■連載/阿部純子のトレンド探検隊
閉じられるハッチ型入り口で遮音効果もアップした新カプセルを導入
全国 14店舗で カプセルホテルを展開する「ナインアワーズ」では、赤坂、新宿、大手町、水道橋の各店(計359床)で赤外線カメラ、集音マイク、体動センサーで収集して解析し、宿泊後に利用者に提供する睡眠解析サービス「9h sleep fitscan」を実施している。
従来のカプセルでは、パネルに赤外線カメラ、集音マイク、シーツの下に体動センサーを付け加える形で改良していた(下記画像左)。9月から、ナインアワーズの睡眠解析事業取に賛同したヤマハ発動機と共同で開発を進めていた新型カプセル「9h sleep dock」の運用が「ナインアワーズ大手町」でスタート。睡眠解析の装置もすべて埋め込まれたスマートなスタイルになっている(同右)。
従来はカプセルの入り口部分をロールカーテンで閉じていたため、隣り合ったベッドからのいびき音や、廊下の歩行音といった周囲の音が睡眠を妨げていたこともあり、音が気になる人には耳栓を渡していた。新型カプセル「9h sleep dock」は、防音性能に優れたハッチ型の設計となり遮音効果が向上。入り口が閉まることで、周囲と遮断された個室感もある。
新カプセルでは、睡眠解析サービス「9h sleep fitscan」のほか、ウィズコロナ時代に適した個別空調導入による「個別温湿度管理」「クリーン換気」にも対応している。
新カプセルは男性フロアに5床、女性フロアは上部3床の計8床導入。新カプセルは+1000円の料金設定だが、静音性が評価されれば希望する利用者も増えていくと見ており、順次数を増やしていくとのこと。
睡眠解析サービス「9h sleep fitscan」
睡眠解析サービス「9h sleep fitscan」は2021年12月のサービス開始から1万人以上の宿泊客に利用されている。サービスの利用は任意で、同意が得られない場合は、機器はすべてオフにする。サービス開始から現在まで拒否した人は1割弱程度とのことで、ほとんどの利用者が睡眠解析サービスを利用している。
360度体を包み込むカプセルユニットが高機能なセンシングを可能にし、赤外線カメラ、集音マイク、体動センサーで、就寝中のいびきの数、呼吸、寝返り、心拍などのデータを収集して、睡眠レポートを利用者にPDFデータで送る。
映像、音声、体動、心拍数と複合的に測定し、装着する機器もなく一定環境でデータが収集できるため、予防医学や疾病の早期発見の観点から国内外の医療関係者、睡眠研究者、企業からも大きな期待が寄せられており、個人が特定できない形に加工したうえで、研究機関に睡眠ビッグデータとして提供。スリープテックの観点からも注目されている。
「宿泊料金が安い傾向にある時期はビジネスホテルに流れてしまうため、カプセルは一番回復しにくい形態ではありますが、現状はコロナ前と比べて6~7割は回復しています。ただ、カプセルでも女性に特化したスタイルなど特長を打ち出しているところも多く、今後はテック系のサービスを充実させスペックを際立たせることで、最終的には『ここってカプセルホテルだったっけ?』と言われるほどを独自性のあるカプセルホテルを目指していきたいと考えています」(ナインアワーズ ディレクター 米本秀高氏)
【AJの読み】睡眠障害に気づくきっかけにもなる?
スマートウォッチやスマートリングでバイタルを測れる機器は多いが、「9h sleep fitscan」は映像や音、体動など複数の要素で計測して解析するのが強み。例えば、いびきの音量も㏈で表示するので「いびきなんてかいていないよ」と思っていても、数値で現実を突きつけてくる。
睡眠障害は、統合失調症、うつ病、パーキンソン病、認知症といった疾患と併発することが判明しており、睡眠データから自身の健康状態を知りたいところだが、分析までした結果を出してしまうと医療行為に抵触するため、利用者に渡すのはあくまで得られた結果のみ。ただ、無呼吸のデータも検出されるので、病院を受診する際に参考資料になるのは間違いなく、カプセルホテルに泊まるだけで睡眠データを得られるのは利用者にとってもメリットはある。
文/阿部純子