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ホームボタンとLightningが消えた「iPad」、使う人を選ぶM2搭載の「iPad Pro」の登場から見えてくるアップルの迷い

2022.11.09

使う人を選ぶiPad Pro(11インチ/第4世代と12.9インチ/第6世代)

法林氏:iPad Pro(11インチ/第4世代と12.9インチ/第6世代)にはどういう利用シーンがあるのか考えると……例えばカメラマンさんが、スポーツの試合で写真を撮って、その写真をiPad Proで確認して、5Gでどんどん画像をアップロードする、みたいな環境だったらiPad Proがハマるかもしれないけど、一般の人が電子書籍を読むのに必要かと。いらないですよね。iPhoneで撮ったビデオをiPad Proで編集するかもしれないけど、それだってMacBookの方がやりやすいでしょう。ハマる人とハマらない人の落差が大きくて、iPad Proはやっぱり完全にプロ用になっている。名前通りのプロ用。

石川氏:ユーザーを選ぶ。あと、複数のアプリ、ウィンドウを重ねて表示できる「ステージマネージャ」の完成度がもうちょっと上がると、この評価も変わるかなと思います。まだちょっと安定性に欠けるというか、個々のアプリで対応できてない感じがするので、それぞれのアプリがちゃんと対応して動くようになって安定的に使えるようになり、なおかつユーザーが操作に慣れてくるといいのかなと。

2022年内に、M1およびM2搭載iPadモデルのステージマネージャは、最大6Kの解像度を備えた外部ディスプレイのフルサポートを実現

石野氏:ただ、ステージマネージャは、思ったよりはちゃんと使えると思いました。思っていたよりはちゃんとマルチウィンドウしてくれるというか。

房野氏:結構サクサク動くんですね。

石野氏:サクサク動くんですが、自動整列になっているので、パソコンみたいにアイコンを好きな場所に置いたりはできません。それでも思ったよりはちゃんとマルチウィンドウしてくれる。なので仕事に集中できなくなりましたね(笑)

法林氏:iPadって元々iPhoneの大画面版として始まってきたんだけど、画面が大きいから、いろんなことをできるようにしたいと進化してきた。画面分割も最初の頃はすごく便利だなと思ったんだけど、それによる弊害もある。Safariでお気に入り画面からサイトを開こうとすると、画面分割が起きやすいじゃないですか。不要なのにと思って消したら、開いていたタブが全部消えてしまう。見ていたサイトを戻そうとすると履歴から開くしかない。それって結構痛いじゃないですか。パソコンだとタブの復元は簡単にできる。Chromebookもそうだけど、使い方がわかりやすいようでいて、失敗しちゃった時に取り返しがつかないというか、結構痛いなと最近思います。だから、タブレットをパソコンに近づけていくのが本当にいいのかどうかは、僕はちょっと疑問です。

石野氏:それがあるから、MシリーズのiPadで簡易的なmacOSを動かす、みたいな噂が出てきているんだろうなと。「MacをそのままiPadで動かせばいいじゃん」みたいな意見が根強くある。

法林氏:タブレットのライトな使い方、手軽に使える大画面のデジタルデバイスみたいなものから、iPad Proはどんどん離れていってしまっている。かといって、普通の無印のiPadでそれができているかというと、どうなのかなぁ。自分は母親にiPadを渡していて、年配の方にとっては結構扱いやすいデバイスだと思うんですよ。ただ、機能を拡張していくと、どんどん扱いづらくなるかな。ホームボタンを押すと元に戻るっていうiPhoneから続くわかりやすさがあったのに、どんどん複雑化していますよね。

石川氏:iPadの製品カテゴリーの中に、ステージマネージャが使えるモデルと使えないモデルがあるっていうこと自体、ちょっとおかしな状況になっている感じがする、オン/オフはできるけど。プロユースを求めていくと、どんどんパソコンに近いUIになっていく。macOSもステージマネージャを使えるようにして、MacもUIを近づけていく方向になってきちゃっているので、なかなか悩ましいなぁと感じます。

