何と国内シェア90パーセント!
彼らが口を揃えて絶賛するビールの正体は“ビアラオ”。国内で90パーセント以上のシェアを占めています。
製造しているのはラオス・ビア・カンパニー(LBC)。1973年に創業、ドイツの技術を取り入れ、アジア諸国の中でも早い段階で質の高いビールを作ることに成功した会社です。
原材料にはベルギー産のモルト、ドイツ産のホップ、製造方法もEBC (European Brewery Convention)が認定したメソッドに沿っていていずれも本格的。
たがそれだけではフランスやベルギー、ドイツのビールと変わりません。ビアラオはヨーロッパのビール会社が想像もできない原材料をそこに加えています。
それはラオス特産の「米」です。米の中でも香りの良いジャスミン米を加えることでビール特有の苦味が抑えられ甘味が全面にでてきます。
そして、もう1つ大事な原料が水。国土の大半が森林という自然に溢れたラオスならではの地下水をくみ上げてビールに使っています。
この地下水はタイガーヘッドという名前のミネラルウォーターとしても販売しており、こちらもシェア率90パーセント以上を誇っています。
ラオスならではの恵みを活かしたオリジナリティを加えることで、ヨーロッパのビールとはまた一味違う独特の味わいを引き出すことに成功しているのです。
ベルギーで開催されているモンド・セレクションでは2003年から2022年にいたるまで何度も金賞や銀賞を獲得するなど海外でも評価され、現在、世界10か国以上に輸出されています。
ビエンチャンの街中を歩いていると、レストランやバーの多くがビアラオの看板を掲げ、ビアラオを運ぶトラックが通りを頻繁に行きかっているのを目撃します。正にラオスを代表するビールなのです。
その種類は3つあり、スタンダード・タイプの「ラガー」は女性にも飲みやすいさらりとした口あたりが魅力。
「ダーク」のモルトやホップや原材料は先述の「ラガー」と同じですが、ジャスミン米を炒ることでコクがより増しているのが特徴。
「ゴールド」は最高品種のジャスミン米であるカオカイノリを使用、より甘く高い香りが評判の品です。
外国産ビールも市場に参入
一方、ビールに関して新しい現象も起きています。
「最近増加している中流層を中心に、ビアラオ以外の“新しい味”のビールに目が向かう人々が増えていますね。私の店もオープン時は在住欧米人や観光客ばかりでしたが、ここ数年、地元の顧客が増加しています」と言うのはビール大国ベルギーからやって来て、15年ほど前からベルギーなどヨーロッパのビールを供するレストランバーを経営しているフィンセント・ワーゲンさん。
そんな背景から、ハイネケンがラオスにも進出、外国ビールの高級感を打ち出しビアラオの牙城に立ち向かっています。それを迎え撃つラオス・ビア・カンパニーも守るばかりではありません。
同社の株式の50%を持つカールスバーグ社のビールをライセンス生産する戦略を取っています。いわばビール戦国時代といったところでしょうか。
メコン川から吹く風に吹かれながら飲むビアラオが最高なのですが、実は、日本でも簡単に入手できます。
https://lieutou.co.jp/beerlao_campaign/
日本の正規輸入代理店である寮都産業株式会社はラオス人のお父さんと息子さんたちが営むファミリー企業。
日本とラオスのハーフである次男の村松賢志さんを中心に兄弟たちがビアラオの輸入を担当しています。
「ビアラオ通じて日本からラオスに恩返しするという思いから、ビアラオが1本売れることに10円ずつ積み立て、それをラオスの社会貢献のために使っています」
例えば、中古の衣類や自転車などラオスへ寄付したり、洪水など自然災害時に支援金として送っているそうです。
欧米人たちにも人気のラオスのビール、試してみてがいかがでしょうか?
梅本昌男
フリーライター。タイや東南アジア諸国の記事をJAL機内誌などの媒体に書く。単行本『タイとビジネスをするための鉄則55(アルク)』。NHKラジオへの出演や写真ACのモデルの仕事なども行っている。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」会員