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漁業の収益向上や人手不足問題を解消する「6次産業化」とそれを支えるDXとブロックチェーン技術

2022.05.02

日本の漁業は現在、漁獲量や漁業者の減少など、課題が山積みだという。そうした中、漁業に新たな可能性が生まれているのを知っているだろうか。最先端の技術を活用する漁業DXのほか、漁業の1次産業だけでなく、2次産業としての工業・製造業、3次産業としての販売業・サービス業すべてを取り込む「6次産業化」を行うことで、収益向上や人手不足の解消を試みる施策が日本全国に広がっているのだ。

今回は、そんな漁業DXと共に、漁業の6次産業化を促している2つの事例を紹介する。

ブロックチェーンで漁業をサステナブルに

漁業は、現在さまざまな課題を抱えている。

農山漁村における全般の課題として、仕事が少なく、生活に必要なだけの収入を確保することがむずかしい所得問題がある。また近年、漁獲量減少の問題も続いているほか、後継者の確保がむずかしい点、女性の地位向上と活躍促進の必要もある。

そうした課題解決と産業活性化のため、水産庁はICTを活用してデータ収集による省力化や効率化、獲物の高付加価値化により、生産性を向上させる「スマート水産業」を推進している。これを受け、漁業DXは今後、加速するものと思われる。

民間企業においてもさまざまな活動が起こっている。例えば「Ocean to Tableプロジェクト」は、持続可能な漁業を支える複数企業が協業するトレーサビリティ・プロジェクトだ。

メンバーとして、サステナブルな漁業を目指すベンチャー企業のUMITO Partners、東京湾でスズキ漁を主に行う海光物産、船舶関連システム等を開発するライトハウス、情報システム会社アイエックス・ナレッジ、食分野のブロックチェーン・トレーサビリティ基盤を持つ日本IBMが関わっている。

●「海からテーブルへ」漁業DXを実現

海光物産が2016年に持続可能なスズキ漁を目指す漁業改善プロジェクトを発足した後、ライトハウスによる船団運営をIoTで支援するシステム「ISANA」を導入した。これにより、これまで手作業で入力していた漁獲位置情報や、魚種、魚体長などの漁獲データをより効率的に得られるようになった。

日本IBMによるFood Trustというブロックチェーン基盤上にアイエックス・ナレッジが専用のアプリケーションを構築し、アプリケーションを通じてISANAにより集められた漁獲データと海光物産の加工・流通データ、レストランの調理データがFood Trustに集積される。

消費者向けQRコードで表示されるトレース情報

これによりレストランに訪れた客は、海産物を使ったメニューを味わいながら、専用アプリを通じて現在、自分が食べているメニューに使われている魚の漁獲場所や、加工、流通、開封、保管までのサプライチェーンの過程を知ることができる。まさに「Ocean to Table=海からテーブルへ」とつなぐプロジェクトだ。

●漁業者の収入安定化につながる背景

このプロジェクトを通じて、漁業者の収入安定化と高付加価値付けが実現するという。株式会社UMITO Partners 代表取締役 村上春二氏に話を聞いた。

「東京大の研究チームが消費者の動向調査を行ったところ、トレーサビリティが開示された魚に消費者は約1割高い金額を払う意思を示すという結果が出ました。一般に共感消費や応援消費が一部の層に広がっていること、産地偽装や違法漁法のニュースを通じて生産地や生産者の顔が見える安心できるものが水産物においても求められ始めています。

加えて、同調査では消費者は『漁獲情報』に関心が高いという結果が出ました。その背景にはもちろんどこで漁獲されたのか知りたい消費者需要もあると思いますが、鮮度を知る上で需要があるデータであるという見解もあり、今後の販売手法などにもヒントになると考えています。

合法的に漁業を行う漁業者が、きちんと報われるシステムと流通をつくることで、そこで取り扱われる海産物は、消費者からの信頼を得ることができます。そこからブランド化され、結果的に漁業者の収入安定化につながるはずだと考えています」

今後の販売手法やブランディングに期待が生まれることで、漁業従事者自ら漁獲物の製造、販売に着手でき、6次産業化もしやすくなるだろう。実際、村上氏に6次産業化の展望について尋ねたところ、エシカル商品の企画、販売など、今後、積極的に進めていきたいと考えているそうだ。

●消費者の啓蒙も計画中

レストランで顧客が自分の食べている魚のトレーサビリティを知ることができるのは、新たな価値のある体験となりそうだ。一方で、消費者側にもある程度、興味やリテラシーも必要となるだろう。本プロジェクトでは、消費者を啓蒙する取り組みも計画しているという。

