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インド出身の亀田製菓ジュネジャ・レカ・ラジュCEOが目指す新しい「食」ビジネスの形

2022.08.07

筆者は、数年前からビジネス界におけるインド人リーダーの活躍に注目してきた。その活躍の場も今ではIT分野以外に広がり、英語圏以外の国でも能力の高さや視野の広さが評価されつつある。特に日本における象徴的な出来事は、今年4月に米菓のトップメーカーである亀田製菓株式会社の代表取締役会長 兼CEOに、ジュネジャ・レカ・ラジュ氏が就任したことだ。「企業が大きく変革するなかで、異文化、異分野の経験を生かせる」と考え、行動してきた同氏のビジョンを、去る7月25日に開かれたオンラインセミナー「Action WITH INDIA 日本にはインドが必要だ」(主催:ムーンリンク株式会社、後援:駐日インド大使館、日本貿易振興機構(JETRO)、公益財団法人日印協会、民間外交推進協会(FEC))での講演から紹介する。

インド大使も期待する日本とインドのパートナーシップ

Microsoft、Adobe、IBM、そしてGoogleの親会社であるAlphabet。現在、これらの大手IT企業は、すべてインド出身のCEOによって率いられている。また、クレジットカード大手のMastercardや、著名アパレルブランドGapの経営もインド人のリーダーシップの下に行われており、スナック食品・飲料で知られるPepsiCoの前CEOもインド出身者であった。

歴史的に見ると、インド人が海外での就職を考える場合、英語が通じるなどの理由からアメリカやイギリスが候補に上がることが多い。実際にも法務省の在留外国人統計によると、2021年6月末時点で在日インド人は36,777人。家族としての滞在者を除くと、技術・人文知識・国際業務分野の職に就いている人が8,211人で最も多数を占めるものの、依然、絶対数としては少ないといえる。

一方で、インドは人口の52%が29歳以下という若い力に満ちた国であることや、日本に対して技術的に優れた安全な国というイメージを持っている点を考えると、両国の交流はもっと盛んに行われても不思議ではなく、また、行われるべきである。

インドは、2023年度までにGDP5兆ドル(約675兆円)を達成することを目標とし、コロナ禍においても着実な経済発展を遂げてきた。

特にスタートアップ企業のエコシステムに関しては世界で最も急速な成長を見せており、数週間ごとにユニコーン企業(企業価値10億ドル以上のスタートアップ)が誕生し、先頃、ユニコーン100社達成のマイルストーンを迎えたという。こうした動きを支援する政府の「スタートアップ・インディア」のイニシアチブは、インドを世界の生産拠点としていくための「メイク・イン・インディア」などと共に、インドの若者のビジネスマインドを後押ししている。

これらの背景もあり、ジュネジャ氏に先立って講演された駐日インド特命全権大使のサンジェイ・クマール・ヴァルマ氏は、共に民主主義を重んじるインドと日本が、人々の相互信頼や自由、法律を尊重するという共通の価値観に基づいて、二国間の貿易、投資、能力開発が一層活発化することへの抱負を述べ、より緊密なパートナーシップを築いていくことに期待を寄せた。

駐日インド特命全権大使のサンジェイ・クマール・ヴァルマ氏

生物・化学畑からロート製薬を経て亀田製菓へ

ジュネジャ氏は、1984年から大阪大学で生物・発酵工学を研究し、名古屋大学で博士号を取得したのちに1989年に太陽化学(株)に入社。2014年まで同社の副社長を務めながら、海外(インド、アメリカ、ドイツ、中国)のグループ企業の代表取締役なども歴任された。次の転職先のロート製薬(株)では取締役副社長兼CHO(最高健康責任者)に就任し、子会社で健康食品事業を手がけるアエムジーファーマ(株)の取締役社長も兼任。そして、2020年に亀田製菓(株)の取締役副社長、およびグループ企業の会長となり、2022年4月に同社取締役会長兼CEOになられたのだった。

生物・発酵工学の知識を日本企業で活かし、2022年4月に亀田製菓(株)の取締役会長兼CEOに就任したジュネジャ・レカ・ラジュ氏

インドから見た、安全で平和な国という日本のイメージに加えて、大学在学中に感じた日本人の親切さがジュネジャ氏の日本企業への就職を促し、また異文化や異分野の知見が企業を活性化するという同氏の思いが、現職につながったといえるだろう。もちろん日本語も堪能であり、「食」の字は「人」+「良」から成り「食べ物とは人にとって良いもの」であるべきと、自社の食品事業のコンセプトも漢字の成り立ちから説明する。

日本文化にも通じたジュネジャ氏は、「食」への思いを漢字の成り立ちから解き明かした

ピーナッツ入り亀田の柿の種などの製品で知られる亀田製菓は、1975年に米菓業界での売上が日本一になるなど、名実ともに米菓のトップ企業として強力なブランド力を持つ。その一方で、製品の多角化やビジネスのグローバル化にも熱心に取り組んでおり、”Better for You”のスローガンに基づいて、素材本来の栄養素を活用した美味しく健康価値のある商品の提供を、日本国内だけでなくアジアや欧米に対しても展開中だ。

