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【ヒット商品開発秘話】シリーズ累計540万本以上売れている眼鏡市場のPBメガネ「FREE FiT」

2022.09.25

■連載/ヒット商品開発秘話

 メガネはよく見えることが重要だが、これに匹敵するほど重要なことは使用感がいいこと。いくらよく見えても、重いと長時間掛けていられないし、掛けているうちに耳が痛くなったりずり落ちたりしたら、使いたくなくなる。

 使用感を徹底的に極めたことで高い支持を得ているのが、眼鏡市場の『FREE FiT』である。2010年7月に発売された『FREE FiT』は、軽くてずれにくいのが特徴。軽いだけではなく強度も兼ね備えている。定番の樹脂フレームに加え、フロント部にメタル素材を採用したものなどもラインアップ。眼鏡市場のプライベートブランドの中では一番の売れ筋で、これまでにシリーズ累計540万本以上を販売している。

『FREE FiT』樹脂フレーム。写真はFFT-056のブラック

安っぽく見える樹脂フレームが売れた

『FREE FiT』は眼鏡市場が初めて本格的に扱った樹脂フレームのメガネだった。構想されたのは2008年末頃。樹脂フレームの開発を強く志向するきっかけになる出来事が起こった。メガネで有名な福井県鯖江市のメガネ工場がつくった樹脂フレームのメガネを試しに販売してみたところ、好調に売れたというのである。

「そのメガネは予想に反して売れました。メガネフレームは10数グラムや20グラムと結構な重さがあるので、樹脂フレームのヒットから軽量化の手段として樹脂に着目しました」

 このように明かすのは、眼鏡市場を展開するメガネトップの櫻井憲一郎氏(商品開発部 副部長)。メガネトップも鯖江に自社工場のキングスター工場があり、メタルフレームのメガネを生産。樹脂フレームはメタルフレームより安っぽく見えることから「普通のメガネ店では売れない」というのが当時の判断だった。

 しかしこの出来事から樹脂フレームが受け入れられると判断。樹脂フレームのメガネを企画・開発することにした。

上質感を担保するため金型の修正を繰り返す

 使うことにした樹脂は柔軟性に特徴があるポリアミド。現在樹脂製フレームで使われるウルテムやPPSU(ポリフェニルスルホン)と比べると成形しやすい。ただ、キングスター工場をはじめ鯖江にあるメガネ工場はほとんど樹脂成形を行なっていないので、どこで成形、量産するかが焦点になった。

 メガネトップが出した結論は、樹脂フレームづくりが盛んな韓国での成形、量産。韓国で協力してくれるメーカーを見つけ、開発から協力してもらった。

 樹脂だけでメガネをつくるのは、簡単なことではなかった。そのため例えば、テンプル(耳に掛けるパーツ)と、ヨロイ(リムというレンズを囲っている部分とテンプルをつなぐパーツ)をつなぐ丁番という部品には次のような工夫を盛り込んだ。

「最初、丁番も樹脂だけでつくろうとしたのですが、磨耗したりアガキ(テンプル開閉時にかかる適度な抵抗力)が維持できなかったりしました。そのため、樹脂製丁番の中に金属のパイプを埋め込み、ネジで留める構造を採用しました」(櫻井氏)

 苦心したのが、上質感の担保だった。軽くて耐久性がありつつも上質感があるものにするために何度も設計基準を見直し、リムやテンプルの太さをできるだけ細くしつつ耐久性を確保するようにした。

 そのため、金型は繰り返し何度も修正。通常であれば1回つくったら何か不具合があったときに微調整する程度だが、1品番で平均5回以上修正したそうだ。

メガネトップ
商品開発部 副部長
櫻井憲一郎氏

発売直後に訪れた生産能力の限界

 2010年5月、市場性の有無とトラブルなく使えるものかどうかを確認するため、『デイリーフィット』の名で発売。1型につき3500本、全2型をリリースしたところ、一瞬で売り切ってしまった。店舗スタッフも驚くほどの売れ行きだったことから、メガネトップでは正式販売に向けてブランディングを検討し、商品名を『FREE FiT』にした。