「Ocean to Tableでは、持続可能な漁業に興味がある一般消費者や事業者へ向けた情報共有やコミュニティづくりを目的としたLabの開設を予定しています。

Labでは、様々なバリューチェーンを持っている方々をお招きしたセミナー等を一般向けに開催したり、漁業者や各社の取り組み内容やこだわりを、消費者にどのように訴求していくべきかを議論するなど、プラットフォームを用いて消費者向けの啓蒙を積極的に行っていこうと思っています。また環境や社会問題への意識が高いZ世代をターゲットにした啓蒙活動なども展開していきたいと考えています」

スマート給餌機で「餌やり」の自動化・回転寿司のネタに

もう一つ、漁業DXの好事例がある。同時に6次産業化も進めている。

水産養殖にAIやIoTなどを活用することで、持続可能な水産養殖の実現に取り組むベンチャー企業、ウミトロン株式会社が、くら寿司が100%出資する新会社「KURAおさかなファーム」と協業し、「真鯛」の養殖をスマート化する実証実験を2021年4月頃から始めた。

愛媛県宇和島市の養殖場 中央の白い機械がウミトロンセル

AI搭載のスマート給餌機「UMITRON CELL(ウミトロンセル)」を愛媛県宇和島市の真鯛の養殖場に設置。スマートフォンなどの端末から生け簀(す)で泳ぐ魚のリアルタイム動画を見ながら、遠隔で餌やり操作を行うことができる。また、AIが、魚が泳ぐ動画を解析して魚の食欲を判定することから、餌の量や餌やりのスピードを最適化し、制御することができる。


「UMITRON CELL」説明動画

●人手不足の課題解決や魚の供給の安定化につながる

ウミトロンセルの専用アプリ操作イメージ

ウミトロンセルを導入することで、養殖産業の課題となっている人手不足や労働環境の改善、魚の供給の安定化につなげるねらいだ。

ウミトロン広報担当の佐藤彰子氏は、従来のやり方からの変化について、次のように述べる。

「従来、生産者は船で生け簀まで行き、餌やりを手作業で行う、もしくはタイマー式給餌器等を利用して手動で行っていました。ウミトロンセルを利用することで、リモートで餌やりができるようになり、労働負荷や人件費の削減につながります。またアプリで餌やりボタンを押すと自動で餌を落とします。水面を映しているカメラの映像に映る魚の様子を見ながら餌やりができるほか、AIがカメラの映像をもとに魚の食欲を解析するので、その判定結果を見て、もし魚が餌をあまり食べていない場合は餌量を少なくしたり自動で止めたりするといったように『餌の最適化』も可能になります。これにより、無駄な餌やりも防ぐことができます」

ウミトロンセル専用アプリの画面イメージ

また、海へ餌が流出することを防ぎ、環境に配慮した養殖業の実現にも貢献できるという。

「餌が海に流れてしまうと、海を汚してしまうほか、海の生態系に影響が出てしまうといわれています。また赤潮の原因になることもあるともいわれます。ウミトロンセルは、環境を守る養殖の実現にも貢献をしていきます」

遠隔で餌やりができること、そしてAIを活用することにより、魚の生産の効率化や自動化を実現する漁業DXといえる。

●6次産業化も推進

漁業の6次産業化という点でも、ウミトロンセルは貢献しているという。2つの事例がある。

「AI 桜鯛」イメージ

一つは、このKURAおさかなファームとの協業で育った真鯛が、今年3月、くら寿司運営の回転寿司チェーン「くら寿司」にて「【愛媛県産】AI 桜鯛(一貫)」として、期間限定で全国販売されたことだ。寿司ネタにできる大きさまで養殖した真鯛が、無事に消費者のもとに届けられた。今後も本実証実験を継続して実施し、規模拡大、及び再度くら寿司での販売の構想もあるという。

量販店売り場で販売されている「うみとさち」商品

もう一つは、ウミトロンのオリジナルブランド「うみとさち」として魚の販売を行っていることだ。ウミトロンセルはすでに近畿・四国・九州地域を中心に、主に真鯛、シマアジ、サーモントラウトなどの魚種に導入されているが、ウミトロンの技術で育てた魚を環境や労働面に配慮したサステナブルシーフード「うみとさち」ブランドとして販売している。真鯛の丸魚や刺身などが公式オンラインショップでも購入できる。

漁業が直面する課題はさまざまだが、同時に課題解決としての漁業DXや6次産業化の波が起こっており、確実に進行している。じわじわと消費者のもとにその波が届き始めている。今後のさらなる発展を期待したい。

【参考】
ウミトロン
ウミトロン「うみとさち」

取材・文/石原亜香利

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