■連載/ゴン川野のPC Audio Lab
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いよいよ1000万円超えのスピーカーが姿を見せた
ユニットをタテに並べるラインソースの理想形を目指して製品化されたスイス生まれPIEGAのハイエンドモデルは3630万円のMaster Line Sourceなのだが、今回、鳴っていたのは新製品のCoax 611、ペア312万4000円である。同社独自の同軸リボンユニットに16cmウーハーを2本、パッシブラジエータ3本の計5本が低音を支えて、透明感のある高音がどこまでも広がっていった。
新開発された同軸リボンユニットC212+が搭載されたCoax 611
アイレックスブースに置かれたのは、Alare Remiga2である。2021年イタリアにてAUDIAが立ち上げたブランドで、楽器のように美しいデザインのトランスミッションラインのスピーカーだ。最初の製品がハイエンドモデルで重さ120kg、3Way4スピーカーで価格は1298万円。
Alare Remiga2を鳴らすシステムは、AUDIAのハイエンド製品で合計1000万円超えだ
EVO 3は、フランスのAudio Necが提案する連結式のユニット構成システムのスピーカーで、購入後のアップグレードに対応。EVO1から4までユニットを追加することでシステムを進化できる。今回、日本初上陸である。センターにあるダイポールドライバーDuoPole DS.31が特徴。400Hz~20kHzをカバーするという。振動板は天然紙をベースに特殊加工が施される。EVO 1は418万円、デモされていたEVO 3 PW WHは1485万円となる。高さ190cm近いバーチカルツインはすごい迫力だが、その音は極めて正統派、スケール感のある広々とした音場を描き出してくれた。
ダイポール特性を持つDuoPole DS.31はミッドレンジとツイーターを兼ねる
太陽インターナショナルのブースは、その名前とは裏腹にいつも黄昏時のように柔らかい光に包まれている。その中で、ひときは大きな存在がAVALON ISIS SIGNATUREである。エンクロージャーの響きを徹底的に抑え、反射の影響も最小限に抑えるためのデザインを追求した先駆者であり、その追求は今日も続けられている。静寂の中から浮かび上がる鮮明な音像がそこにあった。
AVALON ISIS SIGNATUREの価格は1837万円
ハイエンドDACメーカー、dCSのヘッドホン再生システムは合計558万8000円
スウェーデンのMARTENが20年の歳月を重ねて完成したハイエンドモデルがMINGUS ORCHESTRAである。価格は3190万円でツイーターにピュアダイヤモンド振動板を採用、ミッドレンジはセラミックコーンで、ウーハーはアルミハニカムのサンドイッチ構造になっている。4Way7スピーカーを高さ171cm、重さ130kgのエンクロージャーに収めた。低域はハイスピードでレスポンスがいいがかなり下まで伸びている。高域は爽やかな風のように抜けていく。
高級家具のようなピアノフィニッシュのエンクロージャーにハード系の振動板が並ぶ
ハイエンドに欠かせないのがステラブース。時間がない人は最初にここを見れば、その価格に肝を冷やすに違いない。デモに使われていたスピーカーはWILSON AUDIOのALEXX Vで3190万円。その手前にあるのが、VIVID AudioのG1 Giya Spilitで1320万円が再生されていた。今回は時間が合わなかったので聴けなかったが、見るだけでも充分、興味深いスピーカーである。
手前が VIVID Audio G1 Giya Spilit、奥がWILSON AUDIO ALEXX V
MAGICOで検証、AGSの実力を体感
エレクトリのブースに相乗していたのが、日本音響エンジアリングである。作っているのはAGSと呼ばれる木製のルームチューニング材で、ANKH(アンク)の名前で知られている。AGSは以前、ライブスペース「K-stanza」の検証記事で効果を実感、オーナーが導入した実績がある。
今回のデモはMAGICOのM2でおこなわれた。MAGICOもアルミ合金製の響きを抑えたエンクロージャーからスタートして、現在のM2はカーボンモノコックエンクロージャーを採用して、内部の定在波、回折、共振などを排除して高解像度な音を追求している。デザインは大人しめだが、価格は1287万円とハイエンド、YG Acousticsと並んで、箱の響きを抑えた最先端スピーカーである。
一見、普通のトールボーイスピーカーに見えるが、最先端の音を再生するMAGICO M2
スピーカーの後ろの壁には 6枚のANKHが置かれている。ここに布カバーを掛けた状態でM2を試聴する。MAGICOらしい音像定位のクッキリした音で、響きは抑えられた感じだ。左右の広がり感はあるが、奥行き感があまり出ない。カバーを外してANKHの数を2枚、4枚と増やしていくと、響きが豊かになり、高域まで気持ちよく伸びるワイドレンジ感が出る。さらに音数も増えて空間に奥行が出て3次元的になる。スピーカーから壁までの距離はかなり離れていたので、そんなに違わないだろうと思っていたが、恐るべしANKH。これなら、ANKH導入後、どんどん増やしたくなる気持ちが分かる。スピーカーの価格から考えれば、ハイコスパで音が良くなるのだ。私もアクセサリーを検討するなら、スピーカーケーブルを交換する前にコーナーANKHを導入したいと思った。
6枚のANKHにカバーが掛けられた状態で試聴しても充分にいい音だった
中心部の2枚のカバーを外すと、ボーカルにフォーカスが合い、低音の量感もアップ
写真・文/ゴン川野