『ホワイトペーパー』はもともとは政府の刊行物でしたが、昨今は企業が発行するものも指すようになりました。ホワイトペーパーの種類や企業が発行するメリットを解説します。広報担当者は作成方法に加えて、発行のポイントも押さえておきましょう。
ホワイトペーパーとは
ホワイトペーパーは、近年のマーケティングで多くの企業に導入されています。まずはホワイトペーパーの本来の意味と、現代のビジネスシーンでは何を指すのかを見ていきましょう。
本来は「白書」の意味
ホワイトペーパーは日本語にすると『白書』で、さまざまな報告書に対して使われます。主に政府系の刊行物が白書と呼ばれており、公的機関が調査報告や資料などをリリースする際に『〇〇白書』と名付けられるのが一般的でした。
例えば、国会に対して提出される報告書や、閣議に提出される報告書などが代表例です。
しかし近年は、企業のマーケティング目的でも使われるようになり、市場調査や特定分野の知識・ノウハウを提供する資料として、ホワイトペーパーを発行する企業が増えています。
顧客のための情報資料として一般化
企業のマーケティング分野におけるホワイトペーパーとは、顧客やリード(見込み顧客)のために市場の概況やノウハウを資料としてまとめたものです。顧客に対してホワイトペーパーで有益な情報を提供し、その流れで自社の製品やサービスをすすめるケースが多いようです。
リードや既存顧客が抱える問題・課題の解決に役立つ情報を継続的に提供することで、自社の商品・サービスに興味を抱いてもらい、購入につなげるのを最終的な目的としています。
ホワイトペーパーの提供方法としては、電子メールで既存客に送付したり、オウンドメディア上で顧客情報と引き換えにダウンロードできるようにしたりするのが一般的です。
製品・サービス資料との違いは?
ホワイトペーパーと混同されがちな発行物として、『製品資料』や『サービス資料』があります。これらはすでに自社製品に興味がある人に向けたもので、単に製品・サービスを紹介する目的で発行されるものです。
一方、ホワイトペーパーは、顧客の問題や課題を解決するための情報を提供する中で、製品やサービスを紹介するのが特徴です。ホワイトペーパーの種類にもよりますが、自社にまだ興味を持っていない人向けに発行するケースも珍しくありません。
ホワイトペーパーにはどんな種類がある?
企業の発行するホワイトペーパーには、どのような種類があるのでしょうか? 細かい内容は企業によってさまざまですが、大きく分けると以下の3パターンがあります。
課題解決・ノウハウ型
課題解決・ノウハウ型は、顧客の抱える問題・課題を解決するためのノウハウを伝えるものです。企業が作成するホワイトペーパーとして広く浸透しています。冒頭で顧客の問題や課題を提示し、その要因を分析・提示した上で、自社の製品やサービスの利用を交えた解決策を紹介します。
提示する解決策は、主に自社の経験を集約してノウハウ化したものです。自社がその分野においてエキスパートである点をアピールしつつ、製品やサービスの宣伝につなげます。
既存客はもちろん、自社のことを知らない潜在顧客にもアピールしやすいタイプのホワイトペーパーといえるでしょう。
事例集型
自社の製品やサービスを活用して、クライアントが問題や課題を解決した事例をまとめたのが、事例集型のホワイトペーパーです。すでに製品・サービスについて知っている層がメインターゲットとなります。
既存のクライアントが導入前に抱えていた課題を紹介し、それをいかに解決したかを紹介するのが基本の流れです。
単に事例を記事として紹介する場合もありますが、クライアントにインタビューする形で事例を紹介しているホワイトペーパーも少なくありません。導入を迷っている検討後期の顧客を後押しするのに効果的です。
リサーチ・レポート型
リサーチ・レポート型のホワイトペーパーは、自社のクライアントとなり得る企業が属する業界を対象に、市場調査の結果・クライアントの顧客となる人たちの動向を調査した結果などをレポートにまとめたものです。
例えば、自社で実施したアンケートに基づく情報や、業界の動向を詳しく分析したものを分かりやすくまとめてリリースします。既存の顧客はもちろん、まだ自社のことを知らない潜在顧客にもアピールできるのが特徴です。
レポートを通じて自社の認知を広げ、新たなリードを獲得するのに効果的でしょう。
ホワイトペーパーを作成するメリット
企業が積極的にホワイトペーパーを作成し、リリースするメリットは多くあります。最終的な目的である売上アップに向け、得られるメリットを見ていきましょう。
効率的にリードを獲得できる
ホワイトペーパーを作成すれば、将来的に自社製品・サービスを購入してくれるリードの醸成につながります。ホワイトペーパーを通じて有益な情報を提供し、その流れで製品やサービスを紹介すれば、潜在顧客の中で一定の層は興味を示すはずです。
もちろん、企業や業界によってリードの獲得方法はさまざまです。ただ、相手の興味・関心を引ける事柄について資料にまとめ、徐々に自社製品に興味を持たせるホワイトペーパーは、リード獲得の手段として多くのケースで効果的といえるでしょう。
リードナーチャリングに活用できる
