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ビジネスシーンで使われる「デファクトスタンダード」ってどういう意味?

2022.09.28

ビジネスシーンでは数多くのカタカナ語が飛び交います。日本語の方が分かりやすい言葉もありますが、中にはカタカナ語でこそニュアンスが伝わる言葉もあるものです。『デファクトスタンダード』もその一つなので、正しい意味を知ってボキャブラリーを増やしましょう。

デファクトスタンダードの意味とは

まずはデファクトスタンダードの意味を解説します。言葉の表す内容をしっかり確認して、会話の中で自由に使えるようになりましょう。

「事実上の標準」を表す

デファクトスタンダードとは、国際機関や標準化団体などから認められた規格ではなく、企業間の競争により定着した標準的な規格です。市場競争の結果として定まっていくのが特徴で、『de facto』はラテン語で『事実上の』を意味します。

新しく興った市場では、それぞれに異なる特徴を持つ規格がひしめきがちです。市場で競争が繰り返され、やがて一つの有力な規格が優位に立ち、業界の標準的な規格として認識されます。これがデファクトスタンダードです。

事実上の標準が成立している市場では、その規格に準拠した製品や高い互換性を持つ製品が多くを占めるようになります。

技術的に優れたものがなるとは限らない

技術的に優れた規格が、必ずしもデファクトスタンダードになるわけではない点に注意が必要です。技術競争の結果だけではなく、市場で多くのシェアを獲得してデファクトスタンダードとなった例に『VHS』があります。

家庭用ビデオテープレコーダーの規格であるVHSとベータマックスは、業界の標準を争っていました。当初は画質やサイズ面で優位性を誇っていたベータマックスが、事実上の標準となるのではないかと予想されます。

しかしVHSを開発するビクターは、VHSの技術を他社に公開して企業連携を図り、シェアを伸ばしていきます。結果的にVHSの生産台数がベータマックスを超え、VHSがデファクトスタンダードをさらいました。

デファクトスタンダードの関連語

DVD

(出典) photo-ac.com

関連する用語の知識を身に付ければ、言葉への理解がより深くなるでしょう。デファクトスタンダードとともに覚えておきたい言葉を紹介します。

デジュールスタンダード

デジュールスタンダードとは、公的機関が定めた標準規格です。『de jure』とは、ラテン語で『法律上の』という意味を持ちます。デジュールスタンダードが決まるまでには、『制定』『適用』『評価』『見直し』『改定』というプロセスを踏むのが一般的です。

プロセスを幾度も繰り返し、一つの規格を制定していきます。

デジュールスタンダードの代表例が乾電池です。乾電池は公的機関によって大きさや種類が決められています。どのメーカーの乾電池を使用しても問題なく電化製品が動くのは、デジュールスタンダードが機能しているからです。

フォーラムスタンダード

フォーラムスタンダードとは、技術の事業化を目指す企業が集まる業界団体(フォーラム)によって制定される規格です。複数の企業や国、その技術に対して強い影響力を持つ専門家による提案や検討を受け、合意の下に承認されます。

企業間の競争の結果として誕生するデファクトスタンダードとは、真逆の発想といえるでしょう。フォーラムスタンダードの代表例がDVDです。規格がフォーラムスタンダードで決められているため、DVDプレーヤーのメーカーを問わず再生できます。

IT業界では、フォーラムスタンダードとして制定された規格が市場に行き渡ってデファクトスタンダードとなり、さらに標準化機関によってデジュールスタンダードとして承認されるケースも少なくありません。

デファクトスタンダードを獲得するメリット

資料をチェックしながら計算する

(出典) photo-ac.com

デファクトスタンダードを獲得した企業には、さまざまなメリットがもたらされます。得られるメリットが大きいからこそ、多くの企業は自社の推す規格を事実上の標準として認めてもらおうと努力するのです。

安定した利益を生み出せる

デファクトスタンダードを獲得すると、企業利益の安定化が見込めます。事実上の標準を獲得した商品は、市場で大きな存在感を持つでしょう。目立つものは自然と消費者に選ばれる確率が上がるため、安定した収益を生み出せます。

他社の規格や製品が参入しづらくなる点も、デファクトスタンダードが安定した利益を生み出す理由です。一度自社の規格が事実上の標準になれば、異なる規格を採用した製品が台頭しづらくなります。

自社の製品で独占に近い状態を作り出せれば、価格を自由に設定できるので、さらに利益が安定しやすくなるでしょう。

パテント料が得られる

パテント料とは、特許を使用する際に対価として支払うライセンス料やロイヤリティーです。特許を取得した技術が事実上の標準と認められれば、パテント料を得て収益を上げられる可能性が広がります。

デファクトスタンダードが存在する市場に参入するに当たり、事実上の標準にのっとっていなければ売上を上げるのは困難です。多くの企業が事実上の標準に準拠した製品を作る技術を使うために、パテント料を支払うこととなるでしょう。

事実上の標準に関わる技術の全てをオープンにしない企業もあります。技術の核心部分を秘密にした上で特許として出願し、オープンにした技術は競合他社に積極的に使わせるのです。市場全体の拡大を図りながら自社の利益獲得も怠らない、巧妙な戦略といえるでしょう。

広告にかかるコストを削減できる

コスト削減を実現できるのも、自社の製品が市場でデファクトスタンダードとなるメリットです。自社の規格が事実上の標準として認知されると、製品が消費者や取引先に周知されます。特別なマーケティング施策を講じなくても、自社製品の存在を広められます。

