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マーケッターならおさえておきたい「キャズム」の基礎知識

2022.08.29

マーケターとして仕事をしていれば『キャズム』という言葉に出会うはずです。キャズムはマーケターが仕事をする上で、必須の考え方といえます。キャズムという言葉の意味から押さえておきたい対策、事例まで紹介します。

キャズムの理解に必要な予備知識

『キャズム』という言葉の意味を捉えるには、前提となる考え方『イノベーター理論』の知識が欠かせません。土台となる考え方をしっかり身に付けておけば、キャズムへの理解も進むでしょう。

イノベーター理論とは

イノベーション理論とは『新しい商品やサービスが市場に普及していく様』を表す考え方です。スタンフォード大学の社会学者が1962年に刊行した著書『イノベーションの普及学』の中で提唱されました。

イノベーター理論では、商品やサービスが普及していく過程を商品やサービスを消費者が受容する姿勢から、5種類のグループに分けて分析します。

マーケティング施策を考える際には、この理論を踏まえた上で戦略を立てたり、商品やサービスのライフサイクルを検討したりする必要があるとされます。

イノベーションの普及 | エベレット・ロジャーズ, Everett M.Rogers, 三藤 利雄 |本 | 通販 | Amazon

イノベーター理論における5種類のタイプ

イノベーター理論の特徴は、消費者を『イノベーター』『アーリーアダプター』『アーリーマジョリティー』『レイトマジョリティー』『ラガード』の5種類にタイプ分けし、この順番にイノベーションが普及していくと説いた点です。

イノベーターは新しいものをエネルギッシュに取り入れる層で、市場における割合は2.5%とされます。アーリーアダプターは、流行しそうなものを積極的に取り入れる層です。他者に対する発信力を持ち合わせていて、市場全体の13.5%を占めます。

市場全体の34%にも上るアーリーマジョリティーは、新しいものに興味はあるものの、慎重さも忘れないタイプです。目新しさだけでは購入に至らないという特徴を持っています。

レイトマジョリティーは新しいものに対して懐疑的な層です。多くの人が試してよかったものを取り入れるタイプで、市場全体における割合は34%とされます。ラガードは最も保守的で、伝統的なものを好む傾向が強い層です。市場全体の16%を占めるとされます。

キャズムの意味するところ

分析作業をする2人

(出典) unsplash.com

理解の前提となる理論をインプットしたら、続いてキャズムの意味を詳しく見ていきましょう。言葉の意味を理解できれば、会議や同僚との会話で自由に使えるようになります。

キャズムとキャズム理論

キャズム(chasm)とは『深い溝や谷』、もしくは意見や感情の『隔たり』『食い違い』を意味する英語です。マーケティング用語としては、『新しい商品が市場に受け入れられるまでに越えなくてはならない溝』を指します。

この概念は、ジェフリー・ムーア氏が1991年に出版した著書『キャズム』の中で提唱しました。キャズムに関する考え方を総称して『キャズム理論』という場合もあります。

本書で越えなくてはならない溝が発生するとされるのは、アーリーアダプターとアーリーマジョリティーの間です。両者の間に横たわる溝を越えられなければ、新しい商品やサービスはやがて忘れ去られ、市場から退場する結果となるでしょう。

キャズム Ver.2 増補改訂版 新商品をブレイクさせる「超」マーケティング理論 | ジェフリー・ムーア, 川又 政治 | ビジネス・経済 | Kindleストア | Amazon

キャズム理論とイノベーター理論の違い

キャズム理論とイノベーター理論の相違点は、マーケティングにおいてどの層に重きを置いているかという点です。

イノベーター理論では、『イノベーター』と『アーリーアダプター』を攻略するのが普及の鍵としました。特にアーリーアダプターは、出会った商品やサービスのよさを自ら発信してくれるため、アーリーアダプターへのアプローチが市場への普及を促す上で重要としています。

一方、キャズム理論の特徴は『アーリーマジョリティー』へのアプローチが重要だと説いている点です。アーリーアダプターに普及したからといって、アーリーマジョリティー以降の消費者にその勢いを届けるのは簡単ではないと論じました。

キャズムが生まれる原因

分析のイメージ

(出典) pexels.com

イノベーションが市場に受け入れられるまでに、なぜ越えなくてならない溝が生まれるのでしょうか。キャズムが生まれる原因を知り、重要なマーケティング用語への理解を深めましょう。

新しい商品やサービスに求めるものの違い

越えなくてはならない溝が生まれる原因は、アーリーアダプターとアーリーマジョリティーの価値観の差にあります。アーリーアダプターは新しいものに敏感で、自ら情報を収集し、新しい流行を察知して行動します。

一方のアーリーマジョリティーは、新しいものにある程度敏感ではあるものの、『イノベーションを導入して本当に損はないか』という視点を忘れません。

目新しさだけにとらわれず、実績や具体的な効果・イノベーションの導入により損害を受けるリスクも考慮した上で、購入するか否かを決めます。

両者のニーズが異なるため、アーリーアダプターに響いたアプローチがアーリーマジョリティーには届かないという事態が起きてしまうのです。

キャズムを乗り越えるためにできること

打ち合わせをしている人の手元

(出典) pexels.com

越えなくてはならない溝を飛び越え、イノベーションをアーリーマジョリティー以降の人にも届けるには工夫が必要です。広がる溝を乗り越えるために必要な、マーケティングのヒントを紹介します。

イノベーションの現在位置を把握する

自社の商品やサービスがイノベーター理論のどこに位置しているのかを把握しなければ、適切なマーケティング施策を打ち出せません。

初期段階(イノベーターやアーリーアダプターがメインの市場)かアーリーマジョリティーやレイトマジョリティーなどが中心のメインストリーム市場かによって、選択すべきマーケティング施策が異なります。

