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一眼レフからミラーレスにシフトするニコンに勝算はあるのか?

2022.09.11

デジタルカメラの大手ニコンが、一眼レフカメラから撤退するとのニュースが駆け巡りました。ニコンは伝説の一眼レフ「Nikon F」で数多くのカメラファンを魅了し、世界中にその名を知らしめた会社。撤退のニュースに失望するファンの声が聞かれました。

しかし、2022年8月4日の決算会見でCFOの徳成旨亮氏が一部報道を否定。一眼レフの技術資産を捨てることいった決定はしていないと明言し、今後も開発の可能性があるとしました。

ただし、ニコンが一眼レフからミラーレスカメラへと軸足を移すのは確か。カメラ市場が縮小する中、ニコンに勝算はあるのでしょうか。

平均単価が10年で3倍に上がったミラーレスカメラ

ニコンが一眼レフから撤退するとの見方が出たのも当然と言えば当然。一眼レフの総出荷台数は凄まじい勢いで減少しています。一般社団法人カメラ映像機器工業会によると、2021年の一眼レフの総出荷台数は224万台。2012年と比較すると1/5以下の水準まで減っています。

一般社団法人カメラ映像機器工業会のデータより筆者作成

総出荷台数は2020年にミラーレスカメラに抜かれました。2021年のミラーレスの出荷台数は310万台。2012年の395万台と比較すると、やや数字を落としているのは確かです。しかし、減少のペースは緩やかで、比較的堅調に推移しているのがわかります。

ミラーレスが企業にとって魅力的なのは、単価を上げやすい点。2021年の平均単価は10万円を超えました。

一般社団法人カメラ映像機器工業会のデータより筆者作成

2012年は3万2,000円程度でした。10年で3倍に跳ね上がっています。その一方で一眼レフは2017年を境に価格の下落傾向が顕著になりました。

ミラーレスは出荷数が微減を続けたとしても、単価でそれをカバーできるのです。小型で高画質、高機能であることから一眼レフとの明確な差別化ができ、一眼レフファンがミラーレスに乗り換えたことで、単価が上がっているものと考えられます。

事業単体で赤字になりはじめたニコンのカメラ事業

国内デジタルカメラの2強、ニコンとキヤノン。両社ともにカメラ事業は苦戦しています。ニコンの2021年3月期カメラ事業の売上高は前期比33.5%減の1,502億円。新型コロナウイルス感染拡大、半導体不足などの影響を受けました。2021年3月期はやや戻したものの、18.6%増の1,782億円。2,000億円を割り込んだままです。

その状況はキヤノンも同じ。2020年12月期のカメラ事業売上高は25.6%減の3,477億円、2021年12月期は24.5%増の4,331億円。4,000億円台は取り戻したものの、2019年12月期の数字には届かず、売上高の減少基調は続いています。

※決算説明資料より筆者作成
ニコン
キヤノン

キヤノンよりもニコンが苦しいのは、事業単体で赤字が出始めている点。2020年3月期は171億円、2021年3月期は363億円の営業損失を出しました。

※決算説明資料より筆者作成
ニコン
キヤノン

2023年3月期のカメラ事業売上高は318億円の増収、営業利益は30億円の増益を見込んでいます。販売が好調のようにも見えますが、円安の影響が大きいことを示唆しています。

■ニコン2023年3月期通期見通し

決算説明資料より

フラッグシップモデル「ニコン Z9」は不発?

ニコンが満を持して世に送り出したのが、初のフラッグシップミラーレス「ニコンZ9」。2021年12月に発売しました。

しかし、2022年4-6月のレンズ交換式デジタルカメラ販売台数は前年同期間と比較して2万台の減少。「ニコン Z9」の登場はカメラファンから好意的に受け止められましたが、ヒットしている兆しはありません。

■カメラ事業2021年4-6月と2022年4-6月の比較

決算説明資料より

注目したいのは、台数が減少しているにも関わらず、売上高は112億円、営業利益は44億円増加している点。「ニコン Z9」は60万円以上もする高額商品です。台数の減少分を単価でカバーしている様子がよくわかります。

今後は安価な製品を出して台数を稼ぐのではなく、単価とのバランスを見ながら開発に注力するものと予想できます。

第2の富士フイルムとなるべきニコン

ただし、中長期的に見てカメラ事業が会社の成長をけん引する存在でないことは明らか。市場が縮小する業界にしがみつくわけにはいきません。会社全体で注力しているのが、半導体露光装置。精密機器事業の売上高は2023年3月期に2,112億円となり、カメラ事業を上回っています。営業利益率もカメラ事業の10.6%と比較して精密機器事業は18.6%と高水準。

半導体露光装置はオランダのASMLに圧倒的な技術差を見せられ、スマートフォンに使われる半導体製造に必須のEUV露光装置は100%のシェアを握られています。

ニコンは最先端のロジック半導体製造用ではなく、NAND型フラッシュメモリーなどに向けたArF液浸露光装置の開発に邁進しています。

かつて富士フイルムは、フィルムカメラが廃れて事業存続の危機に陥ったものの、医薬品や医療機器分野で頭角を現し、見事復活を遂げました。

現在のニコンは、かつての富士フイルムと重なるところがあります。

取材・文/不破 聡

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