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住民税には、どれぐらいの税率がかけられているのでしょうか?住民税の税率から納税額の求め方、非課税になる条件まで、住民税の基本的な知識について解説します。収入や地域によって差があるのかも、併せてチェックしておきましょう。
個人が払う住民税の基本
住民税には、会社が支払う『法人住民税』と、個人が支払う『個人住民税』の二つがあります。では、個人が支払う住民税にはどのような意味があり、どこに支払うのでしょうか?
前年の所得に応じて課税される地方税
個人住民税は、前年の1月1日から12月31日までの所得に応じて課税されます。所得税が国に納める『国税』であるのに対し、住民税は地方に納める『地方税』であることも覚えておきましょう。
また、住民税には『道府県民税(都民税)』と『市町村民税(特別区民税)』の二つがあります。
住民税は、地方自治体の公共施設やごみ処理、学校教育などを含む行政サービスの維持や運営に使われています。地方自治体には、都道府県と市区町村があるため、両方に税金を支払う必要があるのです。
住民税で特に注意したいのは、税金を支払うタイミングです。
社会人の場合、『所得税』であればその年の税額が給与から天引きされます。それに対して『住民税』の支払いがスタートするのは、所得を得た翌年の6月です。
1月1日時点で居住している自治体に支払う
『地方税』である住民税の支払い先は、その年の1月1日時点で住んでいた自治体のため、引っ越しをした場合には注意が必要です。
例えば、2021年1月1日時点でA市に住んでいた人が、2021年4月にB市に引っ越したとしましょう。
この場合、2021年度の住民税の支払い先は、1月1日時点で住んでいたA市のため、A市から住民税を請求されるのが基本です。ちなみに、2022年1月1日になってもB市に住んでいると、2022年度の住民税はB市に支払うことになります。
なお、住民税の納付先には都道府県が含まれることも覚えておきましょう。納税者が市区町村に納めた住民税のうち『道府県民税(都民税)』は市区町村から都道府県に払い込まれます。
参考:個人の住民税(村・都民税)に関するQ&A | 小笠原村公式サイト
住民税の税率
住民税の税率は、所得税のように収入が多いほど高くなるのでしょうか?次は、住民税の税率と市区町村による差があるのかについて解説します。
納税額は所得割と均等割の合計
住民税には、『所得割』と『均等割』の二つがあります。
『所得割』は、前年の1月1日から12月31日までの所得に応じて課される税金です。一方『均等割』は、納税者の収入に関係なく通常5000円と決まっています。
5000円の内訳は、3500円が『市町村民税(特別区民税)』、1500円が『道府県民税(都民税)』として徴収されます。
所得割の税率は所得に関わらず一律10%
所得に応じて課される『所得割』の税率は、所得税のような累進課税ではありません。『累進課税』とは、所得額によって税率が上がっていく仕組みです。
住民税の場合、所得に関係なく税率は原則として一律『10%』で、4%分を都道府県、6%分を市区町村に支払います。
例えば、所得割額が1万円の場合なら、市区町村は6000円を徴収して、残りの4000円を都道府県に納めるというわけです。
市区町村による差はほとんどない
「地方税なら、自治体によっては住民税が安い地域もあるのではないか?」と思う人もいるでしょう。たしかに、自治体によって所得割の税率を変えることは可能です。
しかし、所得割の10%は地方税を課税する際に用いるとされている『標準税率』なので、ほとんどの自治体では10%の税率を採用しています。
そのため、住んでいる市区町村によって所得割額が変わることは、ほとんどないと考えられるでしょう。
納税額の算出方法
「実際に、どれぐらいの住民税がかかるのか知りたい!」という人は多いでしょう。ここからは、住民税額の算出方法から納付の仕方までを順番に確認しましょう。
所得合計から控除を引き課税所得額を算出
住民税の対象になる『課税所得額』は、収入の合計から各種控除を引いて求めます。それでは、20代独身のAさんに課される住民税額を計算してみましょう。
【Aさん(独身)のケース】
- 給与収入:320万円
- 基礎控除:43万円
- 給与所得控除:104万円(収入金額320万×30%+8万円)
- 社会保険料支払額:30万円
- 一般生命保険料支払額:2万円
Aさんの収入の合計は、給与の320万です。基礎控除や給与所得控除に加え、社会保険料や一般生命保険料の支払額も控除の対象になるため、控除額の合計は179万円です。
Aさんの課税所得額は、給与所得の320万円から179万円を引いた141万円だと分かります。
所得割額を計算し均等割額と合計
課税所得額が分かったら、10%の税率をかけて『所得割額』を求めます。
Aさんのケースに当てはめると、所得割額は、課税所得額の141万円に10%をかけた14万1000円です。所得割額を求めることができたら、『均等割額』を足して『住民税額』を算出します。
均等割額は納税者の収入に関係なく通常一律で5000円なので、Aさんの住民税額は14万1000円に5000円を足した14万6000円です。
確定した納税額は5~6月頃通知
住民税額が決定すると、5~6月頃に『住民税の決定通知書』が自宅や職場に届けられます。
会社から給与をもらっている人は、原則『特別徴収』で住民税額を12等分した金額が6月から翌年の5月まで毎月給与から天引きされます。
一方、フリーランスなど給与をもらっていない人は、住民税の決定通知書に同封されている『納付書』を使って住民税を納付します。なお、納付書を使う場合には、コンビニや金融機関などで6・8・10月と翌年1月の4回に分けて現金で支払うのが基本です。
ポイントは貯まる?手数料はかかる?コンビニで住民税を支払う時の注意点
住民税が非課税となる条件
住民税といっても全ての住民に税金が課されるわけではなく、住民税がかからない『非課税』の人もいます。住民税が非課税になる条件について確認しておきましょう。
均等割・所得割の両方が非課税となる条件
均等割と所得割の両方が非課税となるための条件は、大きく四つあります。まず、生活保護法の条件をクリアして生活扶助を受けている人です。
次に、未成年や障がいのある人、死別や離婚などで夫がおらず養う子どもがいる人、ひとり親のうち、前年の所得金額の合計が135万円以下(給与所得者は年収204万4000円未満)の場合には、住民税は課税されません。
さらに、前年の所得の合計が各地方自治体が定める一定金額以下の場合にも住民税は非課税です。
例えば、東京都23区の場合、独身で前年度の所得が45万円以下だった場合は住民税が非課税になります。新卒1年目の社会人の場合、前年の所得が少なく住民税がかからない人もいるでしょう。
一定以上の所得があると均等割を課税
前年の総所得金額などが、各地方自治体の定める金額を超えている場合、住民税のうち均等割だけ課税されます。
東京都23区では、35万円に本人と生計をともにしている配偶者、子どもなどの扶養親族の合計人数をかけ、42万円を足した金額以下の場合は、所得割は非課税になります。
例えば、生計をともにする配偶者と子どもが2人いる場合の一定額は、35万円に自分を含めた合計人数の4をかけ、42万円を足した182万円です。つまり、前年の総所得金額などが182万円以下の場合には、所得割は非課税です。
なお、生計をともにする配偶者や子どもなどがいない独身者の場合は、前年の総所得金額などが45万円以下だと所得割が非課税になります。
構成/編集部