リードの獲得に加えて、リードの育成(リードナーチャリング)にもホワイトペーパーが有効です。ホワイトペーパーは『MA(マーケティング・オートメーション)』との相性が抜群で、効率的にマーケティング活動を進められます。
MA(MAツール)とは顧客情報の収集・蓄積をはじめ、実施したマーケティング施策の分析・データの絞り込みといった作業を自動化できるツールです。マーケティング活動を効率化できるため、近年が活用が広がっています。
ホワイトペーパーをMAの機能と組み合わせて運用すれば、より効果的にリードにアプローチできるのがメリットです。スムーズに成約まで進められるようになるでしょう。
例えばMAの機能を使って、まず特定の分野に興味がありそうなリードを厳選します。そこに絞ってホワイトペーパーを提供すれば、効率的に関係の強化ができるはずです。
営業活動が効率化できる
ホワイトペーパーを使って獲得したリードに対して営業担当者が個別にアプローチすれば、スムーズに商談につなげられます。潜在顧客の興味に合わせてホワイトペーパーを作成しておくと、どの資料がダウンロードされたかを調べることで、特にニーズが高い分野を把握できるでしょう。
相手のニーズが分かれば営業のアプローチも考えやすくなり、結果的に商談の成功率が向上するはずです。話を進めやすくなるため、営業担当者のモチベーションが上がる点もメリットといえるでしょう。
ホワイトペーパーの作成方法
ホワイトペーパーの作成方法について、課題解決型を例に取って確認しましょう。企業によって細かい部分の作り込み方は変わりますが、大まかな流れは共通しています。
1.目的や課題を明確にする
まずは、何のためにホワイトペーパーを作成するのかを考えましょう。そのためには、潜在顧客やリード既存顧客の、どのような問題・課題の解決に役立つ資料にするのかを明確にする必要があります。
ホワイトペーパーが解決すべき課題によって、内容だけでなく提供方法も変わるでしょう。自社の製品やサービスによって課題を解決できる分野で、具体的にどのような課題をテーマに取り上げるのか決めます。
2.テーマに基づいて構成を作る
解決したい顧客の課題を調査してテーマを設定したら、ホワイトペーパーの構成を考えましょう。一般的に、ホワイトペーパーは以下の構成で作られています。
- 表紙
- ホワイトペーパーの目的
- 目次
- 内容
- 発行会社の紹介
- 問い合わせ先の記載
まずテーマに沿った魅力的なタイトルを設定し、必要な情報を整理して提示する順番を決めます。この時点で、ホワイトペーパーの作成目的も記載しておくとよいでしょう。ホワイトペーパーが読者にとってどのようなメリットを提供するのかを説明します。
次に、本文の構成を考えて目次を作成しましょう。本文の執筆から始めてしまう人も少なくありませんが、最初に見出しを作成した方が内容を整理できるので、結果的に執筆のスピードも速くなります。
課題解決型のホワイトペーパーの本文構成は、読者が抱えているであろう問題・課題の提示から始めて、その課題の分析・解決策の提示といった流れにするのが一般的です。その後に自社が提供できる解決策を提示して、製品やサービスの紹介につなげます。
3.執筆と校正
構成を考えたら本文の執筆に入りましょう。それぞれの見出しを的確に本文に反映する必要があります。見出しから逸れた内容にならないように注意しながら、分かりやすい文章を心がけましょう。適宜、数字・グラフなどを用いて説得力を持たせることも大事です。
執筆が終了したら誤字脱字だけでなく、文章表現や論理展開に間違いがないかまでしっかりと確認しましょう。執筆者本人のチェックだけで終わらせず、他の社員にもチェックしてもらうことで校正の精度が上がります。
ホワイトペーパーを作成する際のポイント
ホワイトペーパー全体の構成はもちろん、細かい部分にもこだわることで読者からの反応が好転するケースは珍しくありません。訴求力の高いホワイトペーパーを作成するポイントを紹介します。
難しい用語を避けて分かりやすい内容にする
ホワイトペーパーの読み手が全員、テーマに関する分野の専門家とは限りません。難しい用語を避けるとともに、できるだけ分かりやすい内容にすることを心がけましょう。
もともと専門家向けに作るホワイトペーパーはその限りではありませんが、誰にとっても読みやすく頭に入りやすい内容であるに越したことはありません。図表やグラフなど視覚的な要素を盛り込む場合は、テキストとのバランスを意識しながらレイアウトも工夫しましょう。
過度な売り込みにならないように注意する
ホワイトペーパーを発行する目的は、最終的には自社の製品・サービスを販売するところにあります。しかし読み手によって重要なのは、自らの抱える問題・課題を解消できるかどうかです。
なぜ自社の製品・サービスが問題や課題の解消に役立つのか、説得力のある説明がないまま提案しても、読み手からよい反応は得られないでしょう。あくまでも、読み手の状況を改善するためにサービスの利用をすすめる必要があります。
過度な売り込みに終始しないように注意しながら、読み手にとって有益な情報を提供することがポイントです。
構成/編集部