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〝去るもの追わず〟は昔の話?ここに来て「ブーメラン社員」が増えている理由

2022.10.30

アメリカで大量の自主退職が発生すると予言したことで有名な、テキサスA&M大学アンソニー・クロッツ准教授は、退職者が元の職場に戻る「ブーメラン社員」が増加するだろうと予測しました。

求人SNSのLinkedInにおいて、2022年1月-3月のアメリカでのブーメラン社員の採用割合は4.2%。2019年は3.3%でした。新型コロナウイルス感染拡大という未曽有の出来事によって短期間で大量の失業者を出したことも背景にありますが、企業側は他社の労働条件が決して良いものではないことをアピールしているといいます。

日本は企業規模を問わず、去るもの追わずのスタイルが根付いていました。その変革期を迎えています。

6割が転職を後悔しているという現実

ブーメラン社員が多く生まれる理由を2つの側面から検証します。転職者と企業の視点です。まずは転職者の視点から見てみます。

総務省統計局によると、2019年の転職者数は351万人。転職者数は2006年から2007年にかけてピークを迎えますが、リーマンショックが発生して急減します。2010年から底打ち反転して緩やかに増加しました。

■転職者数の推移

総務省統計局「労働力調査」より

転職する理由で最も多いのが「より良い条件の仕事を探すため」というもの。全体の4割ほどを占めています。

■転職理由

総務省統計局「労働力調査」より

ポイントは「もっといい職場で働きたい」と考えて転職する人が増加していること。いざ、転職をしてみると、後悔しているケースが散見されるのです。

組織コンサルティングを行う識学は、転職による幸福度を調査しています。

過去3年以内に転職をした経験がある20~50代の男女1,000人にアンケートを行ったもの。その中で、「転職先の企業に⼊社してから「後悔・失敗した」と 思ったことはありますか。」との質問に対して、「ある」と「少しある」と回答した人は全体の59.7%。実に6割の人が転職したことを後悔しているのです。

■Q.転職先の企業に⼊社してから「後悔・失敗した」と 思ったことはありますか。

識学「転職による幸福度の実態を調査」より

また、転職後の勤務先の企業に対して不満があるかどうかへの回答は、「ある」と「少しある」との回答が78.5%を占めています。8割の人が不満を抱えながら転職後の仕事をしていることになります。

■Q.転職後、勤務先の企業に対して「不満」を感じたことはありますか。

識学「転職による幸福度の実態を調査」より

転職後は、待遇や評価に対する不満、上司・組織風土が肌に合わないなどの声が聞こえきます。

転職は新たな職場で人生の再スタートを切る特別なものですが、必ずしも華々しい結果になるとは限りません。「元の職場の方が良かった…」という人が少なくないのは、データが如実に物語っています。

7割以上が出戻り社員を雇用

企業が退職者を再雇用する動きはずっと前から活発化していました。エン・ジャパンは2015年1月に「出戻り社員」についての調査結果を発表しています。

出戻り社員の受け入れをしたことがあるとの回答は、72%にも上っています。

■Q. 一度退職した社員を再雇用したことがありますか?

エン・ジャパン「出戻り社員(再雇用)実態調査」

再雇用する理由として、即戦力を求めていたことや人となりが既にわかっていること、採用・教育コストを抑えたかったなどの理由が挙がっています。

かつて多くの企業では年功序列が普通でした。その場合、一度出て行った人は異質な人となり、人事評価面で扱いづらくなります。出戻りをする人も、同期入社の社員が上司となっていれば、居心地が悪いと感じることもあるでしょう。

企業は評価制度を改め、転職者の意識も変わりつつあります。

江崎グリコは勤続年数3年以上、自己都合で退職した人限定のカムバック採用制度を設け、すでに10年以上継続しています。食品メーカーのやまみも、出戻り制度を設け、役員やライン長などのマネジメント職に就いた例があります。

日本においては、企業の評価制度の変化が起こり、多様な働き方を認める意識が高まりました。そこに人材不足という深刻な問題が浮かび上がります。更に、転職者は転職したことを後悔する人が少なくありませんでした。

必然的にブーメラン社員が目立つようになったのでしょう。

歓迎すべきブーメラン社員

コロナ禍をきっかけとして、ブーメラン社員は更なる増加を続けるかもしれません。社員が仕事をすることにおいて成長を重視する一方で、企業では働き方改革が進んで、成長機会を提供できなくなっているためです。

リクルート就職みらい研究所の「就職白書2022」によると、新卒者において「どこの会社に行ってもある程度通用するような汎用的な能力が身につく」ことを重視する人は、2017年卒は64.7%でしたが2022年卒は72.7%でした。若者は仕事を成長機会ととらえるようになっています。

その一方で、企業はホワイト化が進みました。働き方改革関連法、パワハラ防止対策法などにより、残業時間が減って有給休暇は取りやすくなり、叱らない上司が増えました。更にリモートワークの推進により、若手社員は人との接触機会を失いました。

成長機会を軸としたギャップが生まれると、転職の機運が高まります。大企業で働いていた人は成長著しいベンチャー企業で成長機会を得ようとするでしょう。

しかし、人事評価制度や業務範囲が決まっていないベンチャー企業は、仕事ができる人やモチベーションの高い人に仕事が回ってくる一方で、低年収であることが普通。そのギャップに後悔し、元の会社に戻ろうという意識が働いても不思議ではありません。

企業側の受け入れ態勢はできており、元の職場に戻ることの心理的なハードルは下がります。

ブーメラン社員は、外部の会社で経験を積んだことで視界が広がり、元の会社を客観的に眺めることができます。戻ることに対して恩義を感じることから愛社精神も強い。ブーメラン社員は歓迎すべき存在になるのかもしれません。

取材・文/不破 聡

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