「ボディポジティブ」の問題
『ボディポジティブ』にはよい面が多くある一方、懸念されている問題もあります。どのようなことが問題視されているのでしょうか?
痩せすぎの人を批判する傾向も
ボディポジティブのムーブメントが広がると、意味をはき違え、痩せすぎている人に対して敵意を込めて『スキニー』という言葉を使う人も出てきました。痩せている人が批判される傾向が問題視されています。
各国で痩せすぎモデルへの規制ができたことも、批判がヒートアップした原因と考えられています。
本来ボディポジティブは、プラスサイズをよいとするものでも痩せすぎやダイエットを否定するものでもありません。しかし欧米では、広告に痩せているモデルが登場すると、「細すぎる」という批判が寄せられるようになりました。
痩せている人が、友人や同僚から「もっと食べた方がよい」などと言われることもあるようです。『ありのままの体形を前向きに捉える』という本来の意味が薄れ、ふくよかな方がよいとされる風潮が出てきてしまっています。
誤った認識の広まり
急速にボディポジティブが広まったことで、体形に関する認識がよくない方向に向かうという問題もあります。自分の体形を必ず愛さなければいけないと強迫観念に駆られたり、体形を愛せないことに罪悪感を抱いたりして苦しむ人が出てきたのです。
これは「どんな状況でもポジティブシンキングを維持すべき」「ネガティブな感情を持つのは悪い」という『有害なポジティブさ』に通じるものがあり、問題視されています。
運動やダイエットをすることがボディポジティブだと、言葉の意味自体を勘違いしている人もいるようです。
「ボディポジティブ」に関する変化
ボディポジティブが広まるにつれ、考え方や価値観も徐々に変化しています。主な変化や海外で注目されている新たなムーブメントについても見ていきましょう。
体形以外も対象に
もともとは体形にフォーカスしていたボディポジティブも、そのほかの部分も対象とされるようになってきました。現在は、ボディポジティブに体のパーツの形・サイズから、体毛や傷などの特徴までを含めて考える人が多いようです。
さらに、年齢やジェンダー・人種・障害の有無や女性らしさ・男性らしさといった価値観にも広がりを見せています。実際にファッションブランドの『グッチ』やファッション誌の『エル』では、障害を持つ女性をモデルに起用し話題になりました。
化粧品メーカー『資生堂』でも、義足の女性をキャンペーンアドバイザーに起用しています。
海外で注目されている「ボディニュートラル」
近年、海外で注目を集めるムーブメントになっているのが、ボディポジティブから進化した『ボディニュートラル』です。
自分の体形を前向きに受け入れるというボディポジティブに対し、ボディニュートラルは『自分の体形を無理に好きになれなくてもいい』という考え方とされます。
ありのままの体形にポジティブであることを強要せず、ネガティブな感情を抱いてもよいことが特徴です。多くの人の共感を得て急速に広まっています。
また、体形ではなく体の機能に目を向けて感謝することも、ボディポジティブと大きく異なる点です。ボディニュートラルでは『美しい足』と捉えるのではなく、『歩けるのは足のおかげ』と感謝します。
「ボディニュートラル」を実践する際のポイント
ボディニュートラルを実践するには、三つのポイントを意識することが大切です。まず、体形に対する感情をそのまま受け入れましょう。無理にポジティブに捉える必要はありません。
次に自分の心や体と向き合い、心地よいと感じる選択をします。例えば、運動はしたいときにする、食べたいものを食べるといった生活です。
さらに、健康な暮らしを維持するために適度な運動を取り入れましょう。体形を維持するためにつらい運動をするのではなく、体をケアするために楽しく取り入れるのがポイントです。
構成/編集部