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管理職は〝定額働かせ放題〟なのか?残業代が支給される可能性を裁判の事例とともに解説

2022.10.25

こんにちは。弁護士の林孝匡です。

会社から、

「チミは管理職なんだから、残業代は出ないよ!」

って言われてませんか?

ザケンナ! たわごとも、たいがいにしてほしいですよね。

残業代ゼロって、

・住宅ローンまだまだ残ってるっつーの
・子供の教育費これからどんどん増えるっつーの

ですよね。

残業代請求できる可能性があります

以下の肩書き持ってる方、ぜひ続きをご覧ください。

・部長
・統括本部長
・次長
・課長
・店長
などなど。

それ以外の肩書きの方でも、請求できる可能性ありです。

「定額働かせ放題」とオサラバしましょう!

私は「管理監督者」?

会社は、「チミは管理職なんだから、残業代は出ないんだよ!」って言ってきます。

よく聞くセリフですが、コレ、理屈が通っていない可能性が高いんです。

たしかに、労働基準法は、「【管理監督者】には、残業代は払わなくていい」って言ってるんです。


労働基準法 第41条
この章、第6章及び第6章の2で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。
2 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者


でも!

管理職=【管理監督者】とは、一言も言ってないんです。

管理職=法律上の【管理監督者】とは限らないんです

会社が勝手に「管理職は、法律上の管理監督者だ!フンガ!」って言ってるだけなんです。

さぁ、そこで問題は、

●【管理監督者】って何?
●あなたは【管理監督者】なのか?
 → 多くのケースでは違う、ってことです。

裁判では、

管理監督者かどうかは、以下の3つを考慮して判断されます。


・実質的に経営者と一体的な立場といえるような権限があるか
・自分の裁量で労働時間を管理できるか
・管理監督者にふさわしい収入か


をミックスして判断されます(行政解釈もこうなってます)

以下、3つの要素を順番に解説します。

あなたは、経営者と同じくらいの権限がある?

「んなわけねー!」

って方、多くないですか?

裁判例でも、だいたい否定されてますね。

↓ 裁判官はこんなことを見ます。

・労働者の採用・解雇・人事考課に関与できるか
・労働者の労働時間の管理を行う権限があるか
・経営方針を決定できる権限を有しているか

などを見ます。

経営者と対等に話ができてこそ管理監督者なので、社長などの指示に従わざるを得ない場合は、同じ権限があると言えない可能性大です。

自分の裁量で労働時間を管理できる?

無理ゲーの方、多いですよね。

ビシッと管理されて、馬車馬のように働かされてる方が多いですよね…。

以下のケースは、あなたの有利になる可能性が高いです。

・遅刻、早退をするとペナルティがある
・長時間労働を余儀なくされている
・他の社員と同じような勤務態様

自由に働けてこそ管理監督者なので、上記のようなケースはかなり有利です。

管理監督者にふさわしい収入?

同情するならカネをくれ!

いや、【相当の給与がもらえているのか】って話です。

以下のケースは、アウトの可能性が高いですね。

・職務内容からして基本給が低い
・役職なしの一般社員と給与があまり変わらない
・時給換算すればアルバイトの方より給与が低い
など。

職務内容に見合う給与があってこその管理監督者なので、待遇が不十分な場合は、あなたに有利になる可能性が高いです。

裁判では、以上の3要素をミックスして結論が出ます

勝った裁判例

裁判例を3つご紹介します。

すべて「この人は管理監督者じゃないよ。残業代を払いなさい」と会社に命じた裁判例です。

日本マクドナルド事件(東京地裁:H20.1.28)

マクドナルドの店長の事件です。

この3要素


・実質的に経営者と一体的な立場といえるような権限があるか
・自分の裁量で労働時間を管理できるか
・管理監督者にふさわしい収入か


に沿って、判断されました。

どんな判断が下されたかというと、

■ 経営者と同じくらいの権限がある?
 ・社員を採用する権限は一部に限られる
 ・店舗の営業時間の設定は自由にできず、本社の決定に事実上従う義務がある
 ・経営方針などの決定に、店長が関与してるとはいえない

■ 自分の裁量で労働時間を管理できるか
 ・60日以上の連続勤務をしたこともある
 ・残業が月100時間を超える場合もあり、労働時間は相当長時間に及んでいた

■ 管理監督者にふさわしい収入か
 ・自分よりも役職が低いひともりも給与が低かった
 ・そもそもの給与が管理監督者に見合っていない

というわけで、「管理監督者じゃないよ。残業代を払いなさい!」と命じました。

約500万円。

アクト事件(東京地裁:H18.8.7)

飲食店のマネージャーの事件です。

■ 経営者と同じくらいの権限がある?
 ・アルバイトの採用などについて決定権なかった
 ・決定権を持つ店長を補佐していたにすぎない

■ 自分の裁量で労働時間を管理できるか
 ・勤務時間に裁量がない
 ・アルバイトと同様の業務を行なっていた

■ 管理監督者にふさわしい収入か
 ・基本給の厚遇がない
 ・役職手当なども不十分

というわけで、「管理監督者じゃないよ。残業代を払いなさい!」と命じました。

エルライン事件(大阪地裁:H30.2.2)

商社の部長の事件です。

同じく3要素に沿って検討され、

■ 経営者と同じくらいの権限がある?
 ・アルバイトを採用する権限がなかった
 ・従業員の処遇を決定する権限がなかった
 ・ミーティングでは経営方針の指示を受けるだけで、経営に参画してたとは言えない

■ 自分の裁量で労働時間を管理できるか
 ・時間外労働は月70~100時間程度で150時間を超える月もあった
 ・営業時間の関係で労働時間を自分の裁量で決められない

■ 管理監督者にふさわしい収入か
 ・部長の給料は基本給23万円
 ・役職手当10万円及び固定残業手当3万円を含め、月額48万円
 ・一般従業員の中でも40~45万円の給料の者がいた
 ・部長の給料が特に高いとは言えない

というわけで、「管理監督者じゃないよ。残業代を払いなさい!」と命じました。

このように会社の言い分「チミは管理監督者だから」「残業代ナシね」は、通らないことが多いです。

まとめ

上記の裁判例ように、管理監督者にあたるかどうかは、


・実質的に経営者と一体的な立場といえるような権限があるか
・自分の裁量で労働時間を管理できるか
・管理監督者にふさわしい収入か


を検討する方法が確立されています。

店長だけじゃなく、

・部長
・統括本部長
・次長
・課長
・ハイパーメディア統括なんちゃらクリエイター

などの肩書きの方も、検討してみて下さい。

権限がないのに管理職扱いされてませんか?

名ばかり管理職というやつです。

残業代を数百万円請求できる可能性もあります。

ただ、ご自身で判断するのは非常に難しいので、「会社にコキつかわれてる…」「残業代請求したい」という方は、弁護士さんに相談してみましょう。

取材・文/林 孝匡(弁護士)
【ムズイ法律を、おもしろく】がモットー。コンテンツ作成が専門の弁護士です。
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