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米国の新しい家屋にみる日本とアメリカの「スマートホーム」の解釈の違い

2021.01.26

2020年4月に発足した一般社団法人LIVING TECH協会。「人々の暮らしを、テクノロジーで豊かにする。」の実現を目指して住宅関連事業者やメーカー、流通・小売りに携わる企業が集い、まずは、ユーザーに心地良いスマートホームを段階的に進めていこうとしています。

2020年10月29日にはカンファレンス「LIVING TECH Conference 2020」を開催。全13セッションの中から、セッション11を3回にわたって紹介します。

左から、古屋美佐子さん(アマゾンジャパン合同会社 Amazonデバイス事業本部 オフライン営業本部 営業本部長 / LIVING TECH協会 代表理事)、金坂直哉さん(株式会社マネーフォワード 取締役執行役員 CFO マネーフォワードシンカ株式会社 代表取締役社長 マネーフォワードベンチャーパートナーズ株式会社 代表取締役)、本間毅さん/リモート出演(HOMMA, Inc Founder & CEO)、小川智也さん(株式会社アカツキ Head of Global Game Expansion)、山下智弘さん(リノベる株式会社 代表取締役 / LIVING TECH協会 代表理事)


※Session 11 前半※日本とUSにおけるスマートホームの違いと、VC観点から見る今後のLIVING TECH領域の可能性について

 今のアメリカにニューノーマルを占うチャンスがある

金坂(モデレーター):ファイナルセッションに入ります。早速ですが、本間さんからは「アメリカの住宅市場の今とニューノーマル」というテーマでお話していただきながら、皆様と議論を進めたいと思います。本間さん改めましてよろしくお願いします。

本間:よろしくお願いします。米国市場のひとつの特徴は、新型コロナであまり影響を受けていないことです。アメリカは日本に比べると1日万単位で陽性者数が増えていて、かなり深刻でまだ社会生活が再開していません。(202010月現在)

社会生活が止まったことに対してどうなるかと思いましたが、みんなが家で過ごすことになったので住宅は実はとても大事で、何かしらの手入れが必要ということで、今アメリカではホームセンターやIKEAに人が溢れています。合わせて住宅市場も悪い影響は受けていません。そこに今からのニューノーマルを占うチャンスがあると考えています。

我々の作ったHOMMA ONE(※1)にはいくつか特徴があります。ひとつはアメリカには少ないモダンなデザインで作ったこと。2つ目は、その中に日本の企業の方々にいろいろな形でご協力いただいて、建材や素材、プロダクトなどいろいろな形で入っていただきました。

1 HOMMA ONE(ホンマ ワン):独自のスマートホーム技術により未来のライフスタイルを実現するプロトタイプ住宅

もちろん新型コロナの前に考えて作ったものですが、1番右上、マスターベッドルーム(主寝室)に作り付けで机が作ってあります。ベッドルームは1番プライバシーが守られる場所なので、ここでビデオ会議に入れるように机を作りました。

その下に玄関のドア写っていますけど、玄関のドアに横にもう一枚ドアが付いていて、ゲストルームに直接出入りでき、ドアを閉めてしまえば独立して使えます。ここにスマートロックを付けて、ゲストの人と一切顔を合わせることなくスAirbnbに貸しましょうと。

2 Airbnb(エアビーアンドビー):宿泊施設・民宿を貸し出す人向けのウェブサイト

一番左上、キッチンとリビングとダイニングがひとつの大きな空間に作ってあり、場所も広くて家族も開放的に集える作りにしていながら、その下の方にワークスペースを家の中に作ることで、家の中でこれから過ごす時間が増えるだろう、ということをコロナ禍の前から考えていて、家事と仕事を行ったりできるような空間を作りました。

Nice to have (あったらいいな)がEssential(必要不可欠)に

この家を作るときにいろいろな住宅を50軒くらい回りました。そうするとアメリカには古い家が多いので、みんなリノベーションしていますが、キッチンだけ変えたりなど、ほとんどお化粧直し(表層替え)が多いです。リノベるさんのようにフルスケルトンでガラっと変えるようなことがほとんどありません。すると間取りが古いままなので、古い間取りに新しい生活の人が暮らすことになるので、みんな使い勝手悪そうにしていました。

特に、アメリカはリモートワークが前々から進んでいたので、それでも皆さん書斎ではなくてリビングでラップトップを広げて仕事していたり、子供も勉強部屋でプリント書いているのではなくダイニングテーブルの上でパソコンやiPadを広げて勉強しています。

我々は、在宅仕事ではWi-Fi環境がすごく大事なので、オフィスで使う同じグレードのアクセスポイントを入れようとか、アクセスポイントだけじゃなくてワークスペースを作ることをしました。それからアメリカ人も家の中で靴を脱ぐことが分かったので、これからは衛生管理が大事だから靴箱を作ったりもしました。

さらに、スマート照明が全ての箇所に入っているので、センサーが人間の動きや明るさを理解して勝手に照明をコントロールしてくれる。着くべきところにライトをつけて消すべきところを消すといったライティングの自動運転を目指しています。そういうものを入れることで、あちこち触らず衛生的に暮らせます。

それから空間やゆとりも大事なので、大きなバルコニーを作って、20人ぐらい外に出られるようにしたらロックダウンのときに使い勝手がよかった。また、インテリジェント・エアー・クオリティー・システムを入れています。空気が汚れてきたり、CO2レベルが上がってくると自動的に換気システムが動いて、空気を入れ替えてくれます。

我々もあったらいいよね、と思って作ったのですが、新型コロナの影響で環境が変わっていったこともあって、Nice to have (あったらいいな)がEssential(必要不可欠)になりました。

ニューノーマルはもう始まっていて、我々が実験的にやったことがコロナ禍をきっかけに進んでいったので、こういう新しい流れができているということを、我々のプロジェクトでご紹介できればと思っています。

金坂:アメリカではリノベーション会社がないという話でしたが、山下さん、このコロナ禍においてこのようなニーズを感じられますか?