 昔、MicrosoftからSurfaceが出てきた頃、アップルの役員のフィル・シラー氏にインタビューしたことがあって、その時、「MacBookはタッチパネルにしないんですか?」と聞いたんです。すると「タッチにすると、押した時に画面も押されちゃうから使いづらい」って回答していたんですけど、デザイナーも変わったりしているので、商品コンセプトが変わってくる可能性はあると思います。

法林氏:アップル製品の本来持っている統一感のある環境というものが、ちょっとずつ失われている感があると思います。石川君が言ったフィル・シラーの話だけど、当時、彼らがSurfaceについてどう言っていたかというと「タブレットだかパソコンだかわからないもの」って非難していたわけでしょ。それなのに今、何を作っているんだよという話。3年前に言ったことをいきなり変えるなよって気がするんですよ。

石川氏:携帯電話って、いろんな機能を積み重ねていって、最後に破綻した。それを、携帯電話への既成概念がない、まっさらな思想のiPhoneが出てきて、切り崩した感じがするんです。でも、だんだんだんだん、アップル製品もいろんなものが積み重なってきちゃっている感じはするかなぁ。

法林氏:プロ用路線はあるべきだと思うんですよ。仕事で動画編集をやっている知り合いが、ちょっと大変な仕事、4Kの映像を3本並べて編集するような仕事を受けたから、60万円もする「Mac Studio」を買うしかなくなったと言っていた。プロからの絶対的なニーズはあるんです。だからあってもいいんだけど、もうちょっと明確にコンシューマのラインと区別して売ってくれればいいんだけど、そうなっていないところを最近、すごく感じる。

Mac StudioとStudio Display

石野氏:今回のiPad Proが、コンシューマにちょっと向いちゃっているところが……

法林氏:向かなくてもいいんじゃないかな。

石野氏:ちょっと欲が出てしまっているところがあるかな。Mac Studioくらい振り切ってくれれば、素人お断りなんだなってわかるんですが、iPad Proは中途半端に素人が買えちゃうのが良くないなっていうところはありますね。

石川氏:アップル製品って、そのスペックが必要ない人も買うじゃないですか。そういう製品ですよね。

法林氏:そうね。彼らはそこで商売をしている。リーズナブルなものをコンシューマのみなさんに使ってもらうという思想がそこにはないんだけど、ユーザー側がちゃんと理解できてないところがある。グーグルはグーグルのサービスをどう使ってもらうかが商売なので、だからPixelはあの値段になっている。この差は結構大きいんですが、意外に理解されていないところが、僕は残念な気がしました。

……続く!

次回は、グーグルの「Pixel Watch」について会議する予定です。ご期待ください。

法林岳之(ほうりん・ たかゆき)
Web媒体や雑誌などを中心に、スマートフォンや携帯電話、パソコンなど、デジタル関連製品のレビュー記事、ビギナー向けの解説記事などを執筆。解説書などの著書も多数。携帯業界のご意見番。

石川 温(いしかわ・つつむ)
日経ホーム出版社(現日経BP社)に入社後、2003年に独立。国内キャリアやメーカーだけでなく、グーグルやアップルなども取材。NHK Eテレ「趣味どきっ! はじめてのスマホ」で講師役で出演。メルマガ「スマホで業界新聞(月額540円)」を発行中。

石野純也(いしの・じゅんや)
慶應義塾大学卒業後、宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で活躍。『ケータイチルドレン』(ソフトバンク新書)、『1時間でわかるらくらくホン』(毎日新聞社)など著書多数。

房野麻子(ふさの・あさこ)
出版社にて携帯電話雑誌の編集に携わった後、2002年からフリーランスライターとして独立。携帯業界で数少ない女性ライターとして、女性目線のモバイル端末紹介を中心に、雑誌やWeb媒体で執筆活動を行う。

構成/中馬幹弘
文/房野麻子

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