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すでに古くなっている!?女性活躍推進のために本当に取り組むべき施策とは

2022.06.02

2019年に改正された「女性活躍推進法」について、2022年4月より義務化の対象が拡大したのはご存じだろうか。従業員101人以上の企業も、女性活躍推進に向けた対応をする必要があり、これから中小企業も女性活躍推進に本格的に取り組んでいくだろう。そこで、企業の女性活躍推進のコンサルティングを行う専門家に、すでに古いものとなっている施策とこれから必要になる施策を聞いた。

女性活躍推進施策のトレンドとこれまでの流れ

女性活躍推進施策といってもさまざまなものがある。昨今のトレンドについて、ダイバーシティ&インクルージョンを支援するコンサルティング会社、株式会社wiwiw(ウィウィ)の代表取締役社長 岩切貴乃氏に聞いた。

【取材協力】
岩切貴乃氏
株式会社wiwiw(ウィウィ)代表取締役社長
株式会社東芝に研究職として入社。その後、海外PCの商品企画・経営企画を経て、全社のダイバーシティ推進組織にて女性活躍支援、意識風土醸成を担当する。経営企画部、東芝未来科学館長を経て、2020年12月より株式会社wiwiwに転職。2022年4月より現職。
https://www.wiwiw.com/

「まず、ダイバーシティ&インクルージョン研修やアンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)研修が“管理職向け”に実施され、翌年には“全従業員向け”に展開する企業が多い傾向があります。女性活躍推進は組織風土改革です。実際に一人ひとりが力を発揮できるための組織風土改革において、お互いに認め合い、対話を重ねるカルチャー変革は、一度や二度の打ち手で実現できるものではないため、講演・研修・eラーニング・ワークショップ・座談会などを組み合わせながら、手を変え品を変え、実施していくことが重要です」

そんな女性活躍推進は、これまでどのような経緯をたどってきたのか。岩切氏は過去からの流れを次のように解説する。

「女性活躍支援は、『雇用機会均等法(1986年施行)』で入社した女性たちが管理職に登用される2000年代初頭から急速に大手企業で取り組まれ、(1)結婚・育児退職から継続就労へ、(2)育児との両立支援からキャリア支援へと大きく変遷を遂げてきました。2016年の『女性活躍推進法』の施行以来、大手企業を中心に急速に取り組みの進んだ女性活躍支援は、継続就労を促す段階から、両立支援を行う段階を経て、キャリア形成支援に進んでいます。女性の少ない業種では女性従業員の数を増加させることに苦戦している実情がある一方、着実に女性管理職数の増加、役員への抜擢登用を進めています。

大手企業は二極化の傾向があり、『ポーズ』として実施した企業と『本気』で取り組んだ企業で大きな相違が認められます。形だけ取り組んできた企業においては、SDGsやESG投資(※1)という社会からの期待もあり、今ここに来て本腰を入れ始めた感があります。

変わりつつある社会とグローバル化における激しい競争の中で、ようやく分かり始めた女性活躍支援の本当の意義を捉え直し、イノベーション創出のための経営戦略として、どのように取り組むかを思案している企業もあります」

※1 ESG投資:従来の財務情報だけでなく、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)要素も考慮した投資のこと。

そして女性活躍推進法の改正を受けて、企業には大きな変化が迫られているという。

「中小企業では行動計画立案・実行に向けて大きく変わりつつあります。中小企業は人数も少ないことに加え、トップダウンで急速に意識風土が変化できることから、大手企業に比べて効果を発揮しやすく、トップの意識一つで劇的変化を期待することができます。大きく変容している企業や、これから変わっていく企業、そしてなかなか変われない企業など、温度差が激しいのもこの中小企業の実態ではないでしょうか。ただし、誰もが活躍できる組織において、柔軟な働き方ができることが求められることから、長時間労働是正や在宅勤務への対応は今後の社会においては必然となるでしょう」

女性活躍推進の古い施策の例

女性活躍推進施策はすでに一部の企業で実施されてきた。しかし、このような施策はもはや古くなっているという。

●法定以上の育児休業など過剰な配慮につながりやすい両立支援制度

「古い施策の例として、育児休業や、短時間勤務の期間を長く設ける制度の施行が挙げられます。この制度の活用により、育児をしやすい環境は整うものの、当事者のキャリア形成においては、経験と成長の機会を失うことにもなります。育児休業や短時間勤務を長く取得することの弊害を、当事者たちが知らずに利用し続け、いつの間にか『マミートラック(※2)』に陥ってしまうのです。仕事へのやりがいを奪ってしまう要因ともなっています。

また、育児休業や短時間勤務の長期化は、女性が家事・育児を一手に引き受ける家庭内構造の定着や、夫との収入格差の拡大を生み出します。さらに、会社内では、育休がブランクとなり、かつ管理職や同僚、当事者のアンコンシャス・バイアスからキャリア形成を妨げています。子育てしているからほどほどに仕事をすることが当たり前であるなど、過剰な配慮により、責任ある仕事やチャレンジングな仕事から遠ざけられ、成長機会を失ってしまうなどが挙げられます」

