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日本の国会に参議院と衆議院があることは知っていても、どのような違いがあるのか説明できない人もいるのではないでしょうか?それぞれの違いとともに、国会の特徴を紹介します。ニュースなどで耳にする機会が多いそのほかの用語についても確認しましょう。
参議院・衆議院とは?
国の政治と深い関係がある参議院と衆議院ですが、どのような役割を担っているのでしょうか?それぞれの具体的な仕事についても理解を深めましょう。
「国会」は国の立法機関
日本では、国家権力を『立法』『行政』『司法』の三権に分ける『三権分立』という仕組みが用いられています。三つに分けることで、権力の一点集中により起こり得る権力の濫用を防ぎ、国民の権利を守るのが目的です。
三権のうち『立法権』を持つのが、国の唯一の立法機関である『国会』です。そして参議院と衆議院の二つの議院により、国会は構成されています。
国会は1年を通して開かれているわけではありません。召集時期や議事などの違いにより、『常会』『臨時会』『特別会』の3種類に分けられます。さらに『参議院の緊急集会』を含め4種類とする場合もあります。
法律や予算を決める
国会の主な役割は、国民が生活する上で必要となる国の法律を決めることです。議員や内閣から出された法律案について審議し、成立させるかどうか決定します。
国の1年間の収入と支出を見積もり、予算や使い道を決めるのも主な仕事の一つです。内閣総理大臣を国会議員から選出するのも、国会の重要な仕事といえます。
外国の政府などとの間で条約を締結するのは内閣の仕事ですが、条約を承認する役割を担っているのも国会です。
国会の特徴
国会の大きな特徴といえるのが、『二院制』と『衆議院の優越』です。それぞれどのようなものか解説するとともに、採用されている理由についても紹介します。
二院制が採用されている
国会は、異なる二つの議院で構成された『二院制』を採用しています。『両院制』と呼ばれることもある二院制のメリットは、立場の異なる二つの議院が審議することで、多様な国民の意見をより広く反映できる点です。
一方の議院で議決された法案をもう一方で再度審議することで、取り決めを慎重に進められるのもメリットです。お互いに行き過ぎを抑制したり、足りない面を補完したりできるという面もあります。
二院制は、決して珍しいものではありません。アメリカ・カナダ・イギリス・イタリアなど、多くの主要国でも採用されています。
衆議院の意見を優先
特定の事柄に関して両院の意見が一致しない場合は、衆議院の意見が優先されます。『衆議院の優越』と呼ばれ、憲法によって一定の要件のもと、衆議院が強い権限を持つことが認められているためです。
例えば両院の議決が一致しないときは、まず『両院協議会』を開き、意見の調整を行います。それでも一致しない場合は、衆議院の議決が優先されるのです。
予算の議決や内閣総理大臣の指名なども、衆議院での議決が国会の議決とされます。衆議院の任期は短く、任期満了前の解散もありえるため、国民の意見をより反映しやすいと考えられているのが理由の一つです。
参議院と衆議院の違い
参議院と衆議院には、具体的にどのような違いがあるのでしょうか?どういう点で異なるのか、さまざまな角度から見ていきましょう。
本会議場と議員定数
両院とも国会議事堂に本会議場があり、参議院は正面から見て右側、衆議院は左側に位置しています。本会議場のつくりや設備に変わりはありませんが、天皇陛下がお座りになる席が設けられているのは参議院だけです。
これは、参議院の本会議場がかつて『貴族院』として使われていたことと関係があります。貴族院は富裕層の男性や天皇に任命された勲功者などから構成された議院で、戦後に参議院に変わったという経緯があるのです。
議員定数にも違いがあります。参議院は245人(2022年改選からは定数248人)で衆議院は465人なので、かなり大きな差があるといえるでしょう。
任期と解散の有無
参議院の任期が『6年』なのに対し、衆議院は『4年』です。参議院は3年ごとに半数を改選する仕組みになっていますが、解散はありません。一方、衆議院には解散があります。そのため、必ずしも任期満了まで務められるというわけではありません。
解散になった場合は、任期の途中でも議員を辞めなければならないというのが大きな違いです。議員の仕事を続けたい場合は、議員として有権者から選挙で再び選ばれる必要があります。
選挙権と被選挙権
国民が選挙において立候補者に投票できる『選挙権』は、両院ともに『満18歳以上』で同じです。一方、選挙に立候補できる『被選挙権』の年齢は異なります。参議院は『満30歳以上』、衆議院では『満25歳以上』です。
年齢が異なる主な理由は、参議院は任期が長く解散がないため、より良識を備えた人材が求められているという点です。参議院は政治状況を見極め、良識に基づき中立的な立場で慎重に審議をする役割があります。
衆議院の行き過ぎを抑制するためにも、冷静に物事を見極められる良識のある人物が適していると考えられているのです。
選挙の方法
参議院議員選挙(参院選)では、一部を除き都道府県単位で分けられた選挙区から定数を選ぶ『選挙区制』と、各党派の得票数に比例した数の議員が選ばれる『比例代表制』を併用しています。
衆議院議員選挙(衆院選)では、選挙区を289に区割りし、各選挙区から1人を選ぶ『小選挙区制』と、全国を11ブロックに分けて選ぶ『比例代表制』が採用されています。参院選の『選挙区制』では2人以上選ばれる選挙区があるのに対し、衆院選の『小選挙区制』は必ず1人という違いがあります。
また、参院選は『選挙区』と『比例代表』のどちらか一方を選ぶ必要がありますが、衆院選は両方に立候補できるのも違いの一つです。小選挙区で落選しても一定の条件下において比例代表で当選できる仕組みがあり、『比例復活』と呼ばれています。
参議院・衆議院に関するQ&A
ニュースなどで耳にしたことがあり言葉自体は知っていても、よく意味が分からないという人が多い用語を解説します。言葉の意味を正しく理解し、政治に詳しくなりましょう。
「与党」「野党」とは?
内閣総理大臣は、多数を占める政党から選出され政権を担うのが一般的です。政権を担っている党が『与党』で、それ以外の党が『野党』です。
与党は必ずしも1政党というわけではなく、複数の政党がともに政権を担うケースもあり『連立政権』と呼ばれています。そのほかにも、与党には時代的背景を反映しながら新しい法案や改正案の成立に取り組むという役割があります。
『野党』は、与党による政権が正しく運営されているかどうか監視するのが役目です。また、内閣が信任できないとして退陣を求める『内閣不信任決議案』を提出するのも野党です。
「代議士」とは誰を指す?
ドラマなどで耳にすることもある『代議士』は、国会議員全てを指すと思っている人もいるのではないでしょうか。しかし、本来は『衆議院議員』のみを指す言葉です。
参議院の前身は、皇族や高額納税者などから構成された『貴族院』でした。選挙で選出される国民の代表は衆議院議員のみだったため、『国民を代表して国政を議する人』という意味で『代議士』と呼ばれるようになったのです。
「ねじれ国会」とは何?
『ねじれ国会』とは、参議院と衆議院で多数派を占める政党が異なる状況を指します。例えば、衆議院での多数派は与党で、参議院の多数派は野党という状態です。
二院制はより広く国民の意見を反映し、慎重に審議を行えるというメリットがあります。しかし『ねじれ国会』になってしまうと、政治が円滑に進まなくなってしまうケースも珍しくありません。
与党が多数派を占める議院で可決された法案が、野党が多数を占めるもう一方の議院で否決される可能性があり、法案が通りにくくなるためです。
構成/編集部