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「IT難民」を救え!日本PCサービスが目指す誰も置いてきぼりしない世界

2022.08.03

【Innovator’s NEWS】“IT難民”を救え<後編>

イノベーターの情報を発信するニュース、今回は『パソコン難民』『スマホ難民』を救う巨大市場を見つけた起業家の話をお送りしたい。その人物とは日本PCサービスを起業した家喜信行社長。全国に“修理・設定ネットワーク”と呼ぶべきインフラを構築し「パソコンが起動しない」「壊れたスマホの写真データを取り出したい」といった様々な要望に応え続ける企業だ。水回りや鍵のトラブルから害虫駆除まで家庭のトラブルを解決する企業、ジャパンベストレスキューシステム(JBR)との業務提携後、成長を遂げた日本PCサービス。家喜社長はその先に何を目指すのか?

前編はコチラ

合理的な仕組みはいつか非合理的になる

 ここから日本PCサービスは成長を始める。元々、パソコンの設定や修理に関するニーズはあったのだ。まず、様々なパソコンのメーカーと契約できた。困っているお客様がメーカーのサポートダイヤルに電話をする。この時、対応した人がお客様に「有料ですが、お宅に伺って設定できますよ」とオファーする。お客様が望めば日本PCサービスが駆けつけることで、場合によってはメーカーに紹介手数料が支払われる。すなわち、パソコンメーカーにとって、今までコストセンターだったサポートダイヤルが売り上げも計上するようになったのだ。ユーザーにとっても合理的な進化だった。

 家喜氏は勇躍、全国に拠点を増やしていった。そしてこの時、家喜氏は“イノベーターの条件”とも言える決断を下す。世間の逆を行ったのだ。

「どんな作業も社員が行う」と決めたのだ。

創業当初の写真。顧客のトラブルに家喜社長自身が対応していた。

 例えば、何かのトラブルでパソコンのメーカーやプロバイダーが一般家庭に人を派遣することがある。その場合、人材派遣の会社に登録している人――パソコン教室の先生や、元SEのような人たちを現場に派遣することがほとんどだった。人を雇用せずにすみ、様々な人材派遣会社の中で最も安価なところに発注することもできるから、一見、合理的だ。

 しかし、家喜社長はあえて逆を行った。

あえて正社員の雇用にこだわったんです。トラブル解決や設定の技術を伝え、お客様の困りごとに臨機応変に対応できる人材育成をしようと思ったんです。日雇いのような形で人にお願いしたら、日本PCサービスとしての技術力は向上しません

 人間的な理由もあった。社員たちと「正義の味方」「神様」と呼ばれるうれしさを共有できれば、皆、この仕事にやりがいを持つだろう。技術力が高くなればより多くの給与も払えるはずだ。

「接客品質も向上します。お客様はスタッフを家に上げるわけで、ちゃんとした人が来なかったら怖いはずです。だから当社は、社員の髭と茶髪は禁止、スーツで伺い、顧客宅に上がる時は使い捨てのスリッパを履くほど接客品質にはこだわっています。

 また、正社員であればお客様に営業もできます。壊れたパソコンからデータを取り出したなら、お客様の多くはパソコンが欲しいですよね。当社の車には、ネット回線のルーターやパソコンも積まれていて、いつでも販売できるんですよ」

 家喜氏は話す。世の中の逆を行くって時に大切なのだ、と。

世間の様々な仕組みの多くは合理的にできています。しかし時代が変われば、今日合理的だったものは、明日には非合理的になるのです。その後、スマホやスマート家電など様々なデバイスのトラブルにも対応できているのは、現場に行く人を社員として雇用したからです。そうでなければ、日本PCサービスは上場できていなかったでしょう」

2019年、USJで行われた社内イベントで家喜社長自身がコスプレで登場。場を沸かせた。

“性分”だけは裏切れない

 家喜氏は日本PCサービスを「インフラ」にしていく。企業はインフラになると強い。お菓子や家具などの消費財をつくっても顧客の好みが変われば買わなくなるが、電車や電気のようなインフラは社会に必要とされ続ける。家喜氏に、なぜインフラをつくることになったのか聞くと、こんな答えが返ってきた。

「昔から損な役回りを引き受ける性格だからでしょう」

 人は同じ景色を見ても、まったく別のものを見ているのだ。

家喜社長の小学生時代の写真。

 小学生の頃、いじめに遭った。仲間と公園でエアガンの撃ち合いをしていたら弾が近所の家に当たってガラスが割れた。みんなは逃げてだんまりを決め込んだが、家喜少年だけが“放っといたらあかんやろ”と母に相談した。すると、これがきっかけでガキどもの仕業とバレ、皆が怒られ、家喜少年は仲間外れにされたのだった。自動車修理工場にシステムをおろしていた時も、ただ売ればいいとは思わず、お客さんが困らず使えているかが気になった。その結果『パソコン難民』の存在が見えたのだが、もし別の営業なら見えなかったかもしれない。

 結局、家喜氏は誰かが困ることは見過ごせない性分なのだ。そして「性分」という、どうにもならない要素を根底にビジネスを展開している人間は強さも兼ね備えるのだろう。だからこそ倒産寸前の事態にも耐えられ、だからこそ「PC」がIT機器の主役でなくなった後も。日本PCサービスは次々事業を拡大している。

「どんなデバイスが登場しても、困った方がいる限り、僕らは対応します。PCはもちろん、スマホ、ゲーム機、HEMS、ロボット、スマート家電……。もちろん電気自動車の充電器の設置にも対応していますよ。時代が変わって、ダイヤルアップがISDNになり、光に変わっても、困った人がいる限り対応することが私たちのビジネスの強みだとも思います。

 最近は、定額の会員サービスも拡充しています。年に複数回ご利用いただく方や、日ごろからデジタル機器に関する相談をしたい方に向け、使い放題の電話・リモートサポートや機器故障時の保証を月額費用で行っているんです。最近は20名以下の小規模事業者から大企業まで法人向けサービスも拡大しています」

 参上して、助太刀して、一件落着に持っていく。

今後、高齢化やデバイスの複雑化によって生じる『IT難民』を、メーカーは放っておくのでしょうか。今後、DXが進むほど『やり方がわからない』『接続できない』といった方が増えていくはずです。もし我々の存在で、最新機器の普及が進むのであればとてもうれしい。『置いてきぼりになる人がいてもしょうがない』という雰囲気が変わっていけば、私はもっとうれしいですね

日本PCサービスホームぺージ。HEMS、AI等にも対応する。https://www.j-pcs.jp/

取材・文/夏目幸明

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