「レジ袋有料化」は、今でも賛否両論の落差が激しい。
しかしエコバッグに対する大きな需要が生まれているのは事実で、同時に従来のレジ袋にはない機能・利便性を持つエコバッグが続々と開発されている。
たとえば、こんなことはないだろうか? スーパーマーケットでパック入りの寿司を買ったはいいが、それを斜めにせずに袋に入れる方法で頭を悩ませてしまう……という事態だ。
というわけで今回は、「寿司やピザを水平に保てるエコバッグ」なるものを試してみたいと思う。
水平を保てるエコバッグ
筆者の自宅の近所、自転車すら使う必要のない距離にスーパーがある。
そこは夜8時になるとパックの寿司の4割引シールが貼られる。それを狙って筆者は来店するわけだ。自慢するわけではないが、筆者は生まれてから今に至るまで庶民である。半額シールは筆者の親友だ。
この日は握り寿司と惣菜、ペットボトルの飲み物を買う。これはよくよく考えれば、レジ袋では入れるのに難儀する組み合わせ。寿司と惣菜を倒さないようにするには、どうすればいいのか?
ここは、エコバッグ『ORIBA』を使ってみよう。
これは「入れたものを水平に保てる」という触れ込みの製品で、去年7月にクラウドファンディングMakuakeでの資金調達を実施した。今回はより大型の新バージョンが登場とのことで、プロトタイプをお借りした次第だ。
底が平らだから、自立させることも可能。その使い勝手は「エコバッグ」というよりも「バスケット」に近いものかもしれない。
しかし、竹や籐のバスケットは折り畳むことができない。一方で『ORIBA』は、必要のない時は折り紙のように畳んで収納することができる。
食べ物から天地無用の宅配物まで
とりあえず最初はペットボトルのコーラ(1.5L)を入れ、その横に寿司、そして惣菜を重ねておく。
この状態で持ってみる。するとコーラのせいで片側の取っ手だけが重くなるとはいえ、寿司と惣菜の水平はきちんと保たれる。へぇ〜、こんな便利グッズがあったのか!?
『ORIBA』を片手に下げて徒歩で帰宅する分には、中身がひっくり返ることはない。もちろん寿司だけでなくピザやオードブル、ケーキにも対応できる。そして、『ORIBA』に入れるべきものは何も食品だけに限らない。
天地無用の宅配物を運ぶ時にも、『ORIBA』が大活躍する。
筆者は「ガジェットライター」と名乗っているせいで、あらゆるメーカーからあらゆる新製品が送られてくる。その大半は電子機器即ち精密機器だ。
サンプルは基本的に借り物だから、記事を書いたら返却しなければならない。これは当然ながら横倒し厳禁、下積み厳禁である。
無論、箱の中身はクッション材やら新聞紙やらを詰めているが、それでも宅配業者の事業所まで持っていくのに極力水平を保ちたい。
「返送の途中でサンプルを壊しました。ごめんね」は通用しない。このあたりはどうしても慎重にならざるを得ないのだ。
てか、このエコバッグマジで便利だぞ!
まだ見たことのないエコバッグを!
さて、この『ORIBA』はどのような構造になっているのだろうか?
入れたものを水平に保つ工夫だけを見れば、それは非常に簡単だ。底面が四角形になっている。しかし問題は、側面の構造である。
底面が四角形のエコバッグは、「折り畳みをどうするか」という壁に突き当たってしまう。
水平持ちのできるエコバッグは他にもあるのだが、それらは「折り畳むことができない」か「底が浅過ぎる(水平持ちに特化し過ぎているため、容量が確保できない)」かのどちらか。
このふたつの弱点を同時に克服することは、決して容易ではないというわけだ。
『ORIBA』の斬新さは、ここにある。それなりの収納容量を確保しつつも、簡単な折り畳みを可能にする設計。筆者が開発者の合同会社ORIGAMIからもらった手紙には、こう書いてあった。
私たちは、2020年の夏頃に「まだ見たことのないエコバッグを作ってみたい!」と、私が発起人となって集まった素人のチームです。主婦ら6人が、子供を寝かしつけた後の夜中の時間を利用して、1年間ほぼ毎週オンラインで打ち合わせをしながら製作しました。
パンデミックの最中の活動ということを考慮すると、その苦労は計り知れないものに違いない。
そして「ORIGAMI」という会社名が示す通り、このエコバッグは折り紙の発想の下に作られた製品なのだ。
「折り紙」の発想
折り紙は日本固有の伝統文化である。
紙とは中国由来の記録媒体である。インクの乗りが良く、折り曲げることができる上に長期保存も可能な紙は人類史を大きく変えてしまった。
751年に勃発したタラス河畔の戦いは、唐朝の製紙職人を中央アジアに移住させるきっかけになった出来事である。
そこから紙は中東や西洋にも伝わった。ヨーロッパの知識人や聖職者は、東洋からやって来た素晴らしい記録媒体に筆を走らせるようになったのだ。
そんな紙を使って遊ぶというのは、 USBメモリーで積み木をするという発想に近いかもしれない。
その上、日本人は紙遊びのために道具を一切使わなかった。折り紙が折り紙である所以、それは「ハサミも糊も使わない」という点である。
にもかかわらず、折り紙はありとあらゆる物体を極めて正確に再現してしまう。
一通りの役目を果たした『ORIBA』を収納する際、両側にあるオレンジ色の三角タグを引っ張る。すると縫い目に沿って畳まれていく。
『ORIBA』を無理やり丸めるための紐は存在しない。折り紙にハサミは必要としないように。
我々の国の伝統文化が、新しい製品を輩出しているのだ。これを「人類の英知」と言わずに、何と表現するべきか!
独身男とエコバッグ
「新開発のエコバッグ」というと、どうしても「主婦向け」というイメージで語られることが多いのではないか。
もちろん『ORIBA』の開発陣には主婦もいるが、この製品自体は「○○向け」という語り方をするのはナンセンスな気がする。
実際、筆者は37年の生涯を送っているのに未だ嫁の来手が見込めない男だ。しかし……いや、だからこそ『ORIBA』の機能を余さず享受できる素質があるのではと勝手に思っている。
突然、無性に寿司が食べたくなってきた。時刻は午後7時40分。ああ、もうすぐで近所のスーパーの寿司が安くなるじゃないか。よし、しばらくしたら出かけて寿司を買ってしまおう。
そんな思いつきが実現に至るまでの過程を静かに支えてくれるのが『ORIBA』である。
「生活の豊かさ」に直結する製品
「生活」とは、ちょっとした行動力の集合体とも言える。しかし行動力は、どこかで軽い背中押しがなければなかなか発揮されないものだ。それが「面倒くさい」の正体かもしれない。
寿司を買ってみようとは思ったけれど、持ち帰りの途中でどうしても傾いてしまうから面倒くさい。だから、買わない。
しかし『ORIBA』を持っていれば、そんな煩わしさを簡単に解消できる。そしてこれが、生活の豊かさにもつながっていくはずだ。
「金銭的な豊かさ」という意味ではなく、「やりたいことを思う存分できる豊かさ」である。
今回使用した『ORIBA』Lサイズは、Makuakeで3,582円(製品1個、4月19日時点)の出資を受け付けている。
【参考】
ピザ・寿司が水平に!マチ広、大容量のスーパー用。1秒で自立&3秒で畳むエコバッグ-Makuake
取材・文/澤田真一