし」になりがちです。ですので私は実際にメモをとりふせんを貼ることでの情報のリアル化をお勧めします。
私が常に意識して情報収集するポイントやコツを、グリコ時代の先輩に教えてもらったものを基に私なりにチェックリストにしてみました。
外出して何か情報を得たい、開発のネタ探しをしたいという時にお役立てください。
市場探索チェックリスト
□商品の売り場を見る(コンビニは毎日)
□最新の映画・演劇・コンサートに行く
□KALDIのような輸入食品ショップに行く
□あらゆる美術館・博物館で芸術に触れる
□都道府県アンテナショップに行く
□YouTubeサーフィンをする
□イベント・各種フェスに行く
□見本市・展示会に行く
□毎日違う道で通勤する
□駅や店頭のサンプル配布は必ずもらう
□話題の美味しいお店に自費で食べに行く
□デパ地下に行って腹いっぱい試食する
□子どもやペット動物と無邪気に遊ぶ
□ディズニーランド・シーで終日遊ぶ
□ベストセラー本は必ず読む
□東急ハンズを隅々まわる
□繁華街・原宿・銀座・渋谷等を昼夜徘徊する
□観光土産店・サービスエリアに必ず寄る
□ディスカウント店・100円ショップに行く
□海外旅行・ホームステイをする
□電車で観察・聞き耳を立てる
□新商品のお菓子・飲料・雑誌を試し買いする
□バーゲンに行って並ぶ
□キャンプ・アウトドアでドロドロに遊ぶ
□駅のポスター・中吊りをチェックする
□ゲームセンターで遊ぶ
□書店で立ち読みをする
□ショッピングセンターは全店まわる
□高級ホテルに毎年宿泊する
□サッカー・野球・相撲・プロレスを生で観る
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<著者プロフィール>
山崎進一
昭和57年、明治大学商学部卒業後、江崎グリコ株式会社に入社。「アーモンドクラッシュポッキー」「お土産ジャイアントシリーズ」「タイムスリップグリコ」等のヒット商品を開発。平成
15年、株式会社バンダイに転職。「ガンダムカフェ」の立ち上げ、「ベルばらの本格化粧品」の発売やキャラクター菓子の売上に貢献。令和元年、定年退職し、経営コンサルティング会社【企
画のびっくり箱 Y-BOX】を設立。またプライベートでは趣味のアウトドアの知識を活かして「おもしろ理科クラブ」を主宰。
また「ビートルズ研究家」としても有名。持論は、「仕事は楽しく、遊びは真剣に!」
Y-BOXホームページ https://www.y-box.tokyo