ビジネスシーンでは、課題という意味合いで『イシュー』がよく使われるようになりました。ただ、正しくニュアンスを捉えられていない人もいるでしょう。言葉の意味からビジネスでイシューを明らかにするメリット、イシューの見極め方まで基本を解説します。
「イシュー」の意味とは
イシューとは、『課題』『問題』『論争点』などを意味する英単語『issue』からきたビジネス用語です。会議の中で耳にして、具体的に何を指すのか分からなかった経験はありませんか?まずは言葉の意味を正しく把握しましょう。
長期的に取り組んでいく課題のこと
ビジネスシーンで、長期的に解決すべき重要な課題や問題を指す言葉が『イシュー』です。イシューの設定が複数ある場合は優先順位が付けられ、最も重要度の高いイシューは『クリティカルイシュー』といわれます。
イシューと混同されがちな言葉が『プロブレム』です。プロブレムが現時点で解決しなければならない問題を指すのに対し、イシューは未来に向けて取り組むべき課題を表します。
イシューとして設定する課題には、『長期的でポジティブな内容が多い』傾向があります。例えば、低迷している売上に対して課題を話し合い、改善策を出して取り組んでいくといった解決によって、よい方向に向かうのがイシューです。
イシューを洗い出すメリット
解決すべき課題や議論すべき内容を見つけ出す作業が『イシューの洗い出し』です。ビジネスシーンにおいて、イシューを洗い出すことにどのようなメリットがあるのでしょうか?
解決すべき課題を見極められる
課題を設定する前にイシューの洗い出しをすることで、目標を達成するための本質的な課題を明確できるメリットがあります。ビジネスでは、売上の拡大や利益の向上といった業務の目標が設定されています。
目標を達成するために障害となっている課題を見つけて、解決に取り組むことはビジネスにおいて重要です。ただ、そもそも『課題の設定自体が間違っている』ケースも少なくありません。
万が一、設定した課題自体が間違っていると、目標を達成できないだけでなく、そのために立てた戦略・投入した費用が全て無駄になってしまうリスクがあります。
このようなリスクを回避するために重要になるのが、イシューです。イシューを設定すると、根本的な原因の特定や適切な解決策が見つけやすくなります。また、議論での目的が明確になるため、目標を達成するためのスタート地点を明確にできます。
議論がスムーズに進む
複数人で特定の課題について議論を進めていると、いつの間にか話がそれてしまうケースがあるでしょう。何の課題を解決するための議論だったのかが分からなくなり、時間を浪費してしまうことも珍しくありません。
会議の目的を明確にし、無駄をなくすために有効なのがイシューの洗い出しです。会議を始める前に最終的な目的のすり合わせができていれば、仮に議論の途中で話がそれたとしても、話を本題に戻しやすくなります。
会議の前にイシューを洗い出して、議論の前に参加者全員に共有しておくことが肝要です。結果として、課題の解決に向けて的確で効率的な議論を進められます。時間短縮にもつながり、生産性の向上が期待できるでしょう。
深掘りで新しいアイデアが生まれる
新しい製品やサービスに関するアイデアを求められたとき、ビジネスシーンでは成功につながる提案・指摘が必要になります。的を射た意見を提示するため必要になるのが、イシューの深堀りです。
例えば「顧客企業の満足度を高められるような新サービスを作る」というイシューがある場合、まず顧客の売上だけでなく市場の変化をはじめとした環境についても調査しておきます。背景を把握しておくと、顧客のニーズをつかんだサービスや商品のアイデアを出しやすくなるのです。
イシューを深堀りする参考となるのが、電通報(株式会社電通のビジネス情報サイト)内で提唱されている『CORE IDEA』です。過去にあったイシュー起点のコミュニケーションを大きく8種類のアプローチに分類しています。
「C Clarify(可視化する)
O Open(開放する)
R Replace(置換する)
E Expand(拡張する)
I Invert(逆転する)
D Disagree(対立する)
E Entrust(代弁する)
A Align(協調する)」
※引用:ソーシャルイシューをアイデアに変換する8つのアプローチ|ウェブ電通報
これらの要素を考えながらイシューを深掘りすることで、顧客に寄り添ったアイディアにつなげられる可能性が高まるでしょう。
イシューの見極め方
業務を効率化して生産性を高めるためには、できるだけ少ない労力と時間で多くのアウトプットを生み出す必要があります。正確にイシューを見極めて優先順位を付け、間違った課題設定や論点の逸脱といった無駄な動きを減らす取り組みが不可欠です。
ビジネスシーンにおいてイシューを見極めるには、どうすればよいのか確認しておきましょう。
具体的な仮説を立てる
イシューを見極めるには、いくつかの具体的な仮説を立てることが重要です。例えば『組織の売上が低い』という課題に対する施策として、とりあえず営業力を強化してみたとします。しかし、実際は商品の品質が原因だった場合、課題は解決されません。
『売上が低い原因は何か?』というイシューに対しては、営業力や製品の品質・付加価値などさまざまな角度から具体的な仮説を立てた後に施策に取り組むことが大切です。
また、仮説が具体的かどうかを見極める判断材料の一つが『言語化できていること』です。うまく説明ができない場合、イシューの洗い出しや仮説の立て方ができていない可能性があります。時間はかかるかもしれませんが、本質へたどり着くために再度検討する必要があるでしょう。
イシューツリーを活用する
イシューの見極めを効率化したいなら、『イシューツリー』を活用しましょう。イシューツリーとは、課題の全体像を可視化してツリー状に整理したものです。
まずは把握しているイシューをリストアップしていき、それぞれのイシューについて関連性や重要度を決めます。明確になっていないものについては、具体的に深掘りしていくことで課題が顕在化することもあるでしょう。
その後、細かいイシューは取り除き、ツリー状に整理した状態で考えるべき課題を洗い出していく流れです。
イシューツリーと似ているものに『ホワイツリー』もあります。ホワイツリーは、ある課題を起点にして『Why(なぜ)』と回答を繰り返していく方法です。こちらも原因を深掘りし、ツリー状に可視化します。
緊急性の高い課題は「プロブレム」に
直ちに解決しないとネガティブな結果につながる問題は、イシューではなく『プロブレム』として扱いましょう。本来プロブレムとして取り扱うべき問題をイシューとして取り扱うと、問題解決までに時間がかかり状況が悪化する可能性が高くなってしまいます。
イシューには、比較的時間をかけて解決していく課題を設定するのが基本です。緊急性に応じてプロブレムと使い分け、そのときに取り組むべき行動を明らかにしましょう。
構成/編集部