永遠のライバル企業 コカ・コーラvsペプシコを徹底比較
米国企業のなかには宿命的なライバル企業同士の関係があります。
その代表例のひとつがコカ・コーラとペプシ(社名はペプシコ)です。どちらもグローバルに成功している飲料メーカーであり、世界中に熱狂的なファンがいます。
両社の間でたびたび論争となるのが、どちらが美味かという話題でしょう。
これを題材にした映画「COLA WARS/コカ・コーラ vs ペプシ」では、炭酸飲料業界のシェア争いについて詳細が描かれていますが、マーケティング戦略や株式投資におけるバリュー株への投資を検討する上でも両社の関係は学ぶことがたくさんあります。
今回はそれぞれの歴史やビジネスモデルについて要点を確認しながら、徹底比較していきます。
コカ・コーラとペプシコの歴史
コカ・コーラの創業は1886年、薬剤師のバートン博士がワイン以外の割り物を模索した結果、本来コーラの原液を水で割るはずが誤って炭酸水を入れたことで生まれた偶然の産物によるものだといいます。しかしこの発見こそ、現在でも世界中で愛される炭酸飲料コカ・コーラが最初に誕生した歴史的な瞬間でもあったのです。
その後、コカ・コーラの永遠のライバルであるペプシを提供するペプシコが誕生したのは、コーラが誕生した10年以上先の1894年頃です。
またペプシは1959年にソビエト政府と最初に販売契約を結んだ最初の米国製品でもあります。
後述するコーラ戦争を含めて両社は1世紀以上にわたり、シェアを拡大するためのさまざまな広告・販売戦略を展開し続けているのです。
コーラ戦争
コーラ戦争が勃発したのは1975年、それまでコカ・コーラが独占していた炭酸飲料業界の流れを大きく変える出来事が起こります。それが「ペプシ・チャレンジ」と呼ばれるキャンペーンです。
ブランドロゴを隠した状態で行われたコカ・コーラとの飲み比べを比較した結果、消費者から支持されたのはペプシコーラだったのです。
後の事実として、この広告戦略は比較テストをスタートしたテキサス州において、当時ペプシはコカ・コーラ、ドクターペッパーに次いで3番目のシェアに過ぎず、大胆な比較広告を打ち出すリスクがなかったことを当時のペプシコ広報担当者が語っています。
つまりペプシを意図的に業界2位の地位を盤石にすることで、コカ・コーラ以外の炭酸飲料メーカーの追随を許さない効果も狙っていたともいえるでしょう。
特にペプシはCMで世界的ミュージシャンであるマイケル・ジャクソンのCM起用に成功するなど、それまで前例のなかった斬新なアイデアで広告展開することに成功し、独自のミュージック・キャンペーン”Pepsi, The Choice of a New Generation”を展開していきます。
その一方、ライバルのコカ・コーラは1985年にそれまで一貫して守ってきた調合レシピを変更する判断をしました。このコカ・コーラの選択は消費者から不評であったため、すぐに元のレシピへと戻すことになったものの、コーラ戦争が王者コカ・コーラの焦りを生み出し、全米を巻き込む社会的な現象になったことを感じられるエピソードではないでしょうか。
こうしたコカ・コーラとペプシの構図は、広告戦略やマーケティングなどのサンプルとして、今日でもたびたび研究対象になっているのです。
それぞれのビジネスモデルを比較する
コカ・コーラとペプシコのビジネスモデルは同じような構造です。
実はどちらも製造から販売までを担っているわけではなく「コーラの原液」を販売している会社であり、シロップのレシピは企業秘密です。その原液を世界各地のフランチャイズ契約を結んだボトラー会社が仕入れた後で容器に入れて製品にしており、そこから流通チャンネルに配送することで私たち消費者の手に渡っているのです。
つまりボトラーの販売量に応じて一定の金額が米国の本社に還元される仕組みで成立しています。また原液となる「秘密のレシピ」によって参入障壁が高いことも大きな魅力です。
それに加えて原液は極めて安価だといわれており、これが高い粗利益率へと繋がっています。
投資対象としての魅力
コカ・コーラ(KO)とペプシコ(PEP)は米国企業のなかで連続増配配当銘柄としても有名です。
現時点でコカ・コーラの連続増配は60年、ペプシコの連続増配は50年と半世紀以上も増配を続けてきた圧倒的な実績があります。
どちらも長期にわたる安定した経営をしていることが配当という実績からも見えてくるのです。
また世界人口は今後も伸びていくので、両社ともに売上を伸ばす余地が残されており、ハイテク企業のように爆発的な成長はなくとも、緩やかで安定した成長が長期で見込めることも大きな魅力です。
バフェット銘柄のコカ・コーラ
世界一の投資家といわれるウォーレン・バフェットは、古くからコカ・コーラの大株主であることで有名ですが、コカ・コーラは長期で保有するからこそ魅力が増していく銘柄です。
実際、こんなデータがあります。仮に1977年5月に100万円分のコカ・コーラ株を購入して2021年10月まで保有し続けた場合、投資金額の100万円は7800万円まで増加したことになります。
もちろん、これだけの長期間ひとつの銘柄を保有し続けることは難しいかもしれませんが、コカ・コーラのような優良な連続増配株の魅力を感じるエピソードではないでしょうか。
またコカ・コーラもペプシコもバリュー株であり、保有している投資家の多くが配当目的であるため、マーケットが下落しているときに買い増しする傾向があります。
それはつまり株価のボラティリティが小さいことを意味しており、資産運用の観点からもポートフォリオに組み入れることを検討する投資家が多い人気銘柄といえるでしょう。
おわりに
コカ・コーラとペプシコの特筆すべき点は、高いブランド力と価格決定力に加えて比較的少ない設備投資で新商品を開発できることが挙げられます。
「コカ・コーラを飲んだ幸福感は健康上の利益に勝る」とバフェットは語っていますが、多くの人に幸せを届けられる飲料がいかに素晴らしい事業であるのか、その価値を実感する言葉ではないでしょうか。それはペプシにも同じことがいえるはずです。
今回は永遠のライバル企業であるコカ・コーラとペプシコについて解説させていただきました。
文/鈴木林太郎
編集/inox.