PTAを代行するとは何なのか?
今年8月に大手旅行会社である近畿日本ツーリストが開始した「PTA業務アウトソーシングサービス」、いわゆるPTA代行サービスに注目が集まっている。賛否両論あるみたいだが、どうやら現役の小・中学生の保護者たちからはおおむね賛成、好意的な反応が多いように見える。子どものためとはいえ、役職の強制や無償労働が当たり前のように強いられている現状に不満を抱いている保護者も多かったのだろう。
こうした背景から今注目のサービスであることは間違いないのだが、いまPTA代行という言葉が少々、独り歩きしているきらいがある。何もこのサービスは私たちの代わりに近畿日本ツーリストがPTA役員になってくれるわけでもなければ、業務のすべてを丸投げできるというものでもない。
近畿日本ツーリストの担当者はこのサービスについて、次のように話す。(以下、カッコ内はすべて同様)
「これまでの業務の中で学校や家庭を取り巻く環境の変化を実感し、旅行以外でも学校や保護者の負担を軽減する役に立てるのではないかと思い、このサービスを思い立ちました。サービスを開始する上で社内のPTA経験者にアンケート調査を行い、ニーズが多く社内で取り組みやすいものをサービスとして取り入れております」
つまり、この代行サービスは近畿日本ツーリストが旅行会社としてこれまで培ってきたノウハウを生かすことのジャンルに絞られるというわけだ。これからサービスの利用を考えている保護者や、新規ビジネスの事例に興味がある方ぜひ参考にしてほしい。
一番人気は「人材派遣」と「イベント関連」
近畿日本ツーリストホームページより
近畿日本ツーリストのPTA業務アウトソーシングサービスでは次の5つのサービスを提供している。
①広報誌などの印刷やデザイン、封入作業などを行う「印刷・デザイン」
②PTA専用ページの開設などの「WEBサイト作成」
③行事の受付のお手伝いや事務作業などの「人材派遣」
④学校行事やPTA主催イベントの企画運営、ライブ配信などの「イベント関連」
⑤講演会や特別授業を実施する「出張授業・学習支援」
特にPTA広報誌やWEBサイトの作成には「パソコンに強い人」が駆り出されることが多く、特定の保護者にだけ負担が集中したり、反対に候補者が見つからず業務遂行に支障をきたしているケースも多いと聞く。こうした問題点をプロがそのまま引き受けてくれるというわけだ。
「例えば近畿日本ツーリストにはこれまで旅行業務において、添乗員、事務スタッフ、通訳スタッフ、イベントスタッフなどの派遣する業務を担う部署、グループ会社がございました。ここがPTA業務アウトソーシングサービスにおいても『人材派遣』のサービスを担当します」
他4つのサービスも同様に、ノウハウを持った近畿日本ツーリストの部署もしくはグループ会社が直接担当することになるという。また、基本的に年度単位ではなく案件ごとの都度での委託になるという。実際のPTAの現場ではどのサービスの需要が多いのだろうか。
「現在(2022年10月時点)の問合せ件数は60件ほど。サービス全体への問い合わせが多いですが、分野別では『人材派遣』や『イベント関連』が多いですね」
しかし、近畿日本ツーリストとしても実際にサービスを開始して以降、当初を考えていた以上の問い合わせもあると言う。
「保護者の方や先生方からお話を伺っていると地域によって課題や求められているものが様々であると感じており、我々が全く想定していなかった業務の依頼もありますし、PTAだけでなく自治会や管理組合などでも委託できないかといったお問合せもあります。
いずれにせよ、必ずしも保護者の方や先生方が担わなくてもいい業務や、委託することで時間の短縮に繋がるものをお任せ頂き、そこで出来た時間を保護者や先生方でないと出来ない業務や子供たちのために有効活用して頂きたいと考えています」
ビジネスと同じで、PTAも昔に比べて一人ひとりが担うタスクは多くなってきている。自分たちでやるべきことに限られたリソースを全て投入し、外部に任せられることは委託する――。ビジネスでは当たり前のことをPTAでもできるというわけだ。
取材・文/峯 亮佑