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価格の算出方法、特例、遺産の分割方法、覚えておきたい不動産にかかる相続税の基礎知識

2022.09.10

相続人が複数の場合、不動産はどう分ける?

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(出典) photo-ac.com

相続財産に不動産が含まれていて、複数の相続人がいる場合、どのように遺産を分ければよいのでしょうか?不動産を含めた遺産の分割方法を、事例を挙げて解説します。

不動産以外の遺産があるなら「現物分割」を検討

不動産以外にも、相続する遺産がある場合には『現物分割』を検討する方法もあります。現物分割は遺産の一つひとつを、各相続人に割り振る方法です。

きょうだい3人(長男・次男・長女)が、親の遺産(不動産2件・預貯金・宝石類)を現物分割するケースで考えてみましょう。

なるべく均等に割り振るので、例えば以下のような分け方が可能です。

遺産 相続する人
親の住んでいた家屋 長男
  • 所有していた土地
  • 建物
次男
  • 預貯金
  • 宝石類
長女

ただし、法定相続分を正確に割り振ることは難しいため、全員が納得する分け方を話し合う必要があります。

代表が相続し、現金を分配する「代償分割」

不動産・有価証券などの現金化が難しい財産の場合、代表者がまとめて相続する『代償分割』を選ぶのも一つの方法です。

代償分割を選択すると相続財産を1人、または複数の相続人で取得できる半面、取得した人は他の相続人に対して債務を負います。『代償金』と呼ばれる債務は現金で支払う必要があり、金額は代償分割を開始したときの時価で決まります。

以下の事例で、代償分割の特徴を確認しましょう。

相続人 長男・次男
法定相続分 長男1/2・次男1/2
分割方法 代償分割
相続財産

土地

※相続税評価額
3,000万円

※代償分割開始における時価
4,000万円

代償分割で長男が3,000万円の土地を相続した場合、相続税評価額に基づく次男の法定相続分は1,500万円です。

一方、代償分割を開始したときの時価を適用した場合の、長男・次男の相続額は以下の通りです。

長男

3,000万円

-{1,500万円×(3,000万円÷4,000万円)}

=1,875万円

次男

1,500万円×(3,000万円÷4,000万円)

=1,125万円

次男が受け取れる代償金の額は、法定相続分よりも安くなることが分かります。代償分割を開始する時期によっては、法定相続分よりも金額が下がるケースがあることを覚えておきましょう。

参照:No.4173 代償分割が行われた場合の相続税の課税価格の計算|国税庁

「換価分割」で不動産を売却して現金化

相続した不動産を売却し現金化し、法定相続人で分配する『換価分割』もあります。換価分割をするときに、『取得費加算の特例』を使うのも一つの方法です。

特例を使って相続税の申告期限から3年以内に相続した不動産を売却すると、土地にかかる相続税を取得費として売却価格から差し引くことが可能です。

売却価格が下がるため譲渡所得額も減り、課税される所得税・住民税の額も抑えられます。適用には確定申告が必要で、遺産総額が基礎控除内で相続税が発生していない場合には適用されません。

相続財産を現金化する換価分割は、法定相続人に分配しやすいのがメリットです。

参照:No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例|国税庁

参照:No.3252 取得費となるもの|国税庁

「配偶者居住権」で権利を分ける方法も

2020年4月に施行された『配偶者居住権』を使い、亡くなった人が所有する家の権利を「所有権」と「居住権」とで分割する方法もあります。

相続税評価額1,000万円の家と、1,000万円の預貯金を配偶者と子ども1人で相続するケースで考えてみましょう。

法定相続分は配偶者1/2・子ども1/2なので、それぞれ1,000万円ずつ相続できます。現物分割で配偶者が1,000万円の家を、子どもが1,000万円の預貯金を相続すると、配偶者の手元には現金が残りません。

しかし配偶者居住権を使うと、1,000万円の家を配偶者居住権500万円と所有権500万円のように分割することが可能です。すると配偶者は家に住む権利を取得しながら、預貯金500万円も相続できます。

さらに配偶者居住権は原則、配偶者の死亡とともに権利が失効し、配偶者の遺産に含まれないのも特徴です。

不動産を含めた財産の相続に関する豆知識

遺産分割協議書

(出典) photo-ac.com

精神的・経済的にも負担になりやすい相続手続きには、細かな決まりや納付が困難な場合に使える制度が設けられています。最後に、不動産を含めた財産の相続に役立つ豆知識をまとめて紹介します。

遺言書がない場合は「遺産分割協議」が必要

亡くなった人の遺言書がなかったり、無効だったりする場合には、遺産の相続分を決める『遺産分割協議』が必要です。

遺産分割協議には法定相続人の全員が参加し、納得するまで分割方法を話し合わなければなりません。話し合って分割方法が決まると『遺産分割協議書』に、法定相続人全員が署名・押印します。

被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10カ月以内に遺産分割協議書を作成し、相続税の申告をするときに法定相続人全員の印鑑証明書を添えて提出しましょう。

参照:No.4202 相続税の申告のために必要な準備|国税庁

相続税には延納・物納制度がある

相続税が発生した場合には、申告期限までに現金でまとめて納付するのが原則です。しかし、年払いで払う『延納』や、相続した財産で相続税を納める『物納』の制度が使えるケースがあります。

延納が認められる条件は、以下の通りです。

  • 相続税額が10万円を超えている
  • 納付期限までに現金で納付することを困難とする事由がある
  • 延納申請書と担保提供関係書類を期限までに提出する
  • 延納する相続税額に相当する担保を提供

延納する相続税額が100万円以下で、延納期間が3年以下の場合は担保は必要ありません。ただし、延納には、相続財産のうち不動産が占める割合や、延納の期間に応じて利子がかかります。

延納制度を使ってもなお、現金での相続税納付が困難な場合には、物納を申請することが可能です。物納ができるのは、相続税の課税対象になった財産のうち、日本国内にあるものとされています。

不動産・船舶・国債証券・地方債証券・上場株式などが該当し、生前贈与で相続時精算課税や非上場株式の納税猶予を適用している財産は対象外です。

参照:延納・物納申請等|国税庁
参照:No.4214 相続税の物納|国税庁

※情報は万全を期していますが、その内容の完全性・正確性を保証するものではありません。

構成/編集部

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