TwitterやInstagramなどのSNSでは、テレビやネット配信をスマートフォンで撮影したと思われる映像・画像がシェアされることがあります。注目度の高い映像や、風刺が効いている画像などは幅広く拡散され、注目を集めるケースが多いです。
しかし、テレビやネット配信の撮影画面を勝手にアップロードする行為は、著作権法違反に当たる可能性があります。速報性や娯楽性といったプラスの面ばかりではなく、著作権法に関する問題点についても、正しい知識を備えてSNSをご利用ください。
今回は、テレビやネット配信の画面を撮影してインターネット上にアップロードする行為につき、著作権法上の問題点をまとめました。
1. テレビ・ネット配信の撮影画面を無断でアップすることの問題点
テレビ・ネット配信の撮影画面を、権利者に無断でインターネット上にアップロードした場合、著作権や著作者人格権の侵害に当たる可能性があります。
1-1. 著作権侵害に当たる可能性がある
テレビやネット配信の映像には、制作者などに「著作権」が認められます。映像の一部を切り取った動画や画像も、同様に著作権による保護の対象です。
SNSへの投稿など、インターネットを通じて公に著作物を配信する行為は、著作権者が専有する「公衆送信権」の対象となっています(著作権法23条1項)。
したがって、著作権者の許諾を得ずに、テレビやネット配信の撮影画面をインターネット上にアップする行為は、原則として著作権侵害に当たります。
また、テレビやネット配信の映像・画像を勝手に改変してアップロードした場合、「翻案権」の侵害にも当たる可能性があります(著作権法27条)。
1-2. 著作者人格権侵害に当たる可能性がある
著作権とは別に、テレビやネット配信の映像を創作した人には「著作者人格権」が認められます。
テレビやネット配信の撮影画面をインターネット上にアップする際、以下のいずれかに該当する場合には、著作者人格権侵害に当たる可能性があるので注意が必要です。
①著作者名を正しく表示していない場合
→氏名表示権の侵害に当たる可能性があります(著作権法19条)。
②映像・画像を勝手に改変した場合
→同一性保持権の侵害に当たる可能性があります(著作権法20条)。
2. 撮影画面のアップロードが認められる場合は?
インターネット上でテレビ・ネット配信の撮影画面をアップロードすることが認められるのは、主に以下のいずれかに該当する場合です。
2-1. 著作権者の許諾を得ている場合
著作権者の許諾を得れば、インターネット上でテレビ・ネット配信の撮影画面を適法にアップロードできます。特に最近では、収益のシェアなどを条件として、切り抜き動画のアップロードを許諾しているインターネット配信者も出てきました。
撮影画面をアップロードする際には、許諾条件を遵守する必要があります。また、著作権者と著作者が別主体の場合には、著作者人格権の侵害に当たらないように、氏名表示や改変に関するポイントにご留意ください。
2-2. 家族内だけでシェアする場合
テレビ・ネット配信の撮影画面を家族間でシェアする行為は、不特定または多数人を意味する「公衆」への送信ではないため、公衆送信権の侵害が成立しません。
また、著作権の一つである「複製権」(著作権法21条)との関係でも、家族間でのシェアは「私的使用のための複製」に当たるため、著作権者の許諾が不要とされています(著作権法30条1項)。
たとえば、家族しかアクセスできないクラウドサービスのアカウントに、テレビ・ネット配信の撮影画面をアップロードする場合、著作権者の許諾は不要と考えられます。
ただし、友人や会社の同僚など、家族以外の者に撮影画面をシェアする場合には、原則として著作権者の許諾が必要となる点に注意が必要です。
2-3. 引用の要件を満たす場合
著作権法上の「引用」に該当する場合には、著作権者の許諾を得ずとも、テレビ・ネット配信の撮影画面をインターネット上にアップロードできます(著作権法32条1項)。
「引用」と認められるための要件は、以下のとおりです。
①著作物が公表済みであること
②引用の必要性があること
③引用部分とその他の部分を明瞭に区別すること
④本文と引用部分が主従の関係にあること
⑤著作物を改変しないこと
⑥出典を明記すること
引用の要件については、以下の記事も併せてご参照ください。
参考:プレゼン資料に他人が作成した図表や写真を貼ったら著作権侵害になる?|@DIME
3. 撮影画面に関するよくある問題事例|違法?合法?
テレビやネット配信の撮影画面のインターネット投稿に関して、よくある問題事例を2つピックアップしました。
これまで解説した著作権法上の取扱いを踏まえて、各事例の法的な問題点を検討してみます。
3-1. スポーツのハイライト動画をSNSにアップする行為
サッカーの得点シーンなど、スポーツのハイライト動画に短文の感想を添えてSNSにアップする行為は、著作権者の許諾を得ていない限り、著作権侵害に該当する可能性が高いです。
ハイライト動画の掲載が「引用」だと主張しても、ほとんどの場合「本文と引用部分が主従の関係にあること」という要件を満たさないでしょう。
動画と短文の感想では、引用部分である動画の方が「主」であり、主従が逆転していると考えられるからです。
ただし、ブログなどに詳細な試合のレポートを掲載し、試合場面の紹介として短時間の動画をアップする場合などには、適法な「引用」と認められる可能性があります。
3-2. いわゆる「コラ画像」をSNSにアップする行為
テレビ画面の撮影画像などを加工して作成した、いわゆる「コラ画像」をSNSアップする行為は、著作権および著作者人格権の侵害に該当する可能性があります。
著作物である画像を勝手に改変する行為は、著作権者に対する翻案権侵害、および著作者に対する同一性保持権侵害に当たるからです。また、撮影画像を勝手にアップロード行為は、著作権者に対する公衆送信権侵害にも該当します。
なおSNS上では、テロップの表示された映像の撮影画像が、特に改変を加えず風刺的に投稿されるケースもあります。このようなSNS投稿については、翻案権侵害や同一性保持権侵害の問題は生じません。
しかし、著作権者に対する公衆送信権侵害の問題は、依然として残ります。
引用の要件との関係でも、「引用の必要性があること」や「本文と引用部分が主従の関係にあること」の要件を満たさず、適法な引用と認められる可能性は低いでしょう。
取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
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