目次
「ベンチマーク」という言葉は頻繁に使われるようになりましたが、言葉の意味を明確に理解している人は少ないかもしれません。
ベンチマークがビジネスシーンや他の場面においてどのように使えるのか、導入するメリットは何なのかを意味とともに解説します。
ビジネスにおけるベンチマークの意味と活用例
ビジネスシーンでよく「ベンチマーク」という言葉が使われます。意味が分からないと、会議で重要なポイントを理解できないかもしれません。言葉の意味やベンチマークの活用方法を見ていきましょう。
英語の「Benchmark」が語源
「ベンチマーク」という言葉の語源は英語の「Benchmark」で、「基準」や「標準」を指します。もともとは測量用語として使われ、位置や高さの基準を示す印として刻まれた点を意味していました。この概念が広がり、ビジネスやITなどの分野では、目標や基準となるものを「ベンチマーク」として設定し、現状の評価や改善目標の指標として使われています。
測量の水準点→目標とする競合他社のこと
企業の活動には商品やサービスを売り上げるという目標があり、そのための施策には何らかの指針が必要です。ライバルに当たる同業他社の取り組みや実績を参考に、自社の戦略を考える企業は多いでしょう。
ビジネスシーンにおける「ベンチマーク」は、『自社が目指すべき競合他社』という意味合いで使われます。語原である英語「benchmark」は本来、測量の水準点を表しますが、ビジネスでは『目標』というニュアンスが強いのです。
また、同業他社を分析して分かった売上・利益率といった数字をベンチマークと呼ぶこともあります。文脈によって意味合いが変わってくるので、そのときの状況を考えて判断しましょう。
自社の立ち位置を確認する指標とは
競合他社をベンチマーク対象として分析し、自社と比較すれば、両者の立ち位置を客観的にを把握できます。ベンチマークと比べて大きく劣っている部分があるなら、早急な対策が必要だと分かるでしょう。
対象を分析して自社の商品やサービスの課題を見つけるには、「4P分析」が有効です。
「4P分析」とはマーケティングのフレームワークで、以下の頭文字から成り立っています。
- Product(製品)
- Price(価格)
- Promotion(販売)
- Place(流通)
4P分析で競合他社と自社を定量的に比較すれば、自社の立ち位置を把握するのが容易になります。さらにベンチマークとした企業の重要成功要因(KSF)も推測できると、効率的な施策の立案が実現するでしょう。
自社の目標をより明確に
企業の活動において、施策を立てるのに明確な目標が欠かせません。しかし、自社の経営状況を把握していても、外との比較がなければ重要な問題点を見落としてしまう可能性があります。
何が問題なのか・改善すべきはどこなのかを正確に把握し、具体的な目標を定めるには、やはり競合他社をベンチマークとして設定するのが有効です。
競合他社を分析することで、自社の欠点が浮き彫りになるでしょう。目標が明確に決まれば必要なコストや時間もはっきりするため、どう動いていけばよいかという計画を立てやすいはずです。
ベンチマークを導入する三つのメリット
競合他社の手法を参考にして自社のあり方を改善する上で、ベンチマークは重要です。具体的には、どのようなメリットを得られるのでしょうか?
他社の優れた手法を発見できる
自社で新しいサービスや商品を開発するには、企画立案の会議から実際の開発まで、多くの手間・時間が必要です。手法の確立から自社でやろうとすれば、膨大なコストがかかります。
その点、競合他社や事業分野が似ている企業をベンチマークとすれば、自社でも使えそうな手法を参考にできるでしょう。一から立案するより、格段に労力を抑えられます。
商品開発だけでなく、自社では発見できなかったマーケティング戦略や経営方法に関しても、他社から学べることは少なくありません。全く新しいアイデアの創出には向きませんが、最大限の効果を期待しつつ効率化を図れるのは大きなメリットといえます。
自社の問題点が見つかる
競合他社をベンチマークとして設定することで、自社の分析だけでは発見できなかった改善点も、競合他社との比較で明確にできるでしょう。
企業の改善提案に関して犯してしまいがちな失敗は、経営問題を思いつく限り挙げてしまうことです。やみくもにコスト削減から生産拡大まで、あらゆる問題を全て解決しようとすると、無為にリソースを消費するだけで終わってしまいかねません。
企業の経営資源には限りがあります。ベンチマークをもとに重要な課題を洗い出し、優先的に改善に取り組みましょう。無駄のない施策立案・実行により、効率的な運用を目指せます。
客観的な視点で現状を把握できる
ベンチマークの最大のメリットといっても過言ではないのが、競合他社を分析することにより自社について客観的に把握できる点です。競合他社との違いを数値化し分析する「ベンチマーキング」で、自社では当たり前だと思っていた商品やアイデアについても客観視できます。
また、競合他社のアイデアや施策を学ぶことで、それまで自社では考えつかなった発想にも巡り合えるでしょう。今まで見落としていた自社の手法を見直す機会につながり、選択肢の幅を増やせます。
マーケティングに関する指標「ベンチマーク」と「KPI」の違いは?
