いつ来ても「おかえり」と言ってくれる気がする
豊富な地下水の恩恵を受け、古くから「水の都」と呼ばれてきた岐阜県大垣市。そこに半世紀以上地元住民に愛され続け、全国のサウナーたちから「オアシス」と称賛され続ける「大垣サウナ」はある。『日本サウナ史』の著者・草彅洋平さんがその魅力の理由を解き明かす。
不動のNo.1サウナが岐阜にあった
日本全国のすべてのサウナ施設を制覇しようと、毎日いくつもサウナを回っている。そんな僕が「一番好きなサウナ施設はどこか?」と聞かれたら、真っ先に名前を挙げてしまうのは「大垣サウナ」だ。
なぜ僕はそこまで大垣サウナに惹かれるのだろう?
最初に行ったのは昨年の3月、雨の日だった。名古屋で開催された「サウナランドフェス2021」の帰りに「ここに行ってみよう」と何も考えずに向かっただけなのだ。
大垣駅から歩くこと15分。中に入るとロッカールームの上に整然と並ぶ黄色いタオルの美しい姿に感銘を受けた。たたまれたタオルに美しさというものがあることを、その日まで考えたこともなかった。
110℃を超える昭和ストロングスタイルのサウナ室のテレビの下にはプレートが設置されており、そこには「われらサウナ人」という詩が書かれていた。
サウナは自然を愛する人に好まれている。
サウナには野趣があるような気がする。
サウナに入ると旅情を感じるときもある。
なぜか仕事のできる人に好まれている。
サウナは明日を考える人に向いている。
サウナは人生を楽しむためにある。
しかしサウナに入ったからと云っていばる人はひとりもいない。
この詩はサウナ機器販売のメトスの前身会社である中山産業株式会社の社是であるらしい(支配人・林亨氏談)が、この初めて見る言葉に僕は雷のように打たれた。
続けて圧倒的に冷たく、なめらかにスルッと肌に染み込む水風呂にもノックアウトした。この水質のすごさは、2階の食堂で生姜焼き定食を食べた時に再確認させられる。米と味噌汁が恐ろしく旨いのだ! 料理はすべて水風呂の水と同じ地下水で作られているため、クセがなく、体に染み入ってくる。その素直な感じが一緒なのだ。
晴れた日であれば、館内着を着て店先で外気浴ができる。常連さんと話をするもよし、1人で浸るもよし。心地よい風が吹き抜ける至高のととのいスポットだ。
2階にあるお食事処はきれいに敷かれた絨毯と小上がり、アーチ型の門が上品。常連が背中に〝大垣サウナ〟と書かれた館内着を着て肩を並べる様子は名物だ。
大垣サウナの生みの親・岡田ママ(右)と常連さん(左)。気さくなママの人柄に惹かれて大垣サウナを愛する人も少なくない。
ロッカーの上に並ぶタオルには、着替える際にタオルの出し入れなどで手間をかけさせないという心遣いが込められている。
靴をフロントで預けるシステムは日本でココだけ!?
お揃いのタオルでサウナに入ればもう〝大垣ファミリー〟の仲間入り
ガスストーブで温められているサウナ室の温度は110℃を超える。
サウナ室の背もたれにまで絨毯が敷かれており、背中を壁に預けることができる。