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売上高が過去最高のアップル、その裏で難しい舵取りを迫られる日本戦略

2022.10.02

2022年10月5日から、日本国内の「App Store」を通じて販売する有料アプリ、アプリ内課金サービスの料金を引き上げるとアップルが発表しました。最低価格120円を160円へと1.3倍に増額。突如として30%以上の値上げを決めました。

アップルは2022年1Q(2021年10-12月)の売上高が前年同期比11.2%増の1,239億ドルとなり、過去最高を更新。コロナ禍の半導体不足を乗り越えて業績好調にも見えますが、足元では暗雲が立ち込めています。利上げによる空前のドル高です。

アップルは為替差損を価格に転嫁せざるを得なくなりました。日米の金利差が縮まる見込みは薄く、将来的にiPhoneにも値上げの波が押し寄せるかもしれません。

純利益率を2ポイントずつコンスタントに落とす

アップルの2022年3Q(2022年4-6月)の売上高は前年同期比1.9%増の829億ドル。増収となった一方、純利益は同10.6%減の194億ドルでした。2022年に入ってから四半期ごとの純利益率の推移を見ると悪化を続けています。

2021年10-12月の利益率が27.9%、2022年1-3月が25.7%、2022年4-6月が23.4%でした。3か月ごとに2ポイントのペースで落としています。

Apple Financial Dataより(純利益率の目盛りは右軸)

この背景にあるのがアメリカの金利引き上げです。

アメリカは2021年12月に量的緩和策を終了。2022年3月のFOMCで金利の引き上げを決定しました。段階的に金利の引き上げを行いましたが、9月のFOMCでも0.75%の大幅利上げを発表。アメリカの政策金利は3%を超えました。これは2008年以来14年ぶりのことです。

FRBは年末までに政策金利を4.4%まで上げる見通しを示しており、インフレを抑制する姿勢を強く表に出しています。

その一方で、大規模な金融緩和を継続しているのが日本。日本銀行の黒田総裁は、2022年9月26日に大阪市で開かれた経済団体の懇親会で、今の物価上昇は資源高や円安が背景となって起こっているものであり、大規模な金融緩和を続けて賃金上昇を伴う物価上昇を目指すとの姿勢を示しました。

1ドル145円という円安に見舞われ、日本政府は為替介入に踏み切りました。一時143円程度まで円高が進行しましたが、その後円安が進行し、9月29日時点では144円前後で取引されています。為替介入の効果は限定的でした。

このドル高は金利差によって生じているものであり、日本が金融緩和を終えて金利引き上げを行わない限り、本質的に円安を是正することはできません。

ドル高の影響で目減りする日本の売上高

エリア別の売上高を見ると、為替の影響がよくわかります。

下の表はアップルの20223Q20224-6月)と前年同期間の売上高の比較です。

Apple Financial Dataより(純利益率の目盛りは右軸)

https://investor.apple.com/investor-relations/default.aspx

2022年3Q(2022年4-6月)の日本での売上高は54億ドル。前年同期間比15.7%の減少でした。

この期間で売上高が減少したエリアは日本と中国(中華圏)だけ。中国はゼロコロナ政策をとっていることから消費活動が制限されています。しかし、日本は20223月にまん延防止等重点措置が解除されました。中国は前年同期間比1.1%の減少に留まりましたが、日本は15%以上の減少に見舞われています。

アップルは米ドル換算で決算を出します。先進国で金融緩和を続けている日本は、為替の影響で売上高が大幅に目減りしているのです。

日本を重要市場とみるアップルの難しいかじ取り

日本のiPhone価格は世界34の国、地域の中で最安だというニュースが話題になりました。MM総研が2022年6月のアップルオンラインストアの価格を比較分析したもので、日本の販売価格はiPhone 13が98,800円、iPhone 13 Pro Maxは194,800円でした。日本以外の国・地域の平均価格はiPhone 13が126,433円(+27.9%)、iPhone 13 Pro Maxは256,813円(+31.8%)でした。

世界基準で見ると、両機種ともに3割程度高く販売されているのです。ブラジルでは、iPhone 13 Pro Maxが日本の2倍以上となる408,278円で販売されているといいます。

日本の販売価格が抑制されているのは、アップルが日本を重要な市場と見ているため。アップルの決算書ではエリア別の売上高や営業利益を出していますが、国単体で数字を出しているの日本のみ。

その他は南北アメリカ、欧州、中華圏、その他のアジア諸国としています。売上高でみても、日本は2021年度の売上高が284億ドルでした。中華圏を除くその他のアジア諸国が263億円。日本の業績へのインパクトの大きさから、アップル本社は日本の現地法人の話に耳を傾け、その時の日本にあった販売価格を設定しているのでしょう。

しかし、日本の売上高が減少傾向にあるのは紛れもない事実。いつまでも販売価格を抑制して、日本のマーケットに合わせられるわけではありません。

有料アプリの最低価格120円から160円への値上げは、わずか40円ほどのもの。ただし、値上げ率に目を向けると3.3%もの値上げです。98,800円のiPhone 133.3%値上げすると131,404円になります。

アプリの課金額引き上げは、iPhoneの値上げを先導しているのかもしれません。

取材・文/不破 聡

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