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巣ごもり需要でガンプラが絶好調!バンダイナムコの新工場建設は吉と出るか?

2022.08.07

新型コロナウイルス感染拡大を追い風にして業績絶好調の企業があります。ゲームや玩具のバンダイナムコグループです。2022年3月期の売上高は前期比20.0%増の8,892億円、営業利益は同48.2%増の1,254億円となりました。売上高は過去最高、営業利益は初めて1,000億円を突破しました。

好業績を後押ししているのが、機動戦士ガンダム。巣ごもり特需で大人向けのプラモデルが売れました。バンダイナムコはこれを絶好のチャンスととらえて次の成長ステージへとつなげようとしています。

ガンダム関連の売上高は初の1,000億円超え

バンダイナムコグループはトイ事業とゲーム事業を主力としています。売上高は長らくゲームがトイを上回っていました。しかし、コロナ禍の2021年3月期にトイの売上高が3,500億円を超え、ゲームを大きく引き離しました。

決算説明資料より

2022年3月期は、家庭用ゲーム「ELDEN RING」が予想販売数400万本を大きく上回る4,340万本を出荷し、スマッシュヒットを記録しました。そのため、売上高はゲーム事業が上回りました。

2023年3月期トイ事業の売上高は4,000億円を予想。コロナの影響が深刻化する前の2020年3月期から売上高を1,000億円も上乗せする数字です。

なお、ゲーム事業の2020年3月期の売上高は3,379億円。2023年3月期は3,500億円を計画しています。トイ事業の売上高が再びゲームを大幅に上回る予定です。

トイ事業の躍進に貢献しているのが機動戦士ガンダム。ガンダム関連のIP(ライセンス料などのもととなる知的財産権のこと)の売上高は、2022年3月期に1,000億円を超えました。2023年3月期は前期比17.0%増の1,190億円を予想しています。

補足資料より

ガンダムのプラモデル(ガンプラ)もコロナ禍をきっかけとして躍進しました。2021年3月期ガンプラの売上高は410億円。400億円を超えました。2023年3月期は520億円を予想しています。

バンダイナムコは「アンパンマン」「仮面ライダー」「DRAGON BALL」「ワンピース」「ポケモン」など、幅広い年代に愛されるIPを持っています。

トイホビー部門の売上高はガンダムが他を圧倒しています。

補足資料より

ガンダムのファン層は30~50代と言われており、年齢層が高い傾向があります。しかも熱狂的なファンを抱えているため、単価を高めに設定しても売れることが背景にあると考えられます。

工場の総面積は現在の2倍に拡大

ガンプラの企画や開発、生産を行っているBANDAI SPIRITSは、2022年4月28日に国内に新工場を建設すると発表しました。4,506坪(14,896㎡)の土地を取得し、2024年に工場の稼働を予定しています。

BANDAI SPIRITSは静岡市に敷地面積1,200㎡の生産拠点バンダイホビーセンターを持っています。年々ガンプラの生産力を上げており、2006年度の722万個から2019年度は3,126万個まで拡大しました。更に2020年12月に敷地内の新工場の稼働を開始。2019年度の1.4倍まで引き上げました。

取得した土地は既存のバンダイホビーセンターを上回る広さであり、新たな工場を建設することで飛躍的な生産能力を持つことになります。

BANDAI SPIRITSは設備の新設等の予算として、2023年3月期に115億2,900万円を確保しました。この金額は2022年3月期の予算55億3,200万円の2倍です。

バンダイナムコのガンプラにかける期待感の強さが伝わってきます。

若年層と北米の攻略が課題になるか

2022年4月からスタートした重点戦略の1つがガンダムのメタバース。先行的な取り組みとして、2022年3月にガンダムナビアプリのダウンロードを開始しました。アニメやプラモデル、イベントなどのガンダム情報をすべて集約。動画の視聴も行えるものです。

2022年度中にガンプラをスキャンして戦う、デジタル・フィジカル両方の要素を併せ持つコンテンツをリリースする予定です。この取り組みは2023年3月にGUNDAM FACTORY YOKOHAMAにて試験的に開始されています。

2023年度には開発中のゲーム「GUNDAM EVOLUTION」を主軸としたeスポーツ大会の開催を計画中。世界中のファンが参加できるコミュニティの形成を予定しています。

メタバースと言うと、閉じたデジタル空間に世界中の人が集まることをイメージしがちです。しかし、バンダイナムコの切り口は異なります。ガンダムというIPを中心に据え、その周りにアニメやガンプラ、ゲーム、音楽などのファンが集うことを想定しています。

大きな箱であるデジタル空間を作り出すのは投資額が膨らみます。しかも、空間を作ってそこに大勢の人が集まる確率は決して高いものではありません。ビジネス的な視点で見ると、投資額に対する利益が見込めません。

バンダイナムコはリスクを低減して勝てる戦いを仕掛けていると言えます。これはガンダムという強力なIPを持っているバンダイナムコ特有の戦略。KADOKAWAやソニー、ブシロードなど、数々の企業が新たなIPを生み出すために巨額の投資を行い、四苦八苦しているのも、それが会社の成長を導くからに他なりません。

ただし、ガンダムに死角がないわけではありません。若年層と海外の開拓が不十分な点です。

国内では「ガンダム SEED」で20代のファンをある程度取り込むことに成功しましたが、10代のファンはほとんどいません。また、中国などアジアの一部では人気があるものの、北米の攻略は上手くいっていません。

ガンプラの生産能力を劇的に引き上げても、長期的に需要が縮小する可能性があるのです。かつてシャープは、液晶テレビの生産工場に巨額の投資をしていました。しかし、スマートフォンの登場で液晶ディスプレイの小型化が主流になると、大型液晶パネルの需要が縮小。一時的に操業停止に追い込まれました。

生産能力を引き上げるのは諸刃の剣であるとも言えます。

取材・文/不破 聡

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