原油・LNG価格高騰への対応が企業の喫緊の課題として避けられないものになっている。コロナ禍ピーク後の景気回復による需要増加、さらにロシアのウクライナ侵攻の余波で原油価格は高騰。一方、脱炭素社会への転換を図るなかで化石燃料増産への道筋は立っていない。
LNG価格も同様に世界情勢の変化にともない高騰。サハリン2権益も不透明で、エネルギーを海外からの輸入に頼る日本経済にとって痛手になりかねない。
そこで、帝国データバンクは原油・LNG価格高騰に関する企業の見解についての意識調査を実施した。調査結果は以下のとおり。
半数の企業が「直接マイナスの影響」、『運輸・倉庫』は約8割に
高水準となっている原油価格やLNG価格の企業経営への影響を尋ねたところ、「直接的にマイナス影響がある」と答えた企業は48.2%で最も高くなった。また、直接間接を問わずマイナス影響が出ている企業は86.3%を占めた。
直接間接でプラスの影響があると答えた企業は3.7%、「影響はない」が5.9%、「分からない」が4.4%となった。
業界別で、「直接的にマイナス影響がある」の割合が高かったのは、『運輸・倉庫』の79.3%。以下、『農・林・水産』(69.4%)、『製造』(55.1%)、『建設』(50.4%)、『小売』(50.1%)と続き、50%以上となった。
企業の半数が「節電・節約」実施、今後「価格転嫁」が最も高い
原油価格やLNG価格が高騰を続けるなかで、現在実施している対策について尋ねると、「節電・節約」(49.5%)がトップ。以下、「エネルギーコスト上昇分を販売価格へ転嫁」(21.8%)、「仕入先・方法の変更」(10.7%)が続いた。
「特に対応しない」(20.9%)と回答した企業も一定数存在し、特に小規模企業では25.3%を占め、6月時点では4社に1社で対応策をとっていなかった。
業界別では、「節電・節約」の割合が高かったのが『農・林・水産』(71.0%)、『製造』(58.8%)。
「エネルギーコスト上昇分を販売価格へ転嫁」の割合が高かったのが、『運輸・倉庫』(33.7%)、『製造』(32.0%)となり、直接的にマイナスの影響が大きい業界ほど対応策を講じている。
今後、原油価格やLNG価格の高騰が継続した際に実施する対策について尋ねると、「エネルギーコスト上昇分を販売価格へ転嫁」(29.6%)が最多。次いで「節電・節約」が28.3%、「仕入先・方法の変更」が12.3%で続いた。また、企業の1.6%が「廃業の検討」を考えていた。
原油・LNGともに価格高騰が「1年以上続く」と考える企業が7割
原油価格、LNG価格それぞれで、現在の高水準な価格がどの程度の期間続くと考えるかを尋ねると、「1年程度」が原油(33.5%)、LNG(30.8%)ともに最も高い割合となった。「2年程度」が原油(16.8%)、LNG(16.6%)ともに次に多く、1年以上にわたり続くと想定している企業はともに7割前後に及んでいる。
原油価格・LNG価格の高騰が、幅広い業界の企業にマイナスの影響を与えている。特に運輸業や製造業者など、燃料費のコスト負担が従前から大きい業界ほど影響も大きく、企業業績を押し下げている可能性がある。節電・節約によって急場をしのぐ一方で、今後は原油・LNG価格高騰の影響を販売価格に転嫁する動きが強まるとみられ、直接的な影響の少ない業界にも問題は広がる可能性が高い。
また、小規模事業者では特に対応策を取っていない企業も多い。企業規模によっては、燃料費負担の削減余地の少ない事業者や、価格転嫁の難しい事業者もあり、その影響が懸念される。海外情勢に大きく左右されるが、7割前後の企業が1年以上現在の高騰が続くとみており、長期化するおそれもある。企業の自助努力が限界を迎える前に、政府には影響の大きい業界・企業への支援策や実効性のあるエネルギー政策が求められている。
出典元:帝国データバンク
構成/こじへい