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プレゼン資料に他人が作成した図表や写真を貼ったら著作権侵害になる?

2021.11.22

プレゼン資料の中で、他人が作成した図表や、他人が撮影した写真などを使用したい場合もあるかと思います。

プレゼン資料で図表や写真を使用する際には、著作権侵害に当たらないように注意が必要です。

今回は、プレゼン資料に図表や写真を貼ることについて、著作権法上のルールを紹介します。

1. 社内向けプレゼン資料に図表・写真を貼ることは「私的使用」?

図表や写真に「創作性」(作者の思想・感情が個性的に表現されていること)が認められる場合、著作物として保護されます。

プレゼン資料の中で、著作物を勝手に複製して使用することは、原則として、著作権者の「複製権」(著作権法21条)を侵害する違法行為です。

また、プレゼン資料をweb上にアップロードして配信する行為は、「公衆送信権」(同法23条1項)の侵害にも当たる可能性があります。

なお著作権法30条1項では、「私的使用のための複製」であれば、著作権者の許諾を得ることなく行うことができると定められています。

しかし、プレゼン資料で図表・写真を使用することは、社内向けの資料であっても、「私的使用」には当たらないと考えられます。

「私的使用」は、

「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること」

と定義されており、会社の同僚と共有する目的で作成されるプレゼン資料での使用は、私的使用の範囲外と解されているからです。

2. プレゼン資料の中で、図表や写真を適法に使用するには?「引用」の要件

プレゼン資料において、著作権者に無断で図表や写真を使用することは、原則として違法です。

著作権者から使用許諾を得られればよいですが、手間やコストなどの問題から、逐一許諾を得るわけにはいかないケースも多いでしょう。

その場合には、著作権法32条に基づく「引用」の要件を満たすことにより、著作権者の許諾を得ることなく、プレゼン資料中で図表や写真を使用することができます。

「引用」の際に満たすべき要件は、以下のとおりです。

2-1. 著作物が公表済みであること

「引用」が認められるのは、公表済みの著作物に限られます(著作権法32条1項)。

たとえばAさんが私的に撮影し、公表されていない写真を、「Aさん撮影」などと称してプレゼン資料に無断で掲載することは、著作権法違反に当たります。

未公表の著作物を使用したい場合には、必ず著作権者の許諾を受けましょう。

2-2. 引用の必要性があること

プレゼン資料で著作物を「引用」として使用できるのは、あくまでもメインの説明を補足するうえで必要な範囲内に限られます。

(極端な例ですが)たとえば、プレゼンの流れに何ら関係のない写真を、単に「きれいだったから」という理由で、著作権者の許諾なくプレゼン資料に掲載することはできません。

2-3. 引用部分とその他の部分を明瞭に区別すること

著作物を適法に「引用」するためには、引用部分とその他の部分(自分で作った部分)が明瞭に区別できる状態にすることが必須となります(明瞭区別性)。

図表や写真であれば、画像の下部などに出典を明記しておけば、明瞭区別性の要件を満たすことができるでしょう。

一方、他人の文章を引用したい場合には、鍵括弧を付したり字体を変えたりして、その他の部分とはっきり区別がつくようにしておくことが必要です。

2-4. 「主」である本文に対して、引用部分が「従」であること

引用する図表や写真が非常にわかりやすいのだとしても、

「これを見ればわかります」

と言わんばかりに、文章での説明を全く記載しないような場合には、適法な「引用」の要件を満たさない可能性が高いです。

あくまでも、自分で作成する部分(本文)が「主」、引用部分が「従」という関係性でなければなりません。

プレゼン資料に図表や写真を「引用」する際には、その図表や写真が説明のメインにならないような工夫を行いましょう(たとえば、図表や写真についての分析を記載するなど)。

2-5. 著作物を改変しないこと

著作物を改変してプレゼン資料に掲載することは、著作権者の「翻案権」(著作権法27条)を侵害する行為です。

「引用」の際にも、著作物を改変(翻案)することは認められていません。

したがって、トリミングや加工などを行わずに、オリジナルのまま図表や写真を掲載する必要があります。

2-6. 出典を明記すること

著作物を適法に「引用」するには、出典を明記することが必須となります(著作権法48条1項1号)。

図表や写真の場合、以下の例を参考にして出典を記載するとよいでしょう。

<書籍からの引用>
X田Y介(2021)『プレゼン資料で写真を引用する際の注意点(第3版)』〇頁, C出版

<ウェブサイトからの引用>
X田Y介「プレゼン資料で写真を引用する際の注意点を解説」ホームページ名(最終閲覧日:2021年〇月〇日)https://www.〇〇〇

社内資料であっても、引用のルールを軽視していると、ご自身や会社が著作権侵害の責任を問われてしまう可能性がないとは言えません。

他人の図表や写真を使用する際には、著作権法の引用ルールに気を配って、必要な対応をとってください。

取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
https://abeyura.com/
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