経営やマーケティングに関する指標として、「KPI」もよく用いられます。競合他社の分析結果を表すときの「ベンチマーク」も指標を表す言葉ですが、両者は性質が異なります。「KPI」の意味とともに違いを見ていきましょう。
KPIの意味をチェック
KPIは「Key Performance Indicator」の略で、組織の目標達成度合いを測る指標です。一方、企業の最終的な目標は「KGI(Key Goal Indicator)」と呼ばれます。KPIはKGIの達成に向けた中間目標として設定される指標です。
マーケティングや営業活動で設定するKPIとしては、以下が挙げられます。
- 新規顧客獲得数
- 顧客満足度数
- PV数
- 直帰率
- リピート率
例えば、KGIを『月間売上高を300万円』とした場合、そこに向けたKPI設定してきます。WebサイトであればPV数やコンバージョン率などもKPIとして設定し、売上目標を達成するための数値を割り当てるのが一般的です。
ベンチマークは外部志向、KPIは内部志向
ベンチマークとKPIでは、設定する目標の対象が違います。
ベンチマークは自社の置かれた状況を判断するため、外部に基準を求めるものです。一方KPIでは、自社が掲げた目標に近づいているかをチェックするため、社内の成果を測定します。
どちらを採用するというものではなく、そもそも設定する目的が違う指標だといえるでしょう。自社の状況に応じて施策の改善を図るには、どちらもうまく活用する必要があります。
業界でも変わるベンチマークの意味
ベンチマークはビジネスシーンだけでなく、IT・投資業界など幅広い分野で使われています。語原は同じ英語ですが、使う場面によって意味が変わることを覚えておきましょう。
測量の分野での場合
測量の分野でのベンチマークは、地形や建造物の位置を正確に測る際の基準点として利用されます。この基準点は、他の地点と比較するための起点であり、長期にわたる測量の精度を維持するために設置されます。例えば、建築物の高さや地形の変化を正確に測定するために、ベンチマークが設けられ、測量の基準となることで信頼性を高めています。
自動車分野での場合
自動車分野では、ベンチマークは他社製品との比較の基準や、性能評価の指標として使用されます。新しい車の性能や技術が、どの程度の水準にあるかを確認するため、業界内で優れた車両が「ベンチマーク」として設定されます。これにより、新車開発の際に達成すべき目標や改良点が明確になり、各メーカーの技術向上が促進される役割を担っています。
IT・PC・コンピュータ分野の場合
ITやPCにおける「ベンチマーク」は、ハードウエアやソフトウエアの性能を測定する指標を指します。「ベンチマークテスト」と呼ばれるプログラムを実行して一定の負荷を与え、その結果として出た「ベンチマークスコア」の数値を比較することで、性能を評価するのです。
ゲーム業界では、プレイの快適性を計測することもベンチマークテストと呼びます。ベンチマークソフトを作り、ユーザーに無料で試してもらうことで動作の不備をはじめとしたプレイ環境をチェックします。これは同時に、新商品をプロモーションする目的でも用いられる方法です。
投資分野(投資信託など)の場合
投資では、投資のパフォーマンスを判断する基準という意味で「ベンチマーク」が使われます。例えば日本株式を運用する投資信託の場合、日経平均株価やTOPIXなどの指数がベンチマークとして一般的です。
ベンチマークを上回っている場合はパフォーマンスが良好、下回っている場合にはパフォーマンスがよくないと判断されます。投資する側としては、何をベンチマークとしているかが分かれば、投資を続けるかどうかの判断がしやすいでしょう。
構成/編集部