※2 マミートラック:産休・育休から復帰した女性が責任の軽い仕事を任せられ、成長コースから外れる状況になること。

よくある女性活躍推進施策の失敗

また、施策を行うものの、失敗するケースもある。例えば、こんな施策が失敗しがちだという。

●男女別の課題をとらえずに施策を行う

「女性従業員のみを対象としたアプローチを『女性に特化した施策』とみられることを懸念して、『男女ともに』行う事例が増えています。例えば、『女性管理職育成研修』など、女性のみではなく男性も含めて実施したいという要望が増えつつあります。しかしながら、男女共通の研修を実施した場合、女性ならではの課題が浮き彫りになりにくく、問題解決につながらない恐れがあります。日本よりも10年、20年も進んでいると評されているアメリカでさえ、女性リーダー・女性管理職育成プログラムは男性のそれとは別にあることを考慮すれば、時限措置としての『ポジティブ・アクション(※3)』を実施することの有効性を今一度熟考したいものです」

※3 ポジティブ・アクション:社会的・構造的な差別によって不利益を被っている者に対して、一定の範囲で特別の機会を提供することなどにより、実質的な機会均等を実現することを目的として講じる暫定的な措置のこと。
出典:内閣府男女共同参画局

●導入プログラムの目的やゴールが共有されていない

「『メンタリングプログラム(※4)』についても、実施した企業から『やったが効果がなかった』とか『導入しているが効果がみられない』という声を聴くことがありますが、具体的に話を伺うと、メンタリングプログラムの目的やゴールが共有されておらず、メンターが単なる相談相手に終わっている場合が多いようです。制度や仕組みの導入時には、目的意識を持った取り組みを実施することやゴールイメージを明確にすることが、目標とするゴールへの近道であることを強調したいです」

※4 メンタリングプログラム:厚生労働省が支援している事業。主に、豊富な知識と職業経験を有した社内の先輩社員(メンター)を立てて定期的に面談を行うことを指す。

おすすめの女性活躍推進施策

では、これから企業はどのような女性活躍推進施策を行っていくのがいいだろうか。岩切氏は、次の3つを挙げる。

1.実態を知り、ゴールとのギャップを認識する

「企業における実態がどういう状況にあり、何が課題であるかを分析・抽出することが肝要です。目指すゴールと課題が明確であれば、あとはアクションアイテムを定めて実行するだけとなります。また女性管理職比率以外の数値データを定点観測することで、社内のジェンダーギャップ、女性の働きがいの実態やキャリア形成を見える化し、女性活躍推進のKPIとして用いることで、可能な指標を得られます。

「採用・配置・育成・評価・登用」「職場マネジメント」「キャリア意識」「両立支援/ワーク・ライフ・バランス」の分野で、男女・年代別にどのように社員が捉えているのかを、数値化して理解することが有効です。」

2.組織長である「管理職の意識を変える」~アンコンシャス・バイアスを学ぶ~

「組織に変化を起こす原動力は、管理職層の意識変革にあります。まず第一歩は、管理職自身がアンコンシャス・バイアスは誰にでもあることだと理解する必要があります。その上で、普段から『本当に本当?』と自ら問いかける習慣が自身の認識を変え、行動を変え、他のメンバーに影響を与え、組織を変えていく力となります。このトレーニングは組織全体(構成員全員)で受講することで、さらに現状に対する疑問を投げかける契機となります。アンコンシャス・バイアスは誰にでも存在するものですが、女性活躍推進のキーパーソンである管理職は、女性活躍に取り組む経緯や背景を理解するとともに、自身のアンコンシャス・バイアスに意識を向け、男女問わず部下の成長を支援する方法を身につけてもらう必要があります」

3.当事者である「女性社員がキャリアについて考える」~キャリアデザインを描く~

「周囲にロールモデル(社員各自がモデルにしたい人材)を見つけやすい男性に比べ、女性は周囲にロールモデルを見つけにくいケースが多く、ライフイベントの影響を受けやすいこともあわせて、中長期の自身のキャリア像を想像しにくいといわれています。こうした違いがあることから、女性従業員に対する『キャリアデザイン』を描く重要性は男性従業員向けとは一線を画しています。自分自身のキャリア計画について家族の年齢を加味して考える機会や、自身のキャリアについてじっくり考える時間を作ることは、仕事に対するモチベーションを上げ、自身の成果創出にもつながります。このトレーニングは、本人にとっても、会社にとってもwin-winの結果をもたらします」

これから女性活躍推進施策を行っていく際に持つべき考え方

これから企業はどのような考えを持って女性活躍推進施策を行っていくべきか。

「女性活躍推進と聞くと女性だけの課題であると考える方もまだまだ多いですが、女性活躍のベースには『働き方改革』があり、男性の課題でもあります。また、女性が活躍している企業と業績の間には正の相関関係があることが知られており、女性活躍は経営課題であることが知られています。経営者はこの事実を受け止め、女性活躍推進を経営課題として取り組む覚悟と意志が必要でしょう。女性活躍推進はESG投資の観点からも注目を浴びており、収益創出機会のベンチマークとして、SDGsと共に関心が高まっています。

ESG投資、少子化、イノベーション創造という観点から、グローバル社会において、今後企業が生き残るためには必須の取り組みとなります。企業競争力の大きな鍵であり、計画を持って進めるべきでしょう」

今後、中小企業に義務化された女性活躍推進施策。実施者も持ちうるアンコンシャス・バイアスをいかに無くすか、そして女性社員の立場に立てるかなどがポイントとなりそうだ。

取材・文/石原亜香利

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