在宅勤務(テレワーク)中の従業員の仕事ぶりには、会社の監視が十分に及びにくい部分があります。会社の監視が緩いことに乗じて、勤務時間中に私用による離席・外出をしている方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、在宅勤務中に無断で私用外出した場合には、懲戒処分などのペナルティを受ける可能性があります。もし勤務時間中に離席・外出したい場合には、緊急の場合を除いて、上司などの許可を得るようにしてください。
今回は、勤務時間中の離席・外出につき、認められる場合と認められない場合、無断離席・外出が発覚した際のペナルティなどをまとめました。
1. 在宅勤務中に認められる離席・認められない離席
裁量労働制が適用される場合などを除いて、会社で働く方には原則として「定時(=勤務時間)」が設けられています。勤務時間中は、就業規則等の規定に従い、会社の業務に専念しなければなりません。
オフィス勤務の場合と同様に、在宅勤務中にも離席が認められる場合はありますが、長時間の私用外出は認められないと理解すべきです。
勤務時間中の離席・外出が認められる場合・認められない場合の例を、それぞれ見てみましょう。
1-1. 離席・外出が認められる場合の例
在宅勤務中の離席・外出が認められるかどうかは、基本的にオフィス勤務の場合と同様に考えればよいでしょう。たとえば以下の場合には、離席・外出が認められます。
①トイレに行くための離席
トイレに行くための短時間の離席は、専念義務に違反しません。長時間にわたる勤務の中で、生理現象としてトイレに行くことは不可避だからです。
ただし、あまりにも長時間または頻繁に離席する場合には、専念義務違反に当たる可能性があるので注意しましょう。
②休憩時間中の離席・外出
休憩時間は、従業員が完全に自由に利用できます(労働基準法34条3項)。したがって、休憩時間中に離席・外出することは、どのような理由であっても問題ありません。
③会社の許可を得た理由による離席・外出
離席・外出について会社の許可を得た場合には、その許可の範囲内で専念義務が免除されます。ただし、離席・外出が長時間にわたる場合には、有給休暇の充当などを求められる可能性があるので注意が必要です。
④やむを得ない緊急の理由による離席・外出
会社の許可を得ずとも、やむを得ない緊急の理由がある場合には、離席・外出が認められる可能性があります(例:子どもが急病にかかり、すぐに病院へ駆けつけなければならない場合)。
ただしこの場合も、会社に離席・外出する旨の連絡は入れておきましょう。また、離席・外出時間については、有給休暇の充当などを求められる可能性があります。
1-2. 離席・外出が認められない場合の例
業務への専念義務がある以上、純粋な私用目的の離席・外出は認められません。たとえば以下の場合には、離席・外出が専念義務違反に該当します。
①晩御飯の買い出しのための離席・外出
たとえ業務が比較的落ち着いているとしても、私的な買い出しのために離席・外出することは専念義務違反です。
②子どもの送り迎えのための離席・外出
勤務時間中に子どもの送り迎えをしなければならない場合、勤務時間をずらしてもらえるように会社と相談する必要があります。子どもを送り迎えするための離席・外出が勤務時間中に行われた場合、専念義務違反です。
③趣味に興じるための離席
ゲームなどの趣味に興じる目的で勤務時間中に離席・外出することは、専念義務違反に当たります。
2. 在宅勤務中に無断で離席・外出した場合のペナルティ
在宅勤務中に無断で離席・外出した場合、会社から以下の不利益な取扱いを受ける可能性があります。会社でのキャリアに傷を付けないためにも、勤務時間中に正当な理由のない無断離席・外出をすることは控えましょう。
2-1. 就業規則違反で懲戒処分を受ける
勤務時間中の無断離席・外出は就業規則違反に該当するため、懲戒処分の対象となります。
すぐに改めれば戒告などの軽い処分で済むこともありますが、常習性がある場合には減給以上の重い懲戒処分を受ける可能性が高いので要注意です。
2-2. 欠勤として取り扱われる
無断離席・外出していた時間については、賃金の計算上「欠勤」と取り扱われる可能性があります。
この場合、欠勤していた時間分の賃金が減らされてしまうので注意が必要です。
2-3. 人事査定に悪影響が生じる
無断離席・外出の事実は、会社の人事査定において確実にマイナスに働きます。将来の昇給や昇進などが遅れたり、場合によっては閑職に追いやられてしまったりすることもあり得るでしょう。
特に、今後も会社に長く勤める意思のある方にとっては、一度でも無断離席・外出で処分を受けたという事実は、キャリア形成に大きな影を落とします。ご自身の将来を見据える観点からも、勤務時間中の無断離席・外出は控えた方がよいでしょう。
取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
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