OODAループは『素早さ』が特徴の意思決定手法で、ビジネスから日常生活まで幅広く活用されます。どのようなシーンに適した手法なのでしょうか。OODAループを構成する4ステップや、活用するときのポイントをチェックしましょう。
OODAループ(ウーダループ)とは
OODAは『ウーダ』と読み、意思決定のプロセスの頭文字をとって作られた造語です。4プロセスを繰り返して意思決定や行動する手法を『OODAループ』と呼びます。具体的な意味や身近な事例から、まずはOODAループの概要をつかみましょう。
個人の意思決定・行動を促す手法
『Observe(観察)』『Orient(状況判断)』『Decide(意思決定)』『Act(実行)』の頭文字を取り名付けられたOODAは、アメリカの航空戦術家ジョン・ボイド氏が作った意思決定手法です。
時々刻々と状況が変わる戦場では、上官の指示を待っている余裕はありません。個人が自発的にその場の状況に合わせて意思決定し、行動することが不可欠です。そこで意思決定と行動の方法を理論化したのがOODAループです。
戦場での迅速かつ的確な判断のために作られた理論が、現在では世界中の企業でビジネスに役立つフレームワークとして取り入れられています。
身近なOODAループの例
OODAループについて理解を深めるため、ランチのお店を決めるプロセス例に取ってみましょう。
- O(観察):12時を過ぎ昼休みになりおなかが空いている、近くにSNSで「おいしい」と評判のカレー屋がある
- O(状況判断):カレー屋のランチタイムは11~14時のため開いているはず
- D(意思決定):おいしいカレーを食べたいのでカレー屋へ行こう
- A(実行):カレー屋へ行く
逆にカレー屋側が営業戦略を考えるためにOODAループを取り入れた場合は、以下のように考えられます。
- O(観察):この近くはオフィスも複数あり、ランチの需要がある
- O(状況判断):11~14時をランチタイムとしてSNSで集客すれば、新規顧客やリピーターがきてくれそう
- D(意思決定):SNSの発信や口コミへの返事を積極的に行いつつ、ランチタイムならではのメニューの開発や品質維持に努めよう
- A(実行):オリジナリティの高い日替わりメニューや手作りの焼き立てナンなどを用意して、何度も通いたくなるようなメニューを提供する
ビジネスシーンでも同様に各プロセスで必要なことを洗い出します。日常生活の何気ない選択からビジネスにおける戦略まで、OODAループが幅広く活用できることが分かるでしょう。
PDCAサイクルとの主な違いは「計画」の有無
ビジネスシーンに役立つフレームワークの一つに『PDCAサイクル』があります。『Plan(計画)』『Do(実行)』『Check(評価)』『Action(改善)』を繰り返す手法です。
OODAループとの違いは『最初に計画を立てる』点です。全ての工程が明らかになっている状態でさらに改善を目指すために用いる手法のため、その場の状況に臨機応変に対応するOODAループとは性質が異なります。
状況や前提が変わらないときに有効なフレームワークのため、OODAループと比較して活用できそうか判断しましょう。例えば、工場の生産管理や品質改善を長期的な視点で行うときには、PDCAサイクルがぴったりです。
OODAループを取り入れる意味
OODAループを用いることで、ビジネスや日常生活にどのような効果がもたらされるのでしょうか。変化のスピードが速い環境にはOODAループがマッチします。取り入れることで現状に合わせて臨機応変に対応する力が身に付く点も魅力です。
OODAループはVUCA時代のビジネスに欠かせない
スピーディーな変化により将来の予測を立てにくい状況に置かれているVUCA(ブカ・ブーカ)時代には、現場の個人が判断し実行するOODAループが合っています。特に、ITにまつわる技術の進歩が目覚ましい昨今の変化はこれまでと比べものにならないスピードです。
人々の購買行動モデルもインターネットやSNSの発達に合わせ変化しており、新しい購買モデルがどんどん出てきています。例えば、インターネットによる情報収集を軸にした『AISCEAS(アイシーズ)』やSNSの口コミへの共感を基にした『VISAS(ヴィサス)』などの消費者行動モデルです。
激しい変化の中で過去の成功事例を基に計画を立て実行しようとしても、なかなかスピードに追いつけません。OODAループであれば事態をプロセスごとに分けて、スピーディーな意思決定ができます。めまぐるしい購買モデルの変化にも対応しやすくなります。
試行錯誤して臨機応変に対応する癖がつく
過去に似た事例がある場合は、参考にしながら方針を立てられます。しかし初めてのケースであれば、過去を振り返っても方針や判断基準は見つかりません。
OODAループはこれまでにないトラブルが起こったときや、環境が大きく変わったときに向いている手法です。『今何が起こっているか』を観察し意思決定に生かすため、個別の状況に最適な対応を取りやすくなります。
日ごろから習慣的にOODAループを取り入れていれば、遭遇したことのない状況にも臨機応変に対応できるスキルが身に付くでしょう。
OODAループの4プロセス
OODAループは4プロセスで構成されています。それぞれのプロセスでは具体的に何をするのでしょうか。同業他社が提供する新サービスについて知ったときの意思決定を例に、各プロセスの内容とポイントを見ていきましょう。
観察「Observe」
OODAループのスタート地点は観察と現状把握です。自社がいる業界の動向はもちろん、他業界や社会全体の動きにも注目します。注意深く全体を観察し、今後を予測できるような動きへ敏感に反応することが重要です。
幅広く観察する中で、同業他社がリリースする新サービスについての情報が見つかったとします。新サービスはどのような特徴があり、そのサービスの誕生により市場はどのように変化していくと考えられるでしょうか。状況判断に用いる材料を集めるためには、観察が欠かせません。
状況判断「Orient」
次は、幅広く集めた情報を用いて状況判断をする段階です。例えば、同業他社の新サービスがリリースされると分かり、自社のシェアが縮小しそうだと仮説を立てたとします。シェアの縮小は利益につながる重要課題なので、何らかの対策が必要だと判断できるでしょう。
このステップは『理解する』という言葉で説明されることもあります。個々のメンバーが持つ理解の仕方は、これまでの経験や学びによって獲得してきたもののため、全員が同じではありません。
人は自らの経験や知識から得たひらめき(直感)も生かしつつ、状況を判断します。同じシーンに直面したとしても、違う経験をしてきたAさんとBさんでは、状況判断の仕方が異なるでしょう。
意思決定「Decide」
十分な情報を集めて仮説を立てたら、どのように行動するか意思決定をしましょう。いくつかの仮説の中から効果的なものをピックアップします。
同業他社がリリースするサービスに対し、対抗できる自社サービスの強化や新サービスの開発など、どの選択肢が最適かはライバルや市場・自社の状況によって違うでしょう。
例えば、自社サービスの強化では競合他社に後れを取ると判断したなら、新サービスで新しい顧客を獲得する方針に決定します。
実行「Act」
意思決定した内容は、定めた期間内に実行に移します。実行した後にうまく成果が上がらないケースもあるため、結果に基づき次のループを実行する流れです。
競合他社の新サービスに自社も新サービスで対抗することにしても、予期せぬトラブルがあって企画段階で頓挫するかもしれません。サービスをリリースできたとしても、市場調査を基にした予想ほどは顧客を獲得できない可能性もあります。
意思決定を行動に反映させれば、成功・失敗どちらにしても何らかの結果は出ます。そこで出てきた課題を解決するため、OODAのループを繰り返し目標達成を目指しましょう。