電子ペーパー。これは今後、あらゆる職種の人々から高評価されるものではないかと筆者は考えている。
電子ペーパータブレットは、確かに「タブレット」のはずなのに、スタイラスペンで書くと紙と大差ない書き心地である。
これは手書き派にとってはありがたいガジェットだ。どんなにテクノロジーが進化したとしても、筆記の基本単位は「手と紙とペン」に他ならない。
その行動原則を大事にしている人は、決して少なくないのだ。
そういう人にこそ、『BOOX Note Air2 Plus』が最適ではないか。これは10.3インチサイズの電子ペーパータブレット。
まさに「書く」という行為を進化させるために生まれてきたタブレット、と言ってもいいだろう。
これは「紙そのもの」じゃないか!?
BOOXといえば、筆者は先日『BOOX Poke4 Lite』という製品のレビュー記事を書いた。
『BOOX Poke4 Lite』は、一言で言えば「読むためのタブレット」である。
6インチサイズの小さなタブレットは、それ故に携帯性に優れていた。『BOOX Poke4 Lite』を片手に、京都へ旅行に出かけようか……とも書いた。そうした使い方には最適な製品だったからだ。
今回の『BOOX Note Air2 Plus』は、同じ電子ペーパータブレットでも方向性が全く異なる。これは「書くためのタブレット」だ。
もっともそれは、「本を読めない」というわけではない。むしろ本を読む用途でも十分なパフォーマンスを発揮するし、実を言えば筆者は「本を読むためのタブレット」のつもりでこのレビュー記事の企画案を練っていた。
しかし実際に届いたものを試してみると、異次元とも言える書き心地に驚愕すらしてしまった。この点は無視するわけにはいかない!
同封のスタイラスペンを手に取り、ノートアプリを開いて文字を書く。静電容量方式タッチと4096段階筆圧検知で上質な書き心地……とやれば、少々宣伝臭いだろうか。
だからこそ、ここは筆者の主観を正直に記述してしまおう。
これは紙そのものじゃないか!?
「カリ、カリ」という筆記音が聞こえてきそうなほどに、書き心地も質感も紙のそれに極めて類似しているのだ。
これならイラストも描けるだろうが、やはりここは「ノートを取る」行為を基準に『BOOX Note Air2 Plus』のパフォーマンスを見ていこう。
行動規制緩和と「手書きグッズ」
筆者はそもそも「ノートを取る」「メモをつける」ということはしない男である。
特に取材中は、相手の話を全力で聞かなければ取材は成立しないというモットーでやっている。
故に、日常でも自分から積極的、能動的にメモを取るということは殆どしない。
が、2022年9月は例外的な状況に足を踏み入れている。
15日から開催の東京ゲームショウのせいで、取材案件が立て続くようになってしまったのだ。
万が一にもすっぽかさないため、手書きで大まかなスケジュールをメモせざるを得なくなった。
ちょうどその時、複数のPR会社やインポーター、クラウドファンディングの運営会社からいろいろな「手書きグッズ」が届いた。
新発売の文具や仕事用ノート、そして電子ペーパータブレット。「澤田さん、これをぜひ試用してください!」と向こうから言ってきたものもあるし、逆にこちらが「ぜひ貸してください」と頼み込んで送ってもらったものもある。
いずれにせよ、ここ数ヶ月で新しい文房具や手書きのできるガジェットがどっと発表されるようになったと筆者は感じている。これは偶然だろうか?
新型コロナウイルスは、まだまだその猛威を振るっている。が、1年前とは違い「不要不急の外出」もマスクと消毒アルコールを携帯すれば許されるようになった。
そして、ライターの視線から見れば実地の新製品発表会や記者会見が再び行われるようになった。
東京ゲームショウもそのひとつである。
このイベントは去年、一昨年とオンラインのみでの開催だった。それが今年、3年ぶりに幕張メッセに戻ってくるのだ。
実地開催のイベントが戻ってくるということは、ビジネスパーソンもようやく自宅の外へ出られるということである。
商用での外出に必要な文房具やメモ帳、ノート等の需要が回復し、それに合わせて数々の新製品が企画される流れが現在進行系で発生していると筆者は感じている。
大企業に勤める友人に使わせてみる
『BOOX Note Air2 Plus』は、思い立ったらすぐにそれを取り出してメモをつけることができる「ビジネスタブレット」と呼ぶべき製品だ。
筆者の友達に、若くして飲食関連大企業の役職持ちに出世した男がいる。彼の名は仮にAくんとするが、今回はそのAくんに『BOOX Note Air2 Plus』を持たせてみた。
「これ、紙で書くより断然楽だよ! なのに書き心地は紙とあまり変わらないな。重要事項をその場でメモして、必要ならそのデータを上司や同僚に送ることもできる。いや、俺これ欲しいんだけど」
Aくん曰く、「PC操作が苦手な人でも簡単に扱えるはずだ」とのこと。
「俺の勤める会社、大企業って言われればそうなんだけど、部長も課長も係長も要は“商店街のおっちゃん”みたいな感じなんだよ。現場からの叩き上げが多い。飲食関連ってのは、まぁウチに限らずそんな感じなんだけどさ。で、そういう叩き上げっていうのは基本的に不器用。今までPCのキーボードより包丁握ってた時間のほうが長かったから」
従って、肩書きがついて本社勤務になったとしても、いつまでもPCのキーボードに慣れない人も少なくないとか。
「でもこのタブレットは、そもそもが手書きすることを前提にしてるよな? だからこれを渡して、重要なことを手で書いてもらってそれをデータ保存するってこともできるはずなんだよ」
売値よりも付加価値
Aくんの話したことは、会社内だけでなく家庭内でもありえるのではないか。
PCもスマホも扱えないお祖父さんお祖母さんに、『BOOX Note Air2 Plus』を渡して必要な伝言を手で書いてもらう。それを家族全員で共有する……という使い方も見出せるはずだ。
「で、このタブレットはいくら? ……7万2800円か。安くはないね」
「まぁね。ただ、これがお前の会社で役に立ったら7万円くらいの出費はすぐに返せると思うんだ」
特に金持ちというわけではない一個人から見れば、7万2800円は大した出費である。お世辞にも「安い」とは言えない。
が、単純な売値よりも重要なのは付加価値である。この製品を持つことで、仕事にどのような効果が生まれるのか。
少なくとも、ここまでスムーズかつ実体的な書き心地を発揮するタブレットは今の時点ではあまりない。
そしてこの製品の手書き機能は、あらゆる職種の現場であらゆる人が容易に扱えることは間違いない。
この1台の電子ペーパータブレットが、仕事の在り方を大きく変えてしまう可能性すらある。
そう考えると、これは我々の生活をも変革し得る恐るべき製品かもしれない。
取材・文/澤田真一