米菓のトップメーカーからグローバル・フード・カンパニーへと飛躍していくスローガンとして”Better for You”を掲げる

その観点からも、単に大手企業の取締役としての実績だけでなく、農業や食品とも関連する学問を修め、自身の出自も含めてグローバルな視点からビジネス戦略を構築できるジュネジャ氏のCEO就任は、社外の人間が思うほどには意外な人選ではなかったように思える。

海外でも存在感を増すKAMEDAブランド

そんな亀田製菓の業態は、トップシェアのアルファ米に代表される長期保存食や、プラントベースミートなどの植物由来食品、急拡大中の米粉パン事業、機能性素材の国内外に販路拡大しているお米由来の乳酸菌など、地球環境にも配慮しながら人々の健康に貢献することを軸に多様化し、国内グループ会社10社と海外グループ会社8社を数えるまでに進化した。

中でもインドでは、現地バージョンの柿の種が、インド産の米と素材を使って作られており、KARI KARIという商品名でプレミアムなスナック菓子として人気を博し、ドバイなどにも輸出されている。

日本のプレミアムスナックとしてインドやドバイで人気を博しているKARI KARIブランドの柿の種

このKARI KARIという名称とも関係するが、ジュネジャ氏は日本食文化の強みの1つに「食感の追求」を挙げており、その証として、日本語には食感を含め感触を表す言葉が群を抜いて多く、445語もあることに触れた。これは2位のフランス語の227語を倍近く引き離しているだけでなく、それらの多くが擬音語である点も特徴的だ。そして、食感と味覚が密接な関係を持っていると説明した。

ジュネジャ氏は、自社の米菓事業の差別化キーワードとして、既存製品の深化(Upgrade)と次世代に向けた進化(Update)を掲げ、特に後者を「未来米菓」と呼んで、同業他社との同質化や価格競争からの脱却を進めているが、そのようなブランドや製品の独自性を磨き、KAMEDAブランドの存在感をグローバルに高めていくうえでも「食感」が大きな役割を果たしそうである。

インドの素材×日本の技術

これは筆者自身も強く感じていることだが、いかに優れた技術や製品であっても、インド市場でそのまま受け入れられるほど甘くはない。現地の文化や嗜好を尊重し、またインド自体の発展に寄与できるような取り組みが必要だ。

インド出身のジュネジャ氏も、もちろんその点をよく理解しており、KARI KARIがそうであるように、インドの素材と日本の技術を組み合わせて新たな価値を創造し、さらにそれが世界の役に立つような仕組みを作ることも重視している。

たとえば、インドやパキスタン地方で食用に供されているグァー豆は、その種子の主成分であるグァーガムが、良質な水溶性食物繊維の原料となり、特に善玉菌のエサとなりやすい高発酵性を持つことが大きな特長だ。しかし、粘度が高いため、そのままでは摂取しにくく、使いづらいところがあった。

このグァーガムを酵素の力で低粘度化した「グアーガム分解物」を作り出すことに成功し、1989年に「サンファイバー」という名前で製品化した太陽化学は、かつてジュネジャ氏が副社長を務めていた2002年、インドのムンバイに、その製造拠点となる現地法人をルシードコロイド社と共同設立し、インドと日本の二人三脚によってビジネスを成長させてきた(現在はルシードコロイド社の出資持分を買い取り、完全小会社化)。

ジュネジャ氏は、太陽化学時代にも、良質な水溶性食物繊維の原料となるグァー豆を日本の技術で摂取しやすくした製品のインドでの現地生産化に尽力された

ジュネジャ氏は、このようにインドと日本、それぞれの強みを組み合わせて相乗効果を得ることに長けており、それが亀田製菓の今後の事情展開にも活かされていくことになる。

人、イノベーション、パートナーを重視する経営

最後にジュネジャ氏は、これからの企業成長の鍵となる要素について、自らの考えを披露した。

それは、まず人を大切にして、優れた人材を育成すること。次に、現状に安住することなく、継続的なイノベーションを実現していくこと。そして、自社のみの力に頼りすぎず、他分野の強みを持つ企業とのパートナーシップを重視するということである。すでに確立している自社のブランド力をベースに、ペプシコなどのアライアンスパートナーと互いの強みを活かした相乗効果を狙い、クロスボーダーのビジネスや海外における内販ビジネスを拡大し、2030年度には売上500億円を達成する計画だ。

2030年度に売上500億円を目指す亀田製菓の海外事業展望

筆者がインドで実感した、これからのビジネスの在り方は、1)社会的なインパクトがあり、2)インクルーシブ(全員参加型)で3)スピード感をもって事にあたるというものだった。一般的な日本の組織も、SDGsの達成を目指す中で1、2の要素を意識するようになっているものの、最後のスピード感については改善の余地が大きいように思う。しかし、インドと日本、双方の知見を備えたジュネジャ氏は、これらすべてのポイントを押さえつつ、亀田製菓の国内外のビジネスを次のレベルに引き上げようとしている。そのことを強く感じたセミナーだった。

取材・文/大谷和利


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