DIME MAGAZINE
近年、注目されている副業。だが、その副業の世界で「地方」がキーワードになりつつあることをご存じだろうか？ リモートワークの普及により都会で得たスキルや経験を地方で生かす「逆出稼ぎ」ともいえる副業スタイルが定着しつつある。
求人掲載数（スキル別）みらいワークス社 Skill Shift資料より
マーケティングや販促などの需要が高い。これはECに取り組む地方企業が増えていることも一因だという。
コロナ禍によって地方企業が身近に
2020年からのコロナ禍によって大きく変わった日本のビジネスシーンで「副業」と「地方」が注目されている。
コロナ禍以前から注目されていたのが副業だが、在宅勤務やリモートワークが普及したことで働く場所という制約から解放された。
その変化は、都市部の大企業だけではなく、地方の企業にも及んでいる。離れた場所にいる人材と仕事をすることが可能になり、それまで関わりを持つことが難しかった大都市部の人材と、リモートで仕事ができるようになったからだ。
その結果、東京などの大都市に住んで仕事をしつつ、スキ間時間を利用して地方企業とリモートで副業をする「地方リモート副業」のスタイルが定着しつつある。地方の企業と仕事をすることで経験値を増やせ、キャリアアップを図れるだけでなく、地方貢献などやりがいの面でも魅力は多い。また、地方企業にとっても、低コストで大都市部の専門人材の力を借りられるとあってメリットが大きい。
地方への移住転職、東京への一極集中是正につながる可能性もあり、自治体や地方金融機関も積極的に支援している。今、最も新しい働き方の魅力を探ってみた。
地方副業の探し方
1. 仲介サイトで自分のスキルに合った仕事を探す
リモートワークをしてくれる人材を求める地方企業と、人材とをつなぐ仲介サイトがいくつもある。まずはアクセス！
地方企業とのリモートワークを仲介。旅館のPRなど興味深い案件が揃っている。2500〜5000円程度の時給設定の案件が多い。
「副業正社員」という形で地方企業とのリモート副業を紹介。案件数の多さが魅力だ。謝礼は月額3～5万円程度が多い。
2. 応募＆面談
おもしろそうな案件があれば、Webから応募。ただし、ほとんどのケースではほかにも応募者がいるためコンペになる。
3. 契約後に業務開始
地方企業側に選ばれ、契約を結んだら業務開始。能力を存分に発揮しよう。もちろん、ほとんどの業務はリモートでOK。
逆出稼ぎワーカーのREALVOICE【FILE 1】
小寺宏和さん
東京都在住。大手化学会社でマーケティングの仕事をしている。地方の行く末を気にしていたところ、ひょんなことから「Skill Shift」でこの案件に出会った。
副業先／富山県のタクシー会社
業務内容
当初はマーケティングの手伝いだったが、今は業務全般のアドバイスもしている。「社長さんと気が合ったのも大きかったです」
報酬／月額4万円→2万円（現在）
地方ならではのスピード感は本業にない魅力
小寺さんが地方副業を始めたきっかけは海外駐在だった。「海外のすばらしさを堪能できたのですが、翻って、日本の地方はどうなんだろう？ と思ってしまったんです。魅力ある資源は多いのに生かせていない」。その頃、Skill Shiftで、人口減の課題を抱える富山県の「福光タクシー」がマーケティング人材を求めていることを知った。「本業でのマーケティングとは全く違いますが、『知ってもらう』『魅力を伝える』という本質は同じ。違和感はありませんでした」。業務は2週間に1回程度のオンラインミーティングとリサーチで、週10時間程度。現地に行くこともある。「企業規模が小さい分スピード感があって、様々な経験ができる。本業にとってもプラスです」
〈ココがポイント〉仕事の全体に関われる。「自ら企画した外国人観光客の送迎から和菓子作り体験まで同行できたのは楽しかったですね」
〈ココに注意！〉現地への往復は自腹のことも。また、コロナ禍以降は企業への配慮から自ら報酬を減らした。だが、得られる経験を考えると余裕の黒字？
もともとは外国人観光客の呼び込みなどが仕事だったが、信頼を得て業務内容が広がり、今はHPのディレクションなども手がけるようになった。あか抜けたHPの仕掛け人は小寺さんだ。
逆出稼ぎワーカーのREALVOICE【FILE 2】
宮腰康弘さん
千葉県在住。人材系企業でシステム開発の仕事に従事。本業で見聞きした人材開発の知見を生かせる副業を探した。
副業先／北海道のハウスメーカー
業務内容
帯広にあるハウスメーカーで人事制度の構築を支援。稼働時間は、週1回のオンラインミーティングと個人作業で週10時間ほど。
報酬／時給3000円
20年間培ってきた経験で腕試し！
宮腰さんの本業は人材系企業だが、仕事の内容は人事システムの導入。もともとSEだった宮腰さんはずっとエンジニア畑を歩んできた。「ところが本業で、システム担当の僕もお客さんから人事制度についても相談を受けることが増えてきたんです。だから、人事のコンサルティング経験も積みたいなと」。そんな宮腰さんがたまたまJOINSで見つけたのが、北海道は帯広市のハウスメーカーの人事評価制度を構築する案件だった。
「もともと『地方企業と仕事がしたい』という気持ちがあったわけではないのですが、実は北海道大学の出身という縁もあり、面接で社長と盛り上がったのも採用の決め手だったと後で聞きました」。こうして始まったリモート副業は大成功。今は人事制度の構築のみならず、運用までアドバイスするようになっている。
「システム開発を通じて蓄積してきた経験が、副業という形で仕事になったんです。聞きかじった知見でも実際に現場で活用することで自分のものになる感じですね」。宮腰さんのように、本業での業務内容とは違っても、有用なスキルを持つ人は多いはずだ。自分のスキルを棚卸ししてみよう。
〈ココがポイント〉コンサルティング能力が身についた。「本業でもシステム開発以外に、お客様にコンサル的な提案もできるようになりました」
〈ココに注意！〉副業が忙しい時期は作業時間も増え、最も多い月は60時間に達したことも。ただし、時給制なのでその分収入も増える。
最新号
