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「えーっと」「〇〇だと思います」ついやってしまいがちな〝説得力のない〟話し方を改善するヒント

2022.05.24

どのような環境でも活かせるポータブルスキルの一つである「話す力」。けれど、話すことに苦手意識を持つ人は多いものだ。特に日本人は「えーっとを連発する」「相手の目を見ない」「言い切らない」など、説得力のない話し方の癖があるといわれる。そこで今回は、日本人によくある話し方の癖6つを取り上げ、話し方教室の講師に癖の直し方を聞いた。

日本人の話し方のよくある癖の対策

今回、話を聞いたのは、話し方教室「日本話し方センター」の代表であり、講師も務める横田章剛氏。多くの日本人の話し方を改善してきたその経験から、よくある話し方の癖について直し方をアドバイスしてもらった。

なお、ピックアップする癖はあくまで癖であり、悪いとは言い切れないのだが、一般的によくないと言われるものである。なぜよくないのか、の理由も併せて横田氏に解説してもらった。

【取材協力】

横田章剛氏
株式会社日本話し方センター 代表取締役社長

日本話し方センターは今から69年前の1953年に江川ひろしが立ち上げた、日本で最初の話し方教室。以来、経営者、管理職、医師、税理士、会社員、就職活動を控えた学生など様々な人が受講し、その人数は30万人以上。https://www.ohanashi.co.jp/

1.言い切らず、何でも「○○だと思います」と一個人の意見だと匂わせる

「日本人はどうしても相手を傷つけたくない、リスクを負いたくないという意識が働いてしまい、曖昧な表現を使ってしまいがちです。『○○だと思います』という表現の他にも『このパフェ、美味しいかも』の『○○かも』などもよく耳にする曖昧表現です。気持ちは分かりますが、仕事で上司に報告する際や取引先へのプレゼンなど、相手に信頼されなければならない場面で曖昧な話し方をすると、自信が感じられず、頼りない印象になってしまい、相手の納得や同意は得られないでしょう。

また、会社や部門の方針、自分がこれから行動することを宣言するなど、話に力強さが求められる場面で曖昧な話し方をすると、相手は本当に話の通りに行動するのか疑問に感じてしまい、話を受け入れてもらいにくくなります」

●対策

「日常会話なら曖昧な話し方でも支障はありませんが、仕事で話をする場合は、極力『やったほうがいいと思います』ではなく『やるべきです』などと、言い切ることを意識しましょう。

しかし、言い切るには少し勇気が必要です。もし言い切ったことと違う結果になったりしたらどうしよう、という不安は誰しも頭をよぎります。

ですので、言い切る際には次の2つのことに留意してください。一つめは、時や場所が変わっても違うことは言わないということです。あるときは『やるべきです』と言い、他の場面では同じテーマについて『やるべきではないかも』と言ったりすると、相手からの信頼は得られません。自分が確信を持っていることを言い切るようにしましょう。

二つめは、言い切ったことは実行で示すということです。人は言ったことよりも、やっていることでその人を判断するものです。言い切ったからにはそれを行動で表すようにしてください」

2.相手の目を見ないで話す

「恐くて話しているときに相手の目を見ることができない、という人が多いです。知り合いとの雑談なら目を見ることができても、大勢の前でスピーチをすると、多くの目がこちらを向いていることにひるんでしまって、下を向いて話をしてしまうということもよくあることです。

しかし、相手の目を見ずに話をすると、相手は自分に話してくれているという気がしないので、話を聞こうという意欲や集中力がなくなり、段々と話が聞けなくなってしまいます。また、自信がないように見えてしまうので、話に説得力も出てきません」

●対策

「上に述べたことがないように、できるだけ相手の目を見て話をしたいものです。しかし、やはり人の目をじっと見るのは恐いもの。そういう場合は、相手の目を見るのではなく、鼻やあごなど、目の近くを見て話すようにしてみてください。相手との距離にもよりますが、目の周辺を見ているだけで、相手は自分の目を見て話してくれていると思ってくれます。それなりに聞き手との距離がある場合は、ネクタイの結び目を見るのもよいでしょう。

また、相手の目や目の周辺を見る場合でも、じっと見る必要はありません。半分以上見ればよいでしょう。相手の目を見る目的は、『その人に対して話していることが相手に伝わり、自信なさげに見られない』こと。それが達成されている限り、頑張ってじっと目を見る必要はないのです。また、あまりに目をじっと見られると相手も落ち着かなくなって話を聞いてくれなくなります。集中して話を聞いてもらうためには、視線を外すことも大事なのです」

3.抑揚のない声で話す

「抑揚がなくて一本調子で話す人はとても多いですね。抑揚をつけずに話すデメリットは主に2つあります。一つ目は、話をちゃんと聞いてもらえないことです。抑揚のない一本調子の話は面白みがないので、時間が経つにつれて興味を持って聞けなくなります。およそ2分ほど経過すると、だんだん集中できなくなってきます。

