ものものしい演出とともについに「ミステリー缶」の全貌が明らかに!
2022年4月26日から、商品情報を一切明かさない「ミステリー缶」という形で、なんと100万本ものサンプリングを行っていたキリンビールの新チューハイ。
※「商品情報をふせて100万本サンプリング!謎に包まれたキリンの新しいチューハイ「ミステリー缶」の正体」(https://dime.jp/genre/1384137/)。秘められていた情報が、2022年5月16日、ついに解禁となった。
「“完璧な新キリンチューハイ“お披露目発表会」檀上のスクリーンには、ミステリー缶とともに、シルエット画像が…。
スモークの中、新チューハイのパッケージと、CMに出演する高橋一生が姿を現した。
ものものしい演出だが、正体がわかってみて「氷結だったのか」と拍子抜けした人も多いだろう。これだけミステリアスな大キャンペーンを仕掛けた新商品の正体が、発売して20年もたち、今やチューハイの代名詞と言っていいくらい馴染みのある「氷結」って…。なんでわざわざそんな手法をとったのかが、正体がわかった今となってはミステリーのような気も…。
左が、ブランド名を伏せて100万本サンプリングされた「ミステリー缶」。右がすでに発売されている「氷結」
コロナ禍で増大している「リフレッシュ」へのニーズ
「歴代最高水準の完璧さに進化させることができた。自信を持って、この春より全国で展開していく」と語るキリンビールの松村孝弘RTDカテゴリー戦略担当カテゴリーマネジャー
キリンビールの松村孝弘RTDカテゴリー戦略担当カテゴリーマネジャーによると、今回のリニューアルは、コロナ禍の閉塞感の中で、より増大しているリフレッシュへのニーズに応えたもの。新たに開発した「凍結レモン製法」で、収穫したレモンを新鮮なまま凍結し、熱をかけずに低温で加熱してエキスを抽出しているという。
「この製法を取ることで、これまでよりも果実のみずみずしくクリアな味わいがさらに増し、雑味のないクリアな味わいなどの香味が向上して、歴代最高水準まで完璧な大きさに進化させることができました」(松村氏)。
同社によると、今回の新商品を商品名を伏せて試飲してもらい、477名に対して「この味わいは完璧か」と聞き、「とてもそう感じる」「そう感じる」「やや感じる」「全くそう感じない」の中から上位3項目の回答者が97%だったという。ではなぜ素直に、「みなさんご存じの氷結が、過去最高に美味しく進化しました!」と打ち出さなかったのか。
缶チューハイのイメージを変えたブランドゆえの葛藤
「氷結」が発売されたのは今から20年以上前の、2001年7月。1980年代前半から、飲料会社各社が缶チューハイを発売していたことを考えると、後発だ。だがそれはまでチューハイというお酒のイメージは「アルコールが強い」「人工的な味」というイメージが強く、中高年の男性向けというイメージを持たれていた。
そんな中で、ビール愛飲者も取り込む新発想のチューハイを目指し、“スッキリ爽やかなおいしさ”を追求して開発されたのが「氷結」だ。レモンを搾汁した後に渋味や雑味を取り除き、氷点下で凍結する同社初の製法を採用し、缶チューハイのイメージを大きく変えた。
発売直後から大ヒットを記録した「氷結」は、その後、“スッキリ爽やかなおいしさ”を軸にしつつも、その時代のニーズを取り込み、横展開を拡大。現在、ブランドサイトでは、スタンダードシリーズが9種類(限定出荷1種類を含む)、「無糖レモン」シリーズが3種類、「ストロング」シリーズが6種類、糖類とプリン体が0の「ZERO」シリーズが2種類、計20品におよぶ。発売20周年となる2021年には、累計販売本数が160億本を突破。
これだけメジャーな「氷結」ブランドの中でも、主力商品である「シチリア産レモンチューハイ」だ。いくら「歴代最高の美味しさ」と訴えても「飲んだことがあるからだいたいわかってる」と感じる人がほとんどなのは必定。「今回は、全ての思い込みを取り払っていただきたく、先入観なく、本当の新チューハイの美味しさに気付いていただきたいという思いでブランド名を伏せて、新チューハイをご紹介するという取り組みを実施しました」(松村氏)。つまり、あまりに深く浸透し生活に根付いているがゆえに、新しさを実感してもらうためには、ブランド名を伏せる以外に方法がなかったのだろう。
ツイッターには、「ただの氷結レモンサワーじゃん、と思ったら変なクスリ臭さがなくてめっちゃ美味しくなってた」という声や、「味も美味しいけど、発売前に飲めた事の優越感に酔った」という声も…。正体がわかった時の肩すかし感も含めて、「氷結」を改めて見直させるキリンビールの計算は成功したのかもしれない。
「完璧な飲み方」は、口の広いグラスに氷を満たし、そこに注ぐことだという
取材・文/桑原恵美子
編集/inox.