事実上の標準の座を勝ち取るためには、技術のブラッシュアップだけでなく、マーケティング活動や普及活動が欠かせません。成功を収めるまでには相応のコストと時間がかかるでしょう。

それでも企業がデファクトスタンダードを獲得しようと努力するのは、事実上の標準として認められることで削減できる、将来のコストが大きいためといえます。

デファクトスタンダードを獲得するデメリット

契約書をチェックする

(出典) photo-ac.com

製品がデファクトスタンダードとなれば、開発・販売した企業にはメリットしかないように思われがちです。しかし、自社の規格が事実上の標準と認められたからこそ被るデメリットもあります。

市場の独占を批判される可能性がある

自社の展開する規格が市場で絶対的優位な立場になると、『市場を独占している』と捉えられ、競合他社や消費者、マスコミから批判を受ける可能性があります。

生まれる利益を総取りするような振る舞いをすると、提供する商品がすばらしくても『私利私欲しか考えていない企業』として批判を受けるでしょう。場合によっては、独占禁止法に抵触しているとして訴えられる場合もあります。

デファクトスタンダードの獲得により訴えられた企業の例に『Google』があります。Googleはインターネット検索や広告の市場を独占しているとして、米国の反トラスト法(日本における独占禁止法)違反容疑で提訴されました。

参考:
独占禁止法の概要:公正取引委員会
米司法省、反トラスト法違反を理由にグーグルを提訴(米国) | ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース – ジェトロ

消費者にデメリットが生じる場合も

一つの企業の製品がデファクトスタンダードとなることで、消費者に不利益を与えてしまう可能性もあります。技術的に優位な規格が事実上の標準を獲得するわけではないためです。

デファクトスタンダードが確立されている市場では、消費者にとって有益な機能を持っている規格が登場しても、『事実上の標準ではないから』という理由で選択肢からこぼれ落ちます。消費者に有用なはずの商品が選ばれにくい環境を、デファクトスタンダードが作ってしまう可能性があるのです。

健全な市場の形成には、豊富な選択肢が欠かせません。デファクトスタンダードを獲得した企業にも、消費者が自分のニーズに合った商品を選べる環境を残す配慮が求められます。

著作権や特許権の侵害への対応が求められる

業界におけるデファクトスタンダードを勝ち取った企業は、権利を侵害してくる企業への対応が不可欠になります。多くの企業がその規格にのっとった製品を作るようになるでしょう。中には著作権や特許権を侵害した模倣品を販売し、利益をかすめ取ろうとする企業も現れます。

模倣によって利益を得ようとする企業を野放しにすれば、本来得られるはずだった利益をみすみす逃す事態になりかねません。自社の規格の優位性を守るには、著作権侵害や特許権侵害といったトラブルが起こったとき、個別に対応していくためのコストがかかります。

デファクトスタンダードの具体例

キーボード

(出典) photo-ac.com

デファクトスタンダードの具体例を紹介します。どのような規格がデファクトスタンダードとして世の中に浸透しているかを知れば、言葉への理解が進むでしょう。

Windows OS

パソコン向けOSのデファクトスタンダードが『Windows OS』です。事実上の標準が定まっていなかった当時、パソコンのOSは各企業がそれぞれの規格にのっとって製造・販売していました。

数々のOSが乱立する中、Windowsは始めからデファクトスタンダードとして有力だったわけではありません。先行して販売されていた『MacOS』の方が優れているという評価もありました。

その中でWindowsが事実上の標準と認められた裏には、パソコンやCPUを製造するメーカーとの連携が挙げられます。Windowsは他の企業と協力して徐々にシェアを拡大させ、デファクトスタンダードとして認められる存在になったのです。

キーボードのQWERTY配列

キーボードのキー配列も、デファクトスタンダードの一つです。キーボードの『QWERTY配列』は、タイプライターを快適に使用するために考え出されました。

タイプライターを打つときにタイピングスピードが速くなりすぎると、印字ヘッドが交差して不具合が生じます。タイピングスピードを抑え、スムーズにタイプするための方策として考え出されたのがQWERTY配列でした。

ただ、QWERTY配列はパソコンのキーボードに採用しても何のメリットもありません。QWERTY配列の弱点を補うキー配列は数多く考え出されましたが、QWERTY配列が世の中に浸透しきっているため、どれも定着には至りませんでした。

検索エンジンとしてのGoogle

検索エンジンのデファクトスタンダードがGoogleです。検索エンジンとは、入力したキーワードに合わせてユーザーが欲していると思われる情報を探し出してくるシステムです。Google以外では『Yahoo!』や『Bing』などが検索エンジンに当たります。

Googleは2021年時点で、全世界で約91%、日本で約75%と高いシェアを誇っています。インターネット検索を『ググる』と表現することからも分かるように、『検索エンジン= Google』とも捉えられているほどです。

インターネットが普及し始めて間もない頃は、さまざまな検索エンジンが存在し、ポータルサイトとしてサービスを展開していました。その中でGoogleは、検索結果の正確性から人気を集め、瞬く間に高いシェアを築き上げていったのです。

参考:
Search Engine Market Share Worldwide | Statcounter Global Stats
Desktop Search Engine Market Share Japan | Statcounter Global Stats

構成/編集部

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