二つ目は、相手の心に響く話にならないことです。一般に、話が苦手な人は、とにかくきちんと話そうと考えています。しかし、これでは話すこと自体が目的になってしまいます。私は、話す目的は、自分の話を理解した上で共感してもらい、場合によっては私の意図通りに動いてもらうことだと思っています。人間は感情の動物ですので、何よりも、話を聞いて共感してもらうことがとても大事です。そのためには、抑揚のあるメリハリのついた話し方がどうしても必要なのです」

●対策

「抑揚をつけるとは、声や言葉に気持ちを乗せて話す、ということです。その訓練として、朗読をおすすめします。YouTubeには朗読の仕方を解説した動画がたくさんあります。それらを見ながらご自宅で朗読の練習をして、感情豊かに話す訓練をしてください。はじめは恥ずかしいので、なかなか感情を乗せて読むことができないと思います。しかし、続けていくと次第に感情を込めて文章を読むことができるようになります。そうすると普段の会話にも抑揚がつけられるようになります。

ところで、普段は抑揚のある話し方ができるけど、人前で話すときなど緊張した場面になると一本調子になる、という人もいます。そういう人は、大勢の人を見るのではなく、その中の一人の顔を見て話すとよいでしょう。大勢の前で話すと思うと緊張して抑揚がつかなくなります。

しかし、その中の一人の顔を見て、その人に語りかけるように話せば、普段会話しているのと同じ感じで話すことができます。ワンフレーズ話したら、別の人の顔を見てワンフレーズ話す。これを繰り返すことで、抑揚をつけて話し続けることができます」

4.「え~」「え~と」「あの~」を連発する

「日本話し方センターの話し方教室を受講される方は、スタート当初、『え~』『あの~』を連発されます。多い人だと1分間の自己紹介の間に10回以上『え~、あの~』を言う人もいます。日本話し方センターでは『え~、あの~』を『言葉ぐせ』と呼んでいます。言葉ぐせが多いと話はとても聞きづらくなります。

話し始めた当初は、聞き手もそんなに気にしていません。しかし、これが続くと次第に言葉ぐせが気になって、話を聞く集中力がなくなっていきます。また、言葉ぐせが多いとその分、話す時間が延びます。『え~、あの~』という短い言葉ぐせでも、回数を重ねると結構な時間になるのです。さらに、そもそも言葉ぐせが出るのは、次に話すことを考えているからです。なので、言葉ぐせが出る話はそもそもまとまっていないので、聞き手には響かないのです」

●対策

「言葉ぐせをなくすためのトレーニング方法はいくつかあります。日本話し方センターでは2分間のスピーチを作って、それを何度も声に出して練習することをお願いしています。声に出して練習すると話はまとまってきますし、話す内容も記憶できるので、聞き手が気になるほどの言葉ぐせは出なくなります。結婚式のスピーチや重要な発言をする際は事前に何度も声に出して練習することをおすすめします。

また、別の方法として1分間、言葉ぐせを言わずに話すというトレーニングも有効です。話す内容は何でも結構です。とにかく1分間話し続けて、その間に言葉ぐせが一つも出なければ合格です。ただし、本人は話すことに夢中で、言葉ぐせを言ったかどうかは分からないので、このトレーニングは誰かに聞いてもらいながら行うとよいでしょう。実は、私はこのトレーニングで言葉ぐせをなくしました」

5.ダラダラと話す

例「昨日、A商事にご挨拶に伺ったところ、部長はご不在で課長にお会いできたんですけど、課長もお忙しそうで充分お話ができなかったんですが、最近の原材料費の値上がりで、…」

「このようにダラダラと話をする人をよく見かけます。こういう話し方をされると、聞き手は次々に耳に入ってくる話を頭の中で処理する時間を取ることができず、次第に話について行けなくなります。

また、ダラダラとした話し方はとても歯切れが悪く、耳に心地よくないため、徐々に話を集中して聞けなくなってしまいます。何より、この話で何が言いたいのか、最後まで聞かないとわからないので、聞き手はイライラしながら聞くことになります」

●対策

「こうした話し方を避けるために心がけることは、主に二つあります。一つは、一文を短くするということです。先ほどの例ですと『昨日、A商事にご挨拶に伺いました。部長はご不在で課長にお会いしました。課長とも充分にはお話できませんでした。しかし、・・・』というように、一つの文を短く話します。そして、文と文の間に少し間を取るのです。

そうすることで、聞き手は今聞いた短い文章を頭の中で理解する時間を取ることができます。そしてまた次の短い文章を聞いて、理解する。この話し方だと聞き手は理解しながら話が聞けますし、テンポもよいので聞き心地も良く、集中が途切れにくいのです。

二つ目は、結論を短い言葉で先に言う、ということです。先に述べた例ですと、『A商事を訪問しましたが、しばらく新たな注文はなさそうです』『A商事の部長が交代されるようです』など。こうすると聞き手は話の趣旨がわかっているので、多少ダラダラとした話をしても理解してくれます。朝礼のスピーチでも『今日は、インプットしたらアウトプットしよう、という話をします』『今一度、職場の安全について考えよう、というお話をします』など、言いたいことの結論を先に言うと、聞き手は格段に話を理解しやすくなるでしょう」

