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冬のボーナスはどうなる?円安の元凶と言われる「金融緩和」の見落としがちな恩恵

2022.10.23

12月初旬に支給される冬のボーナス。支給日が近づき、何に使うのかを考え、楽しみにしている人も多いはず。気になるのはその金額です。

別の会社に就職した学生時代の友人が、どれくらいの金額をもらっているのか気になることもあるでしょう。この記事では、日本企業の冬のボーナス水準について解説します。

中小企業の冬のボーナスの平均は30万円ほど

日本経済団体連合会は、毎年企業会員に向けてボーナスの調査(2021年夏季・冬季 賞与・一時金調査結果)を実施しています。それによると、2021年の冬のボーナスの支給額の平均は692,033円でした。

経団連の入会資格には、純資産額が1億円以上で、3期連続して純損失を計上していないことなど、厳格な決まりが設けられています。日本を代表する、いわゆるホワイト企業。大手企業として真っ先に名前が思い浮かぶ会社は、70万円近いボーナスが支給されるのが普通です。それでは、中小企業はどうでしょうか。

三菱UFJリサーチ&コンサルティングは、事業規模5人以上の中小企業も含めた民間企業の調査(2021年冬のボーナス見通し)を行っています。それによると、2021年の冬のボーナスの見通し額は380,254円。同様の調査を東和銀行経済研究所(中小企業の令和3年冬季賞与の見通し)でも行っており、その結果は335,000円でした。30万円前後が一般的な会社の平均的な水準と言えるでしょう。大手企業の半分ほどというのが実情です。なお、国家公務員は607,600円でした。

ただし、中小企業の支給額の推移を見ると、上昇基調にあるのがわかります。

東和銀行経済研究所「中小企業の令和3年冬季賞与の見通しについて」より

2020年は新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて大きく減少しましたが、2021年は回復しました。11年前と比較して3万円近く上がっています。

円安の元凶と言われる金融緩和の恩恵

ボーナスは業績に連動して支給しているケースが多く見られます。経団連に所属する企業で業績連動方式を導入しているのは55.2%。営業利益や経常利益に応じて原資を決めています。

よく「安倍政権から始まった金融緩和は企業や投資家の一部を潤わせただけで、庶民には何の効果もなかった」という不満が聞かれますが、本当にそうでしょうか。

大和総研は金融緩和が企業に与えた影響を調査(異次元金融緩和が企業金融に与えた影響)しています。その中で、銀行の法人向け貸し出し残高が金融緩和後に増加し、設備投資目的の貸し出しも増えていることが示されています。

その結果として本業が好調になり、粗利益に厚みが出たとしています。グラフで経常利益の推移を見ると、金融緩和後の2013年以降で高まっているのがわかります。押し上げに寄与しているのが粗利益です。

大和総研「異次元金融緩和が企業金融に与えた影響」より

金融緩和がボーナスの支給額を押し上げた直接的な要因ではないにしろ、企業が利益を出しやすくなった背景の一つにはなっています。

ボーナスの支給額が多い建設業界

支給額は業種によっても異なります。中小企業においては、製造業が307,299円、非製造業が349,518円でした。非製造業の方が高い傾向があります。支給額を押し上げているのが、建設業。385,397円でした。

建設業は東京オリンピックによる特需が生じた2019年に需要のピークを迎えました。その後も民間工事が堅調に推移しているほか、慢性的な人材不足に陥っています。ボーナスを多く支給し、人材を繋ぎとめようとしていることが背景にあるのかもしれません。

支給額が少ない業種が運輸で、231,040円。全日本トラック協会の「経営分析報告書」によると、2021年は貨物輸送事業者1者当たり220万円万円の営業損失を出しています。2019年、2020年も赤字でした。運送業界は利益が出ていない事業者が多く、ボーナスどころではないというのが本音でしょう。

就職や転職に関する調査を行うjob総研の調査(2021年 冬ボーナス実態調査)では、およそ3割が支給なしと回答しています。

新型コロナウイルス感染拡大の影響が色濃く残っている業界に、飲食、宿泊、旅行などがあります。一部の業種では秋ごろから回復傾向にありますが、資金繰りに窮している会社は多く、冬のボーナスには大きく影響する可能性があります。

ボーナスも貯蓄から投資の時代か

各調査で冬のボーナスの使い道として挙げられるのが預貯金。日本の伝統とも言えるお金の“使い道”ですが、今の経済状況で銀行に預けるのは得策とは言えないでしょう。みずほ銀行に定期預金をしてもわずか0.002%の利回りがあるだけです。無いに等しいと言えます。

岸田政権は「貯蓄から投資へ」というスローガンを掲げ、資産所得倍増プランを実行へと移しています。その目玉の一つとなるのが、NISAの拡大。NISAは一定期間の金融商品で得られた利益が非課税になるというもの。20歳以上であれば、現行の一般NISAで120万円、つみたてNISAで40万円の投資枠が用意されています。

投資枠は2024年1月から拡大する見込みです。

バブル期の郵便貯金の利回りは5%以上だったと言います。預けていれば増えるのが当たり前という時代は終わりを迎えました。ボーナスの支給額は増加傾向にあるものの、近年は物価高も顕著です。自ら増やす努力が必要とされているのかもしれません。

取材・文/不破 聡

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