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日米の住環境を見据えて新たなビジネストレンドを発掘するために必要なもの

2021.01.28

2020年4月に発足した一般社団法人LIVING TECH協会。「人々の暮らしを、テクノロジーで豊かにする。」の実現を目指して住宅関連事業者やメーカー、流通・小売りに携わる企業が集い、まずは、ユーザーに心地良いスマートホームを段階的に進めていこうとしています。

2020年10月29日にはカンファレンス「LIVING TECH Conference 2020」を開催。全13セッションの中から、セッション11を3回にわたって紹介します。

登壇者は、左より金坂直哉さん(株式会社マネーフォワード 取締役執行役員 CFO マネーフォワードシンカ株式会社 代表取締役社長 マネーフォワードベンチャーパートナーズ株式会社 代表取締役)、小川智也さん(株式会社アカツキ Head of Global Game Expansion)、山下智弘さん(リノベる株式会社 代表取締役 / LIVING TECH協会 代表理事)、古屋美佐子さん(アマゾンジャパン合同会社 Amazonデバイス事業本部 オフライン営業本部 営業本部長 / LIVING TECH協会 代表理事)、リモート出演:本間毅さん(HOMMA, Inc Founder & CEO)

※Session 11 中編※日本とUSにおけるスマートホームの違いと、VC観点から見る今後のLIVING TECH領域の可能性について

【前編】日本とアメリカでスマートホームの違いを考察。「HOMMA ONE」がアメリカで展開しているニューノーマルな家屋とは?

 日本とアメリカ、リノベーションの根本的相違

金坂(モデレーター):ご視聴者からの質問をいただいております。「なぜ本間さんはこのアプローチをアメリカ発でされていらっしゃるのか? 日本で今後の展開は? また、アメリカでリノベーションの会社がまだなかなかない話がありましたが、それはなぜか? 」というご質問です。ご回答いただけますでしょうか?

本間:「なぜアメリカでこの事業をやっているか」については、私がアメリカに12年ぐらい住んでいて、アメリカの家があまりにもひどいのと新築のレベルが極めて低いというのが理由です。新築のうち建売住宅が8割ですが、建売業者はテクノロジーを分かっていないので全く進化していないのです。アナログなままの住宅を変えたいというところからアメリカでスタートしたという側面がひとつです。

それからシリコンバレーは、ソフトウェアの開発は世界で1番高いところなので、我々のユーザインターフェース、UX(※1)の考え方もそうですが、人材の質と作れるソフトウェアのレベル感も含めてシリコンバレー発でやりたいと思ったことです。

※1 UX(ユーザーエクスペリエンス):人工物の利用を通じてユーザーが得る経験

2つ目の「日本での今後の展開」は、我々が作っているハードウェアとソフトウェアの中で、スマートホームのOS的な動きをしている部分を、アメリカでも日本でも他のビルダーさん、他のプロジェクトをやっている方々にライセンスをしていきたいと考えています。そうすれば我々が作る軒数が100軒に留まっていてもいろいろな方にお役に立つかなと思っています。

最後の「アメリカでリノベるさんのようなリノベーション会社がない」のは、システマティックにいろいろなことを高いレベルでやれる会社がない、というのが答えです。零細業者で個人事業主がいっぱいいて、それぞれ能力に凄い差があります。テクノロジーに強い人、デザインに強い人とか。

スクラップ&ビルドを繰り返す日本

山下:アメリカでは中古住宅が流通の7割、8割を占めていて、新築の方がマイナーです。そこを本間さんが攻めているのは非常に面白いですね。

中古は7割ですが、日本のように間取りを変更するリノベーションは多くないです。生活様式もあまり変わっていないのです。

日本はどんどん生活の形が変わってきていて、昔はひとつの部屋に布団を敷いて、布団を上げてちゃぶ台を出してご飯を食べていたわけですけど、寝室は寝室、リビングやダイニングは他に設けるといったように欧米の住宅寄りに変化してきたように、大きく間取りが変わる文化は世界的に見ても多くないのです。だから表面だけを変えることで十分事足りてきたアメリカとは違って、日本は生活様式ごと変更するリノベーションが必要になっているということです。

金坂:山下さんにも少しスライドをご用意していただいています。このスライドは日本が新築にフォーカスしているかと思いますが、現状はどうなのでしょう?

山下 :「失われた500兆円問題」というものがあります。これまで住宅に投資してきた累計の金額と今ある住宅の資産額が、日本は500兆円差がある。どこかに消えてなくなってしまったのです。アメリカだけでなくて先進諸国ほとんどそうですが、日本と違って今ある住宅の資産価値が上回っているのです。それはスクラップ&ビルドを繰り返してきた日本と、うまく古いものを使い続けていっている他の欧米諸国の差です。

僕たちはワンストップのリノベーションサービスで、お客様が自分ではできない、しにくい痒いところ、面倒くさいところを私たちがフォローします。しかもテクノロジーを活用しながら情報共有や業務の効率化などをやっていきます。本間さんはアメリカで新築を、僕達は日本で中古にコミットしてやるという立ち位置です。

NTT都市開発様との資本提携を機に、ビル一棟丸ごとのプロジェクトなども最近は増えてきています。

切り売りだけじゃない新たなビジネストレンド

金坂:続いてこのセッションのもうひとつのテーマである投資家目線というところで、小川さんに日米のコンシューマーサービスのトレンドに関して伺います。

小川:ひとつ大きなトレンドとしてあるのが「コンテンツ・商品からサービス」へのシフトです。

皆さんも個別のサービスで感じられると思いますが、今まで映画を見てましたっていうものがNetflixさんやAmazon Primeさんとサブスクリプション型のビデオオンデマンドのような形で、どちらかというとサービスとして映画を見るような体験になっているとか。