6.話がハッキリと聞き取れない

「新型コロナ感染拡大以降、マスクをして話をすることが当たり前になっています。コンビニやスーパーなどでお会計の際に店員さんに話しかけられると、アクリル板越しでマスクをして話しかけてくるので、何を言っているか分からず、聞き返すことがたびたびあります。みなさんにもこういうご経験は少なからずあるのではないでしょうか。

話が聞き取れないと、人はイライラしてしまうので、『え?』と聞き返す声もトゲのあるトーンになりがちです。これではスムーズなコミュニケーションは取れません」

●対策

「話をハッキリと伝えるためには、相手に充分に届く大きな声で話すことが何よりも大切です。声が小さい人は、喉をしめながら話していることが多いのです。そういう人はあくびをしたときを想像しながら思い切り喉を広げて声を出すようにするとよいでしょう。実際にやってみるとわかるのですが、あくびをすると、喉はとても大きく広がっています。その状態で話す訓練をすれば、自然に大きな声が出るようになります。

また、話が聞き取れない原因として、滑舌がよくないこともとても多いです。滑舌のよくない主な原因の一つに、子音の発音が弱い、ということがあります。子音をはっきりと発音しないと『ホタル』が『オタル』に聞こえたり、『乗ります』が『降ります』に聞こえたりします。特にマスクをしていると言葉がぼやけてしまいますので、子音をはっきりと発音することを心がけましょう」

知っておきたい話し方のコツ2つ

誰でも一つや二つは、話し方の癖を自覚しているものだ。ぜひ対策を実施してみよう。そして日本人の話し方を踏まえて、全般的な話し方のコツを横田氏に教えてもらった。

1.常に「相手に受け入れられる話し方」を意識する

「『相手に受け入れられる話し方』を常に意識して欲しいと思っています。平成から令和の時代になり、世の中はますますフラットな社会になってきています。そのため、昭和の時代なら、上司が『なんでお前はミスばかりするんだ!』と怒鳴っても、部下は素直に自分が悪いと思い、上司に謝ったでしょう。

しかし、今はそういう言い方をしても、部下に『そんな言い方をしなくてもいいじゃないか!』と反感を持たれることが少なくないと思います。部下を叱るにしても、『期日通りに資料ができたし、文章もわかりやすいね。ただ、数字の見直しをキチンとしないと今回のようにお客様に迷惑をかけるからその点、注意してもらいたい』と、相手に受け入れられる話し方をせねばならない、そんな時代になっているのです。しかし、多くの人はその変化に気付いていないか、気付いていてもどのように話せばいいのかわからないのではないでしょうか。

では、どうすれば相手に受け入れられる話ができるのか。まず相手のことを尊重し、相手の立場に立って物事を考えることを意識することが肝要だと思います。そもそも相手を認める気持ちがないと、それが態度や声の音調に出てしまい、いくら口ではいい話をしても相手は受け入れないでしょう。お互いを尊重することが、話をする上でも、とても大切です。その上で、相手に受け入れられる話し方を自分なりに見つける努力を継続することが必要だと思っています」

2.必要なことを、必要な時に、必要なだけ話す

「『必要なことを、必要な時に、必要なだけ話す』。これは1953年に日本話し方センターを創業した江川ひろしの言葉です。

この数年の間に、日本の生産性、特に事務職の生産性が低いという問題がクローズアップされています。私はその大きな原因の一つに、コミュニケーションコストの増加があると思っています。時間をかけて話をしても、その趣旨がうまく伝わらない。上司に何度報告しても、よくわからないと言われてしまう。こうしたことが、組織としての迅速な行動を妨げているのではないでしょうか。この問題を改善する一つのカギが、この江川ひろしの言葉にあると思っています。

私たちが日常話していることは、言わなくてもいいことだったり、今話すべきではないことだったり、ダラダラと長く話したりしていることが多いです。それがお互いの時間を際限なく奪ってしまっています。そして、結果的に生産性に影響しているように感じています。

適切な時間で、的確に相手に意図を伝えるには、この江川ひろしの言葉をぜひ意識していただきたいと思います。

そして、話す前に、自分はこの話でこれが言いたい、ということを事前にまとめておくこともおすすめします。私たちは、相手に何を伝えたいか曖昧なまま話しはじめることがよくあります。その結果、とりとめのない話になったり、相手に伝わらない話になったりするのです。先に述べた、話の結論を短い言葉でまとめておけば、こうしたことは防げるでしょう。ぜひ実行していただきたいと思います」

話し方は職場、家庭、趣味などどこに行っても使う重要なスキルだ。自分の話し方にどこかうまくいかないと感じているなら、ぜひヒントにしてみよう。

取材・文/石原亜香利

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