山下:コロナ前はリノベーションする際に書斎、ワークスペースを作って欲しいという要望は約40%くらいだったのですが、コロナ禍の今では70%まで上がってきており、必須に近いような形になっています。皆さん、やはりワークスペースが必要だよねと。さらには、背景が映らないように個室が欲しいとか、小屋的なものが欲しいという具合にニーズが進化してきています。

浮かび上がるスマートホームの課題

金坂:本間さん、続いてのスライドについてもお願いします。

本間:ニューノーマルの話だけでなく、「スマートホームってそもそも何か?」についてお話しできればと思います。

現状のスマートホーム、アメリカの市場から見た場合、既存のスマートホームが抱える課題には笑い話がたくさんあります。いろいろなスマートデバイスがあり、例えば照明とかエアコンのコントロールとか、スマートロックとかセンサーとか。

自分でAmazonで買って、家に持ってくると自分でインストールしますので、1デバイス・1アプリ・1ログインIDになります。皆さんのスマホの中にはどんどんアプリが増えていきます。それでオン/オフのコントロールができるので照明をつけましょう、エアコンコントロールやりましょうって、家の外からやりましょうと。結局、これってアプリが全部バラバラになっているので、一つ一つアプリを開きながら照明とか、エアコンをやらないといけないのです。

さらにいうと子供はスマホを持っていません。そうしたら、「お父さんスマホで電気つけて」みたいな笑えない話になる。一回ログインが切れた、パスワード何だっけとか。家族がいてお父さんは一生懸命使いますが、お母さんは使わないとか、やっぱり嫌だとか。

そうはいっても、これがひとつになればいいとはならない。皆さんどうするかというと横連携をします。例えば、センサーが反応したらライトがつくプログラムを自分でできます。できるのですが、朝7時になったら電気がつきますといいながら日が長くなり朝6時から明るくなって今度はライトがいらないとなると、いちいち設定変更しないといけない。

それを、スマホのアプリを減らすためにスマートスピーカーという便利なものがあって、「アレクサ電気をつけて」言えばつきますよね。一回一回言うのは便利な時もあるけどそうでない時もある。機器同士の横連携とか、スマートスピーカーでも設定できますが、それだけに頼らない、まとまったコントロールができるとより体験がよくなります。

現状のスマートホームの課題は、自分で取り付けると配線が汚かったり、ライトはスマートだけどエアコンがスマートでないなど、ちぐはぐな状況が生まれることです。スマホが前提になると家族の中で使えなくなる人が出てくる。こういう問題は、アメリカでも日本でもそれほど変わらないと思います。

スマートオーケストレーションで家がIoTデバイスに

HOMMAではどうアプローチしているかというと、オリジナルでアプリケーションを作って、複数のデバイスをひとつのアプリケーションでコントロールできるものを作っています。

まずアプリとIDとスマートホームとの連携はデバイスごとにやりますが、これをひとつにまとめられるプラットフォームをつくりました。この上に〝スマートオーケストレーション〟という我々の作った言葉ですが、複数のデバイスが自動で連携するようなアルゴリズムを作っていて、例えばセンサーが人間の動きを感知して、周りが暗いと別のセンサーが理解していれば電気をつけます。朝7時だけどもう明るくなっているから電気をつけませんとか。

あるいは家族が寝ているベッドルームに、後から自分が遅く帰って入っても、家族が寝ていることを理解しているので、その部屋では足元のライトしかつけませんという具合です。我々は、住宅から全部作っているので、家の間取りとか、どのライト、ダウンライトがついているか理解しています。ライトもスマート化するので、どのライトがどのタイミングでつくと便利で、気持ち良いかが分かるので連携を全部、一定のプリセットのプログラムにしてユーザーが全部プログラムしなくてもいいような作り方をしています。

家の設計をやって家を建てているので、例えばセンサーの取り付け位置も1番いい場所に付けられますし、ケーブルを見えなくもできます。リノべるさんのアプローチも同じですが、家を丸ごとやり直すと全てがきれいに収まって、かつ我々の場合は全部プリセットした状態でお客様にお渡しするということを前提にしているので、完成品としてひとつ、家がまとまったIoTデバイスになっている、巨大なデバイスになっているイメージです。

そういうアプローチを我々はやっています。家とソフトウェア両方を作っている会社はないので、そこまではやっていません。ただ我々が作っている家が少ないので、まだ皆さんのお役に立てていませんが、どんどん広げていきたいと考えています。

中編へ続く。

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取材・文/堀田成敏(nh+)

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