日本の宇宙の玄関口といえば、種子島が有名だろう。実は、日本の宇宙への玄関口の一つに大分空港が加わる予定だ。早くて2022年以内。その頃には、アジア初の宇宙港となる予定だ。しかし、大分空港の役割は、従来のロケットの発射地点とは、大きく役割がことなっている。では、大分空港はどのような宇宙港を目指しているのだろうか。今回は、そのような話題について触れたいと思う。
(出典:大分空港)
大分空港が宇宙港となるメリットとは?
宇宙港とはあまり聞きなれない表現かもしれない。宇宙港は、スペースポートともいい、宇宙への玄関口の意味だ。では、なぜ大分空港なのだろうか。一つは空港の立地や設備面にある。この後に説明するが大分空港から宇宙へは「水平型」と呼ばれる宇宙港を想定している。そのため、空港が海に近く、離陸後にすぐに洋上に出ることができる点、そして大型のジャンボジェットも離着陸できる滑走路を有している点が挙げられる。
2つ目は産業面。大分には、自動車や精密機器関連の企業が集積している。そのため、宇宙の基盤として品質の高い部品部材を調達でき、宇宙機器の製造、メンテナンスなどに優位性があることだ。3つ目は、観光面。大分といえば、別府温泉、由布院温泉という日本を代表する温泉が有名だろう。つまり観光資源が充実しているのだ。ちなみに、大分空港内に足湯も完備している。他にも、宇宙食など宇宙に関する売店も充実させていたりもする。このように、大分空港が宇宙港となれば、経済効果を含めてメリットだらけなのだ。
宇宙ノオンセン県オオイタ 大分空港の足湯(出典:大分空港)
今年中に大分空港がアジア初の宇宙港に!!
先ほど、大分空港が「水平型」と呼ばれる宇宙港と申し上げた。これはどういうことだろうか。現時点では、大分空港では、鉛筆型のロケットを宇宙へ向かって真っ直ぐ打ち上げる想定はない。Virgin Orbitという米国企業が持つ特殊なボーイング747の大型のジャンボジェット機の下腹部にロケットを搭載し、ボーイング747が離陸後にロケットを空中で発射させるという想定なのだ。これが水平型と呼ばれる所以。
ちなみにこのロケットの名称はランチャーワンという。小型の衛星を打ち上げることができるのだ。これにより、ロケットの打ち上げが天候に左右されなくなったり、ロケットエンジンによる噴射による射場の損傷などのメンテナンスが不要になったり、人工衛星を打ち上げたい軌道近くで打ち上げられたり、さまざまなメリットがある。最速で2022年以内に初の打ち上げを目指しているという。
Virgin Orbitのランチャーワン(出典:Virgin Oribt)
また、2022年2月26日に大分県と米国 Sierra Space、兼松の3者は、大分空港を、Sierra Spaceの宇宙往還機Dream Chaserのアジア拠点として活用するための検討を進めると発表している。宇宙往還機Dream Chaserとは、飛行機型の有人宇宙船。これにより、日本初となる有人の宇宙港ができるのだ。2026年には有人飛行を予定しているという。
大分県は、これによって、大分空港を人工衛星の打ち上げ拠点とすることのみならず、宇宙ステーションと地球をつなぐ同社の宇宙往還機 Dream Chaser のアジアにおける着陸拠点となることを目指しているのだ。
大分空港から宇宙へ向かう宇宙往還機 Dream Chaser(出典:Sierra Space)
いかがだっただろうか。Virgin OrbitやSierra Spaceの取り組み以外にも、大分県は、内閣府のS-NET事業「宇宙ビジネス創出推進自治体」において選定されている。大分空港の宇宙港の取り組みには、JAXAは絡んでいないという。
このように多くのステークホルダーが同じベクトルを向くことで、すごい取り組みが実現しようとしている。そう、大分空港が宇宙の玄関口となる日がもうすぐそこに近づいているのだ。実は、このような取り組みには、一般社団法人Space Port Japanが果たした役割も大きいという。小型人工衛星の発射拠点のみならず、有人宇宙関連の拠点にもなると考えれば、大分空港における経済波及効果は大きくなることだろう。
文/齊田興哉
2004年東北大学大学院工学研究科を修了(工学博士)。同年、宇宙航空研究開発機構JAXAに入社し、人工衛星の2機の開発プロジェクトに従事。2012年日本総合研究所に入社。官公庁、企業向けの宇宙ビジネスのコンサルティングに従事。新刊「ビジネスモデルの未来予報図51」を出版。各メディアの情報発信に力を入れている。