『FREE FiT』として発売を始めたのは7月23日。初回生産の4万4500本のうち93%を8月末までに売り切ってしまった。

 あまりの売れ行きから、生産能力のアップが大きな課題となった。韓国の協力メーカーは1社だけだった上に小さかったことから、生産能力が明らかに足りない。生産体制が整うまでの間は、唯一の協力メーカーに生産能力を目一杯上げてもらい対応したという。

「その協力メーカーに頑張って生産してもらうしかなかったので、当時の商品開発部長が何度も韓国に行き、工場に栄養ドリンクを差し入れしたり工員の肩をもんだりと、メーカーを励ましてきました。1日中つくり、日本人スタッフも検品したりとかして、何とかつくってきましたが、それでも足りませんでした」

 発売当初をこう振り返る櫻井氏。『デイリーフィット』と違い全7型と種類が増えたことも、商品が足りない状態の原因になった。韓国の大邱(テグ)からキングスター工場がある鯖江に一番近い石川県の小松空港まで、持って来ることができるだけの『FREE FiT』を持ってやって来て、渡したら空港を出ることなく韓国に戻ることをしばらく繰り返すことになった。

 発売直後の売れ行きは、テレビCMを打つなど販促を強化したことも要因だった。しかし、その後とくに目だった販促をしなくても、『FREE FiT』は眼鏡市場でつねにトップの売れ行きをキープし続けている。

業界初の抗ウイルス認証マークを取得

 発売から10年以上が経過した『FREE FiT』はこの間、進化を遂げ、様々なモデルを登場させている。

 まずは2016年12月に発売された、極薄樹脂と極薄メタルを組み合わせたハイブリッドモデル。樹脂フレームはプライベート向きと捉えられがちだったこともあり、掛け心地の良さや快適さをビジネスシーンにも使えるメガネに広げるため企画・開発された。

『FREE FiT』ハイブリッドモデル。写真はFFT-1002のネイビーマット

 2020年12月には、エコ樹脂フレームを発売。企画含め開発に2年近く要したエコ樹脂フレームは、トウゴマ由来の植物性樹脂を約45%含んだ素材を採用している。

 ただ、植物由来の樹脂は成形が難しい。加えて、使用割合が高ければ高いほど透明性が落ち、不透明なものができてしまう。こうした面も成形を難しくした。

『FREE FiT』エコ樹脂フレーム。写真はFFT-072のネイビー

 そして2021年4月、抗ウイルス認証マークを取得した業界初のメガネフレーム『FREE FiT ウイルスブロック』を発売する。

 2020年に始まった新型コロナウイルスの感染拡大を受けて企画。鯖江にある表面処理を手がけるメーカーの技術を用いた抗ウイルストップコートを、日本で成形した樹脂フレーム本体に施した。メガネフレーム表面へのコーティングは、厚い畳んだときになどに割れ、薄いと何かに当たった瞬間剥げてしまうことから難しい側面があるというが、コーティングすることを前提にして日本国内で樹脂素材の選定や成形条件を設定したという。

『FREE FiT』ウイルスブロックモデル。写真はFFT-5003のグレー

取材からわかった『FREE FiT』のヒット要因3

1.普遍的な価値の提供

 軽さからくる掛け心地の良さは『FREE FiT』にとって一番のストロングポイント。ユーザーはいつの時代も掛け心地の良さを求めるので、そういう意味では普遍的な価値を提供できている。

2.上質感がある

 それまでほぼメタルフレームを扱ってきた眼鏡市場にとって、樹脂製フレームでも上質感は不可欠。耐久性を確保しつつリムやテンプルを細くするなどし、カジュアルさや野暮ったさをなくした。

3.社会課題に対応

 地球環境への配慮や新型コロナウイルスへの対応と、様々な社会課題への対応が各所で求められている。メガネも御多分に洩れないが、これらの社会課題への対応を『FREE FiT』で示し、商品と企業イメージを良くした。

 ユーザーの反応で多いのは、「今まで使っていたものより軽くて調子がいい」「痛くならない」などといった掛け心地の良さに関するもの。眼鏡市場の商品はすべてキングスター工場に入荷されてチェックを受けるというが、高品質なものをつくると同時に手間ひま惜しまずできた商品をチェックしているからこそ、掛け心地の良さが担保できている。

製品情報
https://www.meganeichiba.jp/brand/freefit/

文/大沢裕司

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