アーリーアダプターを攻略し終わり、アーリーマジョリティーにアプローチする段階に入っていると分析したなら、両者の間に横たわる溝を意識したマーケティング戦略が必要です。

現在地を把握する際は、イノベーター理論に基づいて考察するのがポイントです。現在位置を正しく理解した上で戦略を立てれば、スムーズに次の段階へ移行できるでしょう。

狭い市場から開拓する

キャズムを攻略する鍵は『ボーリングレーン』であるといわれます。ボーリングレーンとは市場を細分化し、狭く定義された市場を狙い撃ちして攻略し、その勢いのまま他の市場を開拓していく方法です。ある程度の時間はかかるものの、着実にキャズムを越えていける施策とされます。

狭い市場の中で実績を積み重ねれば、他の市場にいるアーリーマジョリティーの意識に『イノベーション導入への安心感』が生まれ、他の市場での普及が進みます。

ボーリングレーン戦略を実行するポイントは、どの市場を最初に狙うかという点です。顕著なニーズを持っている市場をターゲットにすると、キャズムを越えやすくなります。

アーリーマジョリティーを意識してアプローチする

キャズムを越えるには、アーリーマジョリティに響くマーケティング戦略を考える取り組みが必要です。アーリーマジョリティーへのアプローチが効果的に進めば、キャズムを乗り越えやすくなります。

アーリーマジョリティーを意識したマーケティング戦略のポイントは、導入に対するリスクを最小限に抑えることです。

アーリーマジョリティーは、安心感のある商品やサービスを取り入れたいと考えています。導入により損をするリスクを抑えた上で、安心感を効率的にアピールできれば、アーリーマジョリティーに積極的な購買行動を取ってもらえるはずです。

ユーザビリティの向上を図る

ユーザビリティとは『使いやすさ』を表す言葉です。ユーザビリティが向上すると、先端技術に不慣れな市場にも効率的にアピールできます。

イノベーターやアーリーアダプターには最新技術に明るい人が多く、新しい商品やサービスでも難なく使いこなせてしまいます。しかしアーリーマジョリティー以降の人は、そこまで器用に最先端の技術を使いこなせるとは限りません。

ユーザビリティの低い商品やサービスだと、使いにくさを感じて敬遠されるケースが出てくるでしょう。ユーザビリティを高めてアーリーマジョリティー以降の人たちでも使いやすいようにアップデートすれば、キャズムを乗り越えられる可能性が高まります。

インフルエンサーを活用する

信頼度の高いインフルエンサーをマーケティングに活用するのも、キャズムを乗り越える方法として有効です。アーリーマジョリティーが抱く『イノベーションの導入に対する不安』を和らげる効果が期待できます。

インフルエンサーに影響を受けてイノベーションを導入した一部のアーリーマジョリティーから普及が進めば、着実にキャズムを乗り越えられるでしょう。

特に若者をターゲットにした商品やサービスのマーケティングには、インフルエンサーの活用が効果的です。若者層には、インフルエンサーが推薦している商品を参考に消費行動を起こす人が一定数存在します。

キャズムを越えて成功した事例

資料に記入するスーツの男性

(出典) pexels.com

具体的な事例を確認すれば、キャズムへの理解が一層深まるでしょう。キャズムを乗り越えて成功を収めた企業の事例を三つ紹介します。

ネスレ日本

ネスレ日本が2012年9月より展開しているマーケティング手法が『ネスカフェ アンバサダー』です。2009年に販売をスタートしたコーヒーマシン『ネスカフェ ゴールドブレンド バリスタ』をPRするために考え出されました。

ネスカフェ アンバサダーでは『アンバサダー』と呼ばれる、宣伝大使のようなポジションの人を募集し、職場でコーヒーマシンを無料で使える特典を与えました。

PRの目新しさと無料でコーヒーマシンを使えるメリットの大きさが功を奏し、ネスカフェ アンバサダーは大成功を収めます。コーヒー豆の代金のみで上質なコーヒーを体験できたアンバサダーたちの口コミにより、商品が広がり続けてキャズムを乗り越えるに至りました。

参考:ネスカフェ アンバサダー募集 | 【公式】 ネスレ通販オンラインショップ

セールスフォース

セールスフォース(旧:セールスフォースドットコム)は、アメリカに本社を置くIT企業です。顧客関係管理ソリューションに関するクラウドサービスを提供しています。

セールスフォースは自社のサービスを普及させるため、営業担当者とアメリカ企業にのみアプローチするマーケティング戦略を選択し、キャズムを乗り越えました。アプローチを営業部門に絞ったのは、部門間の意見の相違を回避して積極的に自社製品を導入してもらうためです。

また、アメリカでは転職するのが一般的なので、セールスフォースのよさを知ってくれた営業担当者が他社に移れば、その人がインフルエンサーとなって自社製品のよさを広めてくれると考えました。

メルカリ

スマホ1台で不用品を売り買いできるフリマアプリとして多くの人に愛されているのが、メルカリです。

アプリのリリース当初からユーザビリティの向上に尽力し、ユーザーが使いやすいプラットフォームを目指して改善を重ねてきました。アーリーマジョリティー以降の人が求める使い勝手のよさを実装し、キャズムを乗り越えるための土壌を整えていきます。

アプリのダウンロード数が200万を超えたタイミングで大々的にCMを展開し、全国的な知名度を一気に上昇させます。CMを展開することでアーリーマジョリティーにアプローチできる信頼感を手に入れ、キャズムを乗り越えるに至りました。

構成/編集部

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