我々のゲームも基本的には無料で、その中でお金を払いたいユーザーだけがお金を払うFree-to-playという形になっていて、特にエンターテイメントの世界だとコンテンツや商品そのものから、サービスに対してお金を払うようなことが起きています。こういったトレンドが、エンターテインメント以外でも今どんどん起きていると思っています。

※2 Free-to-play:コンテンツの重要な部分へのアクセスを無料でプレイヤーに提供するコンピュータゲーム

例えば「ペロトン」というアメリカのサービス。エアロバイクを売っていますが、モニターで同じ利用者が同時に参加して、その中にインストラクターの人がライブでトレーニングをして、みんなオンラインで一緒にバイクのフィットネスプログラムを受けます。それに対して、月額30ドルとかを機材を買うのにプラスして定額でお金を払っていくのです。

あるいは「ミラー」という、鏡にインストラクターが映って、マンツーマン的にフィットネスを教えてくれるものも、ハードウェア(鏡)にお金を払った上に毎月定額でお金を払っていく形が出てきていて、エンターテインメントのど真ん中のものだけでなくて、ライフスタイルや生活習慣に対するサービスでのビジネスが大きくなっているのを感じています。

実際そういう所の方が、今は世の中的にも大きなビジネスチャンスがあるというふうに感じており、Netflixさんの時価総額があのディズニーさんを抜いたりみたいなところもあり、やはり資本市場としてもそういったものに対するビジネスチャンスというものを大きく感じているのかと捉えています。

それはコンシューマーだけでなくて、これからいろいろなビジネスにおいて、新しいビジネスを考えるときに、どうやったらビジネスを切り売りだけでなくて、サービスの形で設計できるのかという視点はすごく重要になってくるかなと思っています。

便利の先にある、圧倒的感動を生み出すには?

金坂:普通の感動だと、思う人の心が動かなかったり、どう圧倒的な感動を生むかのようなレベルまでサービスが求められている気がしています。『まごチャンネル』(※3)というサービスがありまして、僕が撮った子供の写真を両親や90歳の祖母がテレビで操作して見られます。するとあり得ないぐらい感動してくれます。

※3 『まごチャンネル』:動画や写真をスマホから実家のテレビへ送れるサービス。Wi-Fi不要

彼らの世代からすると子供の動画をテレビで見られることが簡単なことではなかったので、技術的にはとても難しい事ではないかもしれませんが、うまく組み合わせてユーザー体験としての圧倒的感動をITリテラシーが高くない層のユーザーに届けるものがもっと出てきてもいいのではないかと思っています。

小川:スマホやタブレットでやれなくはないけれども、置いて押せば見えるパッケージが価値になるのはすごく大事だと思いました。

金坂:50代以上の方でスマホを使いこなせない方は、まだまだ多いと思います。

山下:今日いろいろなセッションを聞いていましたが、面白かったのがオープニングセッションとセッション7の2つ、今まであまり考えてなかった感情が出てきたのですが、今のような話は便利になればいろいろな人が使ってもらえるだろう、どうやれば便利にできるのか、ユーザ目線を常に考えているわけです。

オープニングセッションであった「暮らしかた冒険家」の伊藤さんという方がいるのですが、例えば育児の時に見守りカメラを使えば便利で、自分が他所にいても、子供が遠隔で見えれば便利だよねという話だったのですが、こんなことをSNSにあげたらとんでもない批判がくると。「何やってんのお前は!そこは手抜きしちゃダメでしょ」と。だからSNSに書けない。子供のいる家庭ではそういう見方もあるのか……という話であったり。

セッション7のケロッピー前田さんという、身体改造ジャーナリストの方は、ご自身の身体にマイクロチップや磁石を埋める一方で、ヒューマンポテンシャルラボの山下さんは、デジタルを捨てて「自分とは何か?」と向き合うためにテクノロジーを活用する、というようなセッションだったのですが、「便利って何?」とか、「テクノロジーで便利になること」と、「自分も幸せなること」が必ずしもイコールではないのだろうなと思いました。

以前、本間さんの拠点のアメリカに伺った際に、本間さんがキッチンで肉を低温調理したものをふるまってくださいました。

本間:アノーバを使って48時間、肉を低温調理したものですね。

山下:その場で作ってくださって、家中がIoTで繋がっていて、それ自体がプレゼンテーションでした。

確かに、仕事でとてもお忙しいのに、そういうことも仕込んでもらって恐縮だなと思っていたのですが、「実はテクノロジーのおかげで簡単にできるんです」と聞くと、これは確かに便利だろうなって思えるのですけど、その便利とかその先に幸せみたいなのがあるかどうかが、必ずしもエコじゃないのかもな、と感じたりしました。

金坂:古屋さん、今日、一連のセッションを聞かれていかがですか?

古屋:「人間て何?」 とか「何が幸せ?」といったテーマについて考えましたね。やはり便利になることで時間の余裕ができたり、今までできなかったような体験、例えばリビングルームでお仕事している人が夜はオレンジ系の色にしたいんだけど、昼間は仕事するから白いのがいいよね、とか。今までは白とオレンジと両方ないとできなかったことがひとつの電球でできるようになる。そういうようなことをすることで生活が豊かになるっていうのは、やはり幸せにつながるんじゃないかなという再発見がありました。

金坂:有り難うございます。小川さん、コンシューマートレンドの続きをお願いします。

後編へ続く。

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取材・文/堀田成敏(nh+)

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