独自分析により倒産危険度の高い業種をカウントダウン形式で発表
新型コロナウイルスの影響による消費活動の低迷が続くなか、ウクライナ問題や円安の影響による物価の高騰により、ますます景気回復の先行きが不透明となっている。
2021年度の中小企業の経営環境は緩やかな回復傾向にあったことも影響し、現時点では倒産を免れている企業も多いが、今後はゼロゼロ融資の元本の返済が本格化することから、収益力が落ちている企業の倒産可能性は増大しており、実際に足元ではコロナ融資後倒産の件数が増えている。
こうした中、アラームボックスはこのほど、2021年5月~2022年5月の期間に収集された10,628社・254,174件のネット情報等から1年以内に倒産する危険性がある“要警戒企業”を分析・抽出し、「倒産危険度の高い上位10業種」として発表した。
調査の結果、原油価格の高騰や円安による影響を受けた電気業や建設・工事業界、コロナ禍での外国人旅行客の激減や外出制限・営業制限の影響を受けた宿泊や飲食業界、エネルギー関連の価格高騰と宿泊・飲食業の営業制限の両方の影響を受けた農業界、コロナによって価値観や需要の変化の影響を受けたアパレル関連の製造、卸、小売業界において、倒産関連情報が集中していた。詳細は以下のとおり。
1位「農業」 31社に1社が倒産する危険性
主な事業:耕種農業、畜産農業、園芸サービス業など
作物や植物などの栽培をする耕種農業では、飲食店などの業務用需要が減少し、野菜余りが発生、結果として野菜の販売価格が下落するなど、コロナ禍での負の連鎖による業績悪化の情報が多く発生していた。
また、畜産農業では飼料価格が高騰した影響により大手企業の倒産が発生していた。2022年下半期以降は、原油高や円安による農薬や飼料などの高騰や、1951年の統計開始以来、最も早い梅雨明けが各地で発表されるなどで気候変動による不作が不安視されていることから、今後の動向に注意が必要だ。
2位「電気業」 62社に1社が倒産する危険性
主な事業:発電所、電力小売り
2021年の初頭から原油や液化天然ガスなどの燃料価格は高騰を続けており、2020年〜2021年冬の深刻な電力不足の影響により、特に発電所を持たない新電力と呼ばれる電力小売り会社において、電力の仕入価格が提供価格を上回る“逆ザヤ”が発生している。
多くの事業者が値上げや新規契約の停止に踏み切っているが、余力がなくなった企業は事業撤退や倒産、廃業を余儀なくされるケースが相次いでいる。今後は、昨今のウクライナ危機などの影響による電力調達コストの高止まりや、今夏の断続的な電力需要逼迫の影響が懸念される。
3位「繊維・衣服等卸売業」 75社に1社が倒産する危険性
主な事業:繊維や染材など原料の輸入、既成服の卸売業など
コロナ禍で在宅時間が増加し、外出機会が少なくなったことにより、衣料品に対する消費者側のニーズが変化し、需要全体も減少したことを背景に、粉飾決算や支払い遅延、債務超過や人員カットに関する内容が散見された。
特に卸売業に関しては、「名岐アパレル」と呼ばれる名古屋、岐阜に集積する歴史的なアパレル企業らの連鎖倒産に関連する情報も多く、繊維アパレル業界内でも卸売業が危険度の高い業種となった。
他業界と同様に、原材料や仕入れ値の高騰により、値上げを実施せざるを得ない企業も続々と増えてくると予想されるため、今後も注視が必要だ。
4位「設備工事業」 89社に1社が倒産する危険性
主な事業:電気工事業、管工事業など
小規模な中小企業の業績悪化に関する情報が多く発生していた他、太陽光発電所建設会社の税金滞納や、産業廃棄物収集運搬の許可取り消しといった噂も発生していた。
また、業界内での不評に関する情報も散見されており、業界内での悪評が対外信用の低下につながり、結果として倒産に至るケースは珍しくないため、噂や風評に関する情報にも注意が必要だ。
5位「宿泊業」 95社に1社が倒産する危険性
主な事業:旅館、ホテルなど
長期化するコロナ禍によるインバウンド需要の消失と国内需要の半減により、事業停止や事業譲渡が多く発生していた。民事再生により再出発をきる事業者も多いなか、今後はホテルのテレワーク利用やワーケーションなど新しい形での利用や、例年より早い梅雨明けによる旅行客の増加を期待する声もあるが、インバウンドや団体旅行などの需要は未だに回復する兆しが見えないため、今後も継続してモニタリングをする必要がある。
6位「総合工事業」 100社に1社が倒産する危険性
主な事業:土木工事業、建築工事業、建築リフォーム工事業など
国や地方自治体からの受注が大きい土木工事業に関しては、オリンピックの特需や高度経済成長期に作られたインフラの補修や整備により業界全体では堅調な動きを見せていた。
しかし、2021年3月頃から始まっている木材価格の高騰「ウッドショック」の影響や円安による関連資材の高騰を理由とした資金繰りの悪化、支払遅延等の情報も多く見られ、特に内部留保の少ない下請け企業は資材の高騰による経営不振に関する情報が発生していた。
また、同業界は若手入職者の減少などコロナ以前からの人出不足が発生しており、実際に黒字が続いているに関わらず、資材の高騰と人手不足により倒産に至ったケースもあった。
7位「織物・衣服・身の回り品小売業」 111社に1社が倒産する危険性
主な事業:アパレル小売店、洋品店、革小物小売店など
3位の繊維・衣服等卸売業と同じく、コロナ禍における衣料品の買い替え需要の減少による店舗の閉店や支払遅延などが発生していた。
また、呉服店においては、代表者の逮捕や行政指導といったコンプライアンス問題が発生しており、高額かつ前払いの発生する業態であることから、今後は信用問題が業績にどれほど影響するかが注視されている。
8位「繊維工業」 111社に1社が倒産する危険性
主な事業:製糸業、紡績業、織物業など
アパレル業界の製造部門である繊維工業も、取引先である繊維卸や小売りの不調に引きずられ業界全体が落ち込みを見せた。特にコロナ禍によって縮小した冠婚葬祭やスーツ出社などに必要となるフォーマルウェア、価格競争が激化していた低価格帯のカジュアルウェア製造会社に対する与信不安情報が多く発生していた。
9位「飲食店」 112社に1社が倒産する危険性
主な事業:レストラン、居酒屋、バー、ナイトクラブなど
コロナ禍での時短営業やフードデリバリーの台頭による影響を受け、テナント家賃の滞納や事業譲渡といった情報が多く発生していた。
また、特に夜間に営業する居酒屋への打撃が大きく、個人経営の店舗だけでなく、大手居酒屋チェーンにも要警戒情報が発生するなど、規模を問わず倒産の危険性があることが判明した。今後は、アフターコロナに向けたリベンジ消費やインバウンド需要の復活などが期待されるが、コロナ前の需要を取り戻せるかどうかが注目される。
9位「金融商品取引業、先物取引業」 112社に1社が倒産する可能性あり
主な事業:証券会社、投資会社など
関連企業が金融庁の業務停止命令から廃業に至ったという情報が多く発生した。証券会社や投資会社は関連企業を持っていることも多く、直接取引のある企業だけでなく、子会社や関連企業の情報を収集することで正しく与信を管理することが重要だ。
<調査概要>
調査期間:2021年5月1日〜2022年5月31日
対象企業:アラームボックスでモニタリングしていた企業のうち、10,628社
対象データ:アラームボックスで配信されたアラーム情報254,174件
出典元:アラームボックス株式